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超不定期訪問/滞在制作project《Nami Itaに、いた?いる!》 Vol.08 前田梨那『けがとカルス』

オルタナティブ掘っ立て小屋『ナミイタ Nami Ita』

2025/11/05(水) - 12/15(月)

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【開催概要】

オルタナティブ掘っ立て小屋『ナミイタ-Nami Ita』は2025年最後の展示/滞在制作企画、【超不定期訪問/滞在制作project《Nami Itaに、いた?いる!》 Vol.08 前田梨那『けがとカルス』】を実施します。
神奈川県出身で現在も同地を拠点にする前田は、和光大学で写真を中心にした制作手法を学び、在学中に『TOKYO FRONT LINE PHOTO AWARD 2021』でグランプリ(大山光平賞)を獲得して注目を集め、「”私”と”他者”が世界に存在すること、その記憶や痕跡について具現化すること」を一貫したテーマとして、卒業後は大小を問わず様々な場所で旺盛な発表を行う有望な若手作家です。ナミイタでは移転前の2022年春に本企画のVol.03として『去来するイメージ/往還する痕跡』を開催しており、個人としては約3年半ぶりの展示企画となります。
いわゆる「写真家」ではない前田の作品は、ケミグラムをはじめとした特殊な現像技法などを用いつつも、光学と工学の技術的結集である「写真」とは一線を画し、独創性の高いメディウム、マテリアルの組み合わせ(※1)でコンセプトを表現するインスタレーションを中心にしていますが、それらは、突き詰めれば「光の反射を捉えて世界の痕跡を物体に留める技術を使う」という意味で、「写真ではないが、写真という営為が生み出したもの」と言えます。
近年、前田は制作、展示手法をさらに拡張しており、「写真」以外に絵画やファウンド・オブジェクトも交える独自のインスタレーションを生み出しつつあります。本展『けがとカルス』は、変貌していく作家の次なる作品展開、試行錯誤を具現化するものです。

“失った物の再現と失敗、他者との扉としての作品制作をしている。技法に捉われずイメージを解体、変容させながら、写痕跡、記憶、時間について考えている”
“社会のみならず、この世界は生命の集合体であり、「私」はある形態や言葉で構成された一部に過ぎない”

作品に対して上記のように述べる作家が本展で中核的な取り組みと定めるのは、会期中、暗室化させたギャラリー壁面へ直にオリジナルの人型スタンプを(観客と共に)押し、重ね続けることで「毛皮や海のように」(前田)巨大なイメージを現出させる滞在制作『stampman』。以前から作品上にネガとして現したフォルムのイメージを通して人間社会における自他の境界を表現してきた模索が、建築物を支持体に新たな世界を現出させます。企画タイトル『けがとカルス』(※2)も、そのような思索を表したものです。
そして、『stampman』は会期終了後、直ちに塗りつぶされ、消滅し、記録上だけの存在になります。作品自体の輪郭、境界線もまた絶対ではなく、複数の人の手によって限定された時間の中にのみ作られる、揺らぎのある世界を立ち上げようという実験。ご来場の方は是非、前田と共にその世界の一部となって下さればと思います。

※1:写真乳剤を塗った巨大なガーゼ布、レジンとスライド映写機、レジンと回り灯籠など。
※2:カルス=植物学の用語で傷を受けた植物が自己防御のために生成する不定形な細胞組織、または培養で未分化な状態に誘導した、再分化可能な細胞塊。

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【超不定期訪問/滞在制作project《Nami Itaに、いた?いる!》 Vol.09. 前田梨那『けがとカルス』】

■会期:2025年11月5日(水)→12月15日(月)
※ 土日月オープン。火水木金休み。
※ 但し11月5-7日は『例外アートウィーク』参加のためオープン。9日は翌10日始発までのオールナイト公開。
※11月8-10,15,16日は『SUPER OPEN STUDIO 2025』参加のため入場無料。

