Padograph パドグラフ 파도그래프

鈴木萌写真展「AABUKU」

Reminders Photography Stronghold

2024/02/10(土) - 25(日)

MAP
SHARE
Facebook share button
Tokkurikiwata #01©︎Moe Suzuki
Tokkurikiwata #01©︎Moe Suzuki
Reminders Photography Stronghold(東京)とRPS京都分室パプロルにて、2024年度企画展/ 鈴木萌写真展「Aabuku」を開催いたします。東京のReminders Photography Strongholdでの展示は、2023年6月に行われた「Jim Casperに作品をピッチする日」にて本作がRPS特別賞を受賞した記念展となります。
当ギャラリーでは4年ぶりの展示開催となる鈴木は、2020年発表の「底翳」で表現した緑内障が進行する父親が見る世界から継続して、病や家族関係、都市開発などで変化する記憶の視覚表現に挑戦してきました。2020年より制作が始まった本作は、沖縄県における「有機フッ素化合物」(PFAS)による水や土壌汚染をテーマにした作品となります。3年間に渡るリサーチでデータ的側面の情報収集をするとともに、汚染が判明している水や土地につながりのある人々を訪ね歩き、集めた個々人の記憶から環境汚染の実態やその背後にある社会的構造を捉えようとした作品が初披露されるこの機会にぜひご注目ください。
東京で2月に開幕する展示を皮切りに、同タイトル写真集の刊行も決定しました。また、期間中はいくつかの関連イベントも企画中です。詳細はギャラリーSNSにて随時お伝えしていきます。東京と京都で皆様のお越しをお待ちしております。

Aabuku

朝起きるとまず初めに飲んだコップ一杯の水
保育園に行く息子に毎日持たせていた水筒
グッピーを捕まえて遊んだせせらぎ
手ですくって飲んでいた湧水
自然農法で育ててきた田芋
サッカーボールを蹴る学校のグラウンドの土
卵を投げ入れて拝む池
サップに乗ってのぼる川

目に見えず、匂いも味もしないその物質は、あの時飲んだ水に、さわった水に、畑にまいた水に、含まれていたのだろうか。そして今まさに、蛇口をひねって流れ出るこの水にも含まれているのだろうか。体の中に蓄積されたこの物質は、自分に、あるいは子供たちにどんな悪さをしたのだろうか。これからも、するのだろうか。

2016年、沖縄県中部に位置する浄水場から本島中南部45万人に供給される水道水が有機フッ素化合物(PFAS)で汚染されていることが公表された。それは自然界でも人間の体内でもほとんど分解されることのない「永遠の化学物質」(フォーエバーケミカル)の異名を持つ発がん性物質だった。4年後の2020年、宜野湾市の普天間飛行場の格納庫にある火災報知器が誤作動し、大量の泡消火剤の泡が排水溝を通って基地外に流れ出た。ロマンチックにふわふわと漂い、いつまでも消えない泡には高濃度のPFASが含まれていた。基地と、泡と、水。それぞれの点の要素が繋がる中で、人々は昔見たかもしれない「泡」の記憶の断片をたぐりよせながら、当たり前のように飲んで、遊んで、仕事に、そして拝みに使ってきた水の本当の姿を、自分なりに捉えようとしていた。

これは、沖縄における米軍基地由来のPFAS汚染の実態を、人々の水や土地にまつわる記憶を軸に語った物語である。時を遡って汚染の数値を測ることはできず、国も米軍も根本的な解決策を提示しないばかりか汚染の事実も認めてはいない。それでも汚染の実態が徐々に明かされるにつれて、今まで気にも留めていなかった日々の記憶に歪みが生じた人々がいる。その記憶を辿りながら、汚染された土地と水を歩いた。綿毛のようなふわふわの泡以外に、視覚的に捉えることはできない永遠の化学物質は、基地のフェンスに遮られどうやっても辿り着くことができない汚染源と、気持ちの良い風と波の音を被せて敢えて見ようとしない何重にも捩れたこの地の重荷に重なっている。つかめそうでつかめない、ふわふわと漂う夢のような泡をかきわけるようにして、私は人々の言葉と、言葉にされない思いを紡いだ。

鈴木萌

鈴木萌写真展「Aabuku」
◎会期:
<東京>2024年2月10日(土)〜 25日(日)13:00~19:00
<京都>2024年5月3日(金)〜12日(日)13:00~19:00
会期中無休、入場無料

◎オープニングレセプション / アーティストトーク
<東京>2024年2月10日(土)19時ごろから
<京都>2024年5月3日(金)13時ごろから
その他トークイベントなどを企画中です。くわしくはギャラリーSNSをご覧ください。

鈴木萌 | プロフィール
東京都出身。London College of Communicationで写真を学び、2011年帰国。独学で製本技術を学び、ビジュアル・アーティストとしての活動を開始。主な媒体となる写真を軸に、アーカイブ、イラスト、リサーチ、映像などを織り交ぜ、本やインスタレーションの形で物語を表現する。時間の経過、環境の変化、障害、コミュニティ内の人間関係などに伴って変容していく記憶や風景をテーマに「底翳」「Today’s Island dismantling」などを制作。前作「底翳」は東京、京都、シンガポール、マレーシア、オーストラリア、北アイルランド、フランスなど世界各地で展示され、同タイトル写真集はLuma Arles Dummy Book Award 2021を始めとする世界のダミーブック賞に入選・受賞経験を持つ。

出典

作家・出演者鈴木萌
会場Reminders Photography Strongholdりまいんだーず ふぉとぐらふぃー すとろんぐほーるど
住所
131-0032
東京都墨田区東向島2-38-5
アクセス
京成曳舟駅(京成電鉄押上線)文化センター口 徒歩5分
東向島駅(東武伊勢崎線) 徒歩6分
曳舟駅(東武スカイツリーライン, 東武鉄道亀戸線)東口 徒歩7分
会期2024/02/10(土) - 25(日)
時間13:00-19:00
SNS
    ウェブサイト