Reminders Photography Strongholdでは、2024年9月に千賀健史の写真展「HIJACK GENI IANN Books 出版記念展」を開催いたします。
千賀は、「happn」(2015)、「Bird, Night and then」(2017)、「The Suicide Boom」(2019)と、入念なリサーチに基づきながら、貧困格差や自殺といった現代社会の影を革新的な視点で表現してきました。
2022年には、自身の家族がターゲットとなったことをきっかけに、「オレオレ詐欺」をテーマにした制作を開始。『何が真実で、何が嘘かが徐々に分からなくなる』という複雑な社会を描いたアーティストブック「HIJACK GENI」を発表しました。この作品は、「オレオレ詐欺」という言葉の裏に隠された、私たちが無意識のうちに目を逸らしている現実を鋭く表現しています。
この作品は、Luma Rencontres Dummy Book Award Arles 2022のショートリストやPrix Pictet Japan Awardのファイナリストに選ばれ、その後、シンガポール国際写真祭ダミー賞を受賞しました。そして、その副賞として、韓国の出版社IANN Booksより普及版が刊行されることになりました。
本展示では、韓国から持ち帰った刷り出しや、実際の印刷に使用されたPS版を洗浄して制作した作品を展示いたします。また、刊行を記念して、RPSでご購入いただく場合に特典が付属する特別版の販売も行われます。さらに、この刊行記念展は来春、RPS京都分室パプロルでも開催される予定です。ぜひご期待ください。
「HIJACK GENI」
水に浸かった紙はあっという間にほろほろと崩れだし、さっきまでそこにあった姿はもう記憶の縁でゆらゆらと変化している。そこにあったのは一体何であったのか。
2003年、いわゆるオレオレ詐欺が世の中に知れ渡りだした頃、この犯罪はいわゆる裏社会の人々によって行われていた。それが今や犯罪とは無縁に生きてきた「一般人」がその要ともいえる存在となってしまっている。
詐欺といえばそもそも一部の暴力団では、外道の行いとして禁止されていたような犯罪である。それを、「仕事」として行うものが後を絶たない現代社会は極めて異常である。
2019年、数々のルポやインタビューを読みながら加害者側の置かれている状況や心理について共感するものを感じながらも遠くで起きている物語として受け止めていたのだが、ある日、両親と話していて母親が特殊詐欺グループのターゲットである事を知ることで、自分の中で被害を受ける者としての矛盾する気持ちが生まれ始めた。
2020年、撮影期間中は詐欺グループの一員のような日々を過ごしていた。隠れ家に使えそうなホテル、オフィス、カラオケボックスを巡り、詐欺電話がかかってきている地域をウロウロしたり、コインロッカーからコインロッカーへ荷物を運んでみたり、犯行に必要な道具を買い集めてみたり、高齢者に会いに行ったり、電話をしてみたり、ATMで30万円おろしてみたり。実際に犯罪行為をしているわけでもないのに、やたらと人の目が気になり緊張した事をよく覚えている。何が真実で何が嘘か、段々と分からなくなっていった。
2021年、詐欺グループがさまざまな役割を演じるように、自分の顔を元に90名の高齢者と若者の架空のポートレートを作成した。
自分であって、自分でないその人物はまるで本当に存在しているようで、彼らの仮名を考えている間にその人物像はますますリアルになっていった。
そうして本作中のイメージを水溶紙に印刷して、溶かし、全て無かったことにしているとなんだか少しホッとした。詐欺グループも証拠隠滅している時はそんな気持ちだったかもしれない。
2022年、そうして出来上がった矛盾と嘘の塊が本作である。
想像の中で私は加害者であり、被害者でもあったが、現実では第三者である。溶けて見えなくなってしまった彼らを包摂する水だ。ゆらゆらと揺れる私たちの中に見えるものはなんだろうか。
追記:2024年、現在の社会情勢を反映するかのように特殊詐欺は形を変えこの2年増え続けている。
千賀健史
千賀健史 写真展「HIJACK GENI IANN Books 出版記念展」
◎会期:2024年9月14日(土)〜23日(月・祝、秋分の日)
13:00〜19:00 会期中無休、入場無料
◎オープニングレセプション / アーティストトーク
2024年9月14日(土)19時ごろから
※オープニング+アーティストトークは19時からですのでご注意ください。
展示は13時からご覧いただけます。
◎開催場所:Reminders Photography Stronghold Gallery
住所:東京都墨田区東向島2-38-5
(東武スカイツリーライン曳舟駅より徒歩6分・京成曳舟駅より徒歩5分)
※この他、期間中にトークイベントなどを開催する可能性があります。随時詳細が決定次第お知らせしますので、SNS等で最新情報をご確認ください。
千賀健史|プロフィール
1982年滋賀県生まれ。大阪大学卒業。第16回写真「1_WALL」グランプリ、第44回キヤノン写真新世紀優秀賞、第8回大理国際写真展最優秀新人写真家賞、シンガポール国際写真祭ダミー賞受賞。また、アルル国際写真祭The Luma Rencontres Dummy Book Award Arles 2019、2022でショートリスト入りなど多数。
主な展覧会に、第16回写真「1_WALL」グランプリ個展“Suppressed Voice”(ガーディアン・ガーデン、2018)、「写真新世紀展2021」(東京都写真美術館、2021)、千賀健史個展“HIJACK GENI”(Reminders Photography Stronghold、2022)、プリピクテジャパンアワード「Fire & Water」(東京都写真美術館、2022)、「まず、自分でやってみる。」(BUG、2024)がある。
https://chigakenji.com
千賀は、「happn」(2015)、「Bird, Night and then」(2017)、「The Suicide Boom」(2019)と、入念なリサーチに基づきながら、貧困格差や自殺といった現代社会の影を革新的な視点で表現してきました。