■時間:12時30分→20時
※11月9日はオールナイト公開。
※ 作家の滞在時は作家の公開制作&観客との協働で一部作品が拡張されていきます。

■会場:オルタナティブ掘っ立て小屋『ナミイタ Nami Ita』
神奈川県横浜市 青葉区 寺家町508(『アトリエ柿の里』内)
徒歩=小田急線『柿生』 or 東急田園都市線『青葉台』駅より約40分。
バス=柿生駅(小田急小田原線)北口からバス。
柿22, 柿23 桐蔭学園行→早野停留所から徒歩12分。
青葉台駅(東急田園都市線)北口からバス。青30(寺家町方面)寺家町停留所から徒歩3分
青31(鴨志田団地行)団地中央停留所から徒歩12分。
青28(桐蔭学園前行))常盤橋停留所から徒歩16分
※ 駐車場もございますが、数が数台に限られるため、事前にお問い合わせ下さい。
※ 所在場所の地図はGoogleマップをご参照下さい。

■ 入場:ドネーション500円(他企画とも共通)
※ 展示オリジナルの小品、ポストカード、ナミイナのオリジナル版画の返礼パック付き。
※ 駐車スペースが極めて限られます。事前にご確認下さい。
■ 企画+問い合わせ:東間嶺(TEL:090-1823-7330)
■ 協力:アトリエ柿の里、作庭工房
■ MAIL: [email protected] URL: https://tinshacknamiita.org/
■ SNS: Twitter&FB→@Namiita2036 Instagram→@tinshacknamiita

プレスリリースPDF
https://drive.google.com/file/d/1RPpWlUI01PGF0UGeCJEcnIIALw2ZBsx4/view?usp=sharing


* アーティスト&ディレクターnote

どうして制作をするのか考えてみる。
作ることで立て直してきた私にとって、制作は全てになりつつある。
作らなくても死ぬことはないはずだが、やめられない。
考えてみると制作を始める前の昔の記憶があまりない。私はよく忘れ物をし、ぼーっとしていることが多い子だったらしい。覚えているのは伯母の家の座布団の柄、車の窓のふちの模様、公民館の匂いなどストーリー性のない景色ばかり。(お葬式は別)どこか客観的な感覚。作る事は主体的に生きることと切り離せない気がしている。
結局のところ私は生きる上で起こることを理解しようとしたり、対処するために作品を作っているのだと思う。ある出来事を純粋化していくこと、言葉にせずに形にすること。
制作の中で私は素材や場所、人を通して世界と関わることができる。どんなものでも表現になりうる。私は表現することが出来てよかったと思う。

(前田梨那)


「私という存在は人間の、生命の大きな流れの中で一瞬で通りすぎる流れ星のようなもの。固有の体験を生きているというより、たくさんの人間が紡いできた生をなぞる演劇的な役割というか、その繰り返しの一部でしかない感覚がある」
「個人を生きようとも抗えない力、意志を吸い込んでしまう引力、人が生きていく事と、私とあなたが違うわけを探して制作しています」

上記のテキストは、前田さんが2022年の春、旧ナミイタで訪問滞在の展示『去来するイメージ/往還する痕跡』をしたときフライヤーに引用したものだ。あれから三年半程がすぎたが、いまの前田さんは、当時より遥かにテキストへ書かれた感覚に接近した作品をつくっているようにみえる。三年半前の展示では、遮光したナミイタの空間内へ等身大をはるかに超えるガーゼを三つ吊るしたインスタレーションが中心だった。ガーゼには写真用乳剤が塗られ、引き伸ばし機と型紙、実際の人間を投影に使って数時間(!)露光したという、ぼんやりとした象が浮かんでいた。

遮光した空間と像との関係性は原初の写真的イメージ(ネガ)として有名なアルゼンチンの「手の」壁画洞窟である『クエバ・デ・ラス・マノス』などを念頭に置いていたが、前田さん曰く、布に焼き付けられたイメージには記憶や伝承の痕跡を具現化した「聖骸布みたいなもの」も重ねていたという。外部の様々な環境音を耳にしながら、薄暗い空間で4メートルほど上から吊られた巨大な象に包囲される体験はとても奇妙で強くわたしの記憶に残ったのだが、今回の『けがとカルス』で前田さんが取り組もうとする滞在制作と展示の内容は、あのときよりもさらに先鋭度を増している。長年取り組み、ある時期まで代名詞だったケミグラムの写真作品は排され、代わりに金属とゴムを使った自家製の「人型(ひとがた)スタンプ」で壁に像を直(ちょく)で擦り付け、増殖させ、物理空間をイメージで埋め尽くす…と言うより一つの巨大なイメージに変化させようと試みる。写真を思考の全面的な手がかりにしていた時期は去り、より直接的な探求に向かっているのだろう。

それは冒頭で引いたように巨大な生命や時間の流れの中に、個というよりは「役割の一部として存在する自分」という感覚を具現化したもので、展示タイトルに現れる「カルス」とも符合していく。傷を受けるたびに防御反応として増殖し、様々な「役割」へ分化する遺伝子を持つ植物の細胞塊(カルス)は、個的かつ全体の一部という存在である。
人間がそうした感覚を持つと公言する場合、やや離人症的というか、自他の境界に関しての人格的危うさを疑われそうだが、現在も明らかに「個」として活動しまくっている前田さんからそうした表現が出てくるというのが重要な、作家としての「ユニークさ」だろう(こんな通俗的表現でどうもスイマセン)。

果たして彼女はこれからどこに進んでいくのだろうか?

これから一か月と少し、増殖していくイメージに包囲されながら、そのことについて考えてみたい。

(ディレクター:東間嶺)


【アーティスト・プロフィール】

1997年神奈川県生まれ。2021年3月に和光大学芸術学科を卒業、2022年3月まで同大研究生。失った物の再現と失敗、他者との扉としての作品制作をしている。技法に捉われずイメージを解体、変容させながら、写痕跡、記憶、時間について考えている。
近年の個展として『Tide Land』(aaploit、東京、2023)、『Happened』(奥野ビル306号室プロジェクト、東京、2023) などがあり、グループ展として『たにそこをたたく』(art Valley HIRAKU、神奈川、2025)、「変性する写真の実態」(COPYCENTER GALLERY、東京、2025)、 「SENSE ISLAND/LAND 感覚の島と感覚の地 2024」 (猿島・横須賀市街地、神奈川、2024) などがある。
ナミイタの企画には過去、『例外アートウィーク2024:移設中/仮設の現在地』へ参加し、2022年に《Nami Itaに、いた? いる! 》Vol.03として『去来するイメージ/往還する痕跡』を開催している。


* 超不定期滞在制作project《Nami Itaに、いた?いる!》

作家がナミイタ Nami Itaを不定期・長短期で来訪/滞在し、小屋の内外に作品をインストール/展示/パフォーマンスする連続企画。レジデンス未満のゆるい感覚で、場と作品、作品と作者、作者と場の新たな関係性を探ってゆく試みです。これまでにVol.01 山本麻世『イエティのまつ毛』(2021 年11 月1 ~ 12 月2 日)、vol.02 藤巻瞬『不完全な修復』(2022年1月14日~2月14日)、vol.03 前田梨那『去来するイメージ/往還する痕跡』(2022年4月29日~5月30日)、vol.04 金井聰和『鳥小屋マサラ--骨を探して--』(2022年8月5日~9月11日)、vol.05 蓮輪友子『THEATER』(2023年1月8日~2月6日)、vol.06 仁禮洋志『もうれんやっさ』(2023年2月10日~2月26日、3月17日~3月27日)、Vol.07 GEN『聖者』(2023年9月15日~10月16日)、Vol.08 山本麻世『だいだらぼっちの毛づくろい』(2025年4月26日~6月9日)を実施。

出典

作家・出演者前田梨那
会場オルタナティブ掘っ立て小屋『ナミイタ Nami Ita』おるたなてぃぶ ほったてごや なみいた
住所
227-0031
神奈川県横浜市青葉区寺家町508
アクセス柿生駅(小田急小田原線)北口からバス
柿22, 柿23(桐蔭学園行) 早野停留所から徒歩12分

青葉台駅(東急田園都市線)北口からバス
青30(寺家町方面) 寺家町停留所から徒歩3分
青31(鴨志田団地行) 団地中央停留所から徒歩12分
青28(桐蔭学園前行) 常盤橋停留所から徒歩16分

※駐車場もございますが、数が数台に限られるため、事前にお問い合わせ下さい。
会期2025/11/05(水) - 12/15(月)
時間12:30-20:00
※11月9日(日)は翌10日(月)始発までのオールナイト公開。
※作家の滞在時は作家の公開制作&観客との協働で一部作品が拡張されていきます。
休み火曜日から金曜日
※ただし、11月5日(水)-7日(金)は『例外アートウィーク』参加のためオープン。
観覧料ドネーション500円(他企画とも共通)
※ 展示オリジナルの小品、ポストカード、ナミイナのオリジナル版画の返礼パック付き。
※11月8日(土)-10日(月),15日(土),16日(日)は『SUPER OPEN STUDIO 2025』参加のため入場無料。
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