2022年には、自身の家族がターゲットとなったことをきっかけに、「オレオレ詐欺」をテーマにした制作を開始。『何が真実で、何が嘘かが徐々に分からなくなる』という複雑な社会を描いたアーティストブック「HIJACK GENI」を発表しました。この作品は、「オレオレ詐欺」という言葉の裏に隠された、私たちが無意識のうちに目を逸らしている現実を鋭く表現しています。
この作品は、Luma Rencontres Dummy Book Award Arles 2022のショートリストやPrix Pictet Japan Awardのファイナリストに選ばれ、その後、シンガポール国際写真祭ダミー賞を受賞しました。そして、その副賞として、韓国の出版社IANN Booksより普及版が刊行されることになりました。
本展示では、韓国から持ち帰った刷り出しや、実際の印刷に使用されたPS版を洗浄して制作した作品を展示いたします。また、刊行を記念して、RPSでご購入いただく場合に特典が付属する特別版の販売も行われます。さらに、この刊行記念展は来春、RPS京都分室パプロルでも開催される予定です。ぜひご期待ください。
「HIJACK GENI」
水に浸かった紙はあっという間にほろほろと崩れだし、さっきまでそこにあった姿はもう記憶の縁でゆらゆらと変化している。そこにあったのは一体何であったのか。
2003年、いわゆるオレオレ詐欺が世の中に知れ渡りだした頃、この犯罪はいわゆる裏社会の人々によって行われていた。それが今や犯罪とは無縁に生きてきた「一般人」がその要ともいえる存在となってしまっている。
詐欺といえばそもそも一部の暴力団では、外道の行いとして禁止されていたような犯罪である。それを、「仕事」として行うものが後を絶たない現代社会は極めて異常である。
2019年、数々のルポやインタビューを読みながら加害者側の置かれている状況や心理について共感するものを感じながらも遠くで起きている物語として受け止めていたのだが、ある日、両親と話していて母親が特殊詐欺グループのターゲットである事を知ることで、自分の中で被害を受ける者としての矛盾する気持ちが生まれ始めた。
2020年、撮影期間中は詐欺グループの一員のような日々を過ごしていた。隠れ家に使えそうなホテル、オフィス、カラオケボックスを巡り、詐欺電話がかかってきている地域をウロウロしたり、コインロッカーからコインロッカーへ荷物を運んでみたり、犯行に必要な道具を買い集めてみたり、高齢者に会いに行ったり、電話をしてみたり、ATMで30万円おろしてみたり。実際に犯罪行為をしているわけでもないのに、やたらと人の目が気になり緊張した事をよく覚えている。何が真実で何が嘘か、段々と分からなくなっていった。
2021年、詐欺グループがさまざまな役割を演じるように、自分の顔を元に90名の高齢者と若者の架空のポートレートを作成した。
自分であって、自分でないその人物はまるで本当に存在しているようで、彼らの仮名を考えている間にその人物像はますますリアルになっていった。
そうして本作中のイメージを水溶紙に印刷して、溶かし、全て無かったことにしているとなんだか少しホッとした。詐欺グループも証拠隠滅している時はそんな気持ちだったかもしれない。
2022年、そうして出来上がった矛盾と嘘の塊が本作である。
想像の中で私は加害者であり、被害者でもあったが、現実では第三者である。溶けて見えなくなってしまった彼らを包摂する水だ。ゆらゆらと揺れる私たちの中に見えるものはなんだろうか。
追記:2024年、現在の社会情勢を反映するかのように特殊詐欺は形を変えこの2年増え続けている。
千賀健史
千賀健史 写真展「HIJACK GENI IANN Books 出版記念展」
◎会期:2024年9月14日(土)〜23日(月・祝、秋分の日)
13:00〜19:00 会期中無休、入場無料
◎オープニングレセプション / アーティストトーク
2024年9月14日(土)19時ごろから
※オープニング+アーティストトークは19時からですのでご注意ください。
展示は13時からご覧いただけます。
◎開催場所:Reminders Photography Stronghold Gallery
住所:東京都墨田区東向島2-38-5
(東武スカイツリーライン曳舟駅より徒歩6分・京成曳舟駅より徒歩5分)
※この他、期間中にトークイベントなどを開催する可能性があります。随時詳細が決定次第お知らせしますので、SNS等で最新情報をご確認ください。
千賀健史|プロフィール
1982年滋賀県生まれ。大阪大学卒業。第16回写真「1_WALL」グランプリ、第44回キヤノン写真新世紀優秀賞、第8回大理国際写真展最優秀新人写真家賞、シンガポール国際写真祭ダミー賞受賞。また、アルル国際写真祭The Luma Rencontres Dummy Book Award Arles 2019、2022でショートリスト入りなど多数。
主な展覧会に、第16回写真「1_WALL」グランプリ個展“Suppressed Voice”(ガーディアン・ガーデン、2018)、「写真新世紀展2021」(東京都写真美術館、2021)、千賀健史個展“HIJACK GENI”(Reminders Photography Stronghold、2022)、プリピクテジャパンアワード「Fire & Water」(東京都写真美術館、2022)、「まず、自分でやってみる。」(BUG、2024)がある。
https://chigakenji.com
作家・出演者 | 千賀健史 |
会場 | Reminders Photography Stronghold |
住所 | 131-0032 東京都墨田区東向島2-38-5 |
アクセス | 京成曳舟駅(京成電鉄押上線)文化センター口 徒歩5分 東向島駅(東武伊勢崎線) 徒歩6分 曳舟駅(東武スカイツリーライン, 東武鉄道亀戸線)東口 徒歩7分 |
会期 | 2024/09/14(土) - 23(月) |
時間 | 13:00-19:00 |
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