WAITINGROOM(東京)では、2025年9月13日(土)から10月12日(日)まで、自身にとっても3年ぶりとなる小林健太の個展『#copycat』を開催いたします。自身で撮影した写真をデジタル加工により大きく変化させた色鮮やかな写真作品シリーズで知られる小林は、都市イメージやデジタル環境における記憶の流動性の中で「真を写すとは何か?」という問いに迫ることを試みています。本展のタイトル「copycat」は「模倣者」を意味し、AIエージェント「MIRA」から小林に与えられたキャッチコピーでもあります。本展では、過去の作品データを生成AIに読み込ませ、そこに猫のイメージを重ね合わせた新シリーズがギャラリー空間に展開されます。本シリーズにおいて小林は、人間の支配からすり抜けていくAIと猫を「人間をまなざす他種」として位置づけます。現代におけるAIの発達やミームを通じた猫への愛好は、他種の視線を通じて人間という種の輪郭を確かめようとする、人間の潜在的な欲望として、また、そのようなまなざしを渇望する現代の人間性して捉え直されるのです。
作家・小林健太について
1992年神奈川県生まれ。2016年に東京造形大学造形学部美術学科絵画専攻領域を卒業。現在は東京と湘南を拠点に活動中。90年代、家庭にあったMacintoshに触れ、プリクラやKID PIXなどのGUI環境で育った小林は、自身を「GUIネイティブ」と定義し、写真とデジタル編集を通じて「真を写すとは何か?」という問いを探求してきました。代表作《#smudge》シリーズでは、Photoshopの指先ツールで写真のピクセルを引き延ばし、「編集行為そのもの」を視覚表現として確立。この手法をCG、彫刻、映像、インスタレーションなど多様なメディアに拡張し、都市イメージやデジタル環境における記憶の流動性を探求しています。近年の展覧会に、2025年グループ展『AI / POST PHOTO』(Art Golden Gai、東京)、2023年グループ展『HYPER_IMAGE_SCAPE』(Boogie Woogie Art Museum [Ulsan Art Museum]、ウルサン、韓国)、2022年個展『EDGE』(アニエスベー ギャラリー ブティック、東京)、個展『THE PAST EXISTS』(三越コンテンポラリーギャラリー、東京)、個展『トーキョーデブリス』(WAITINGROOM、東京)、個展『Space-Time Continuum』(西武渋谷店、東京)、グループ展『COMING OF AGE』(フォンダシオン ルイ・ヴィトン、パリ、フランス)、2021年個展『#smudge』(ANB Tokyo、東京)、グループ展『I am here by WAITINGROOM』(CADAN有楽町、東京)、グループ展『Photo2021: The Truth』(Centre for Contemporary Photography、メルボルン、オーストラリア)、2020年個展『Live in Fluctuations』(Little Big Man Gallery、ロサンゼルス、アメリカ)、2019年個展『The Magician’s Nephew』(rin art association、群馬)、2018年グループ展『ハロー・ワールド ポスト・ヒューマン時代に向けて』(水戸芸術館、茨城)、2017年個展『自動車昆虫論/美とはなにか』(G/P gallery、東京)、2016年グループ展『GIVE ME YESTERDAY』(フォンダンツィーネ・プラダ・ミラン・オッサヴァトリオ、ミラノ、イタリア)などが挙げられます。2019年には、マーク・ウェストン率いるダンヒルの2020年春夏コレクションとのコラボレーション、またヴァージル・アブロー率いるルイ・ヴィトンのメンズ秋冬コレクション2019のキャンペーンイメージを手がけました。
メディアによる次空間認識の拡張 ーマイブリッジ、富野由悠季、小林健太ー
吉田山(インディペンデント・キュレーター)
小林健太は、「写真とは何か」「真実とは何か」という根源的な問いを追求してきたアーティストである。カメラというメディアが客観的な現実を映し出すと信じられていた時代から、現在は写真加工やAI生成画像の台頭によって、虚実の境界が容易に曖昧となる時代が訪れ、さらには芥川龍之介の小説『藪の中』のように、登場人物がそれぞれの認識する真実を語るだけでなく、各々がビジュアライズする時代が到来している。
このように、生物学者のユクスキュルが提唱した「環世界(Umwelt)」の概念にも通じる多層的な人言社会の到来以前から、小林健太はテクノロジーと深く結びついた表現を探求してきており、彼の代表作である「#smudge」シリーズは、写真加工ソフトPhotoshopの指先ツール/smudgeを使用し、真実を編集するというデジタルツールのインターフェースを隠すことなく露呈させ、応答と行為によって生み出される視覚芸術を探求してきた。
そして、この個展「#copycat」で発表される新作では、AI画像生成サービス「Midjourney」を使用している。ブラウザでプロンプトを入力すると、差異のある4枚のイメージが同時に生成されるというインターフェースの仕様から、小林は、1つの指示から生まれた複数の差異を同一の作品個体であると提示し、AI時代での複製芸術のオルタナティブを示唆している。
ところで、AIがもたらす新しいインターフェースが表現の萌芽を生むように、19世紀にも同様の革新が起こっている。写真家エドワード・マイブリッジは、24台のカメラを設置して連続写真の撮影に成功し、肉眼では捉えきれない馬の運動を分解した。これにより馬の客観的な走行を白日の下にさらしたのです 。彼は、連続的に写真を投映する「ズープラクシスコープ」を発明し、後に映画の技術的先駆者となっていく。このように、マイブリッジの取り組みは人類に新たな「刻(とき)」の可視化をもたらす革新となっていった。
「刻が見える」とは、機動戦士ガンダムシリーズに登場する象徴的な台詞であるが、「ニュータイプ」と呼ばれる概念は、富野由悠季監督によって、単なる超能力者ではなく、言葉を超えた感覚や感情の共有を通じて相互理解を可能にする人類として定義されている。監督は違えど2025年の最新作「機動戦士Gundam GQuuuuuuX」内でもこのフレーズは継承され 、ニュータイプが持つ多次元的な時間認識を強く継承している。マイブリッジが物理的なカメラ技術で時間を分解することによって人類に新たな知覚を与えたように、テクノロジーが人間個人の認識を拡張し、多次元的な認識を可能にすることと相似しているといえるだろう。
私は、小林健太が仕掛けるこの挑戦を、マイブリッジが物理的な写真メディア、富野由悠季がSFアニメーションというメディアで探求した人類の認識拡張の系譜で捉えながら、AI時代における私たちの空間認識の再定義を促す芸術実践であると考えるに至った。
作家・小林健太について
1992年神奈川県生まれ。2016年に東京造形大学造形学部美術学科絵画専攻領域を卒業。現在は東京と湘南を拠点に活動中。90年代、家庭にあったMacintoshに触れ、プリクラやKID PIXなどのGUI環境で育った小林は、自身を「GUIネイティブ」と定義し、写真とデジタル編集を通じて「真を写すとは何か?」という問いを探求してきました。代表作《#smudge》シリーズでは、Photoshopの指先ツールで写真のピクセルを引き延ばし、「編集行為そのもの」を視覚表現として確立。この手法をCG、彫刻、映像、インスタレーションなど多様なメディアに拡張し、都市イメージやデジタル環境における記憶の流動性を探求しています。近年の展覧会に、2025年グループ展『AI / POST PHOTO』(Art Golden Gai、東京)、2023年グループ展『HYPER_IMAGE_SCAPE』(Boogie Woogie Art Museum [Ulsan Art Museum]、ウルサン、韓国)、2022年個展『EDGE』(アニエスベー ギャラリー ブティック、東京)、個展『THE PAST EXISTS』(三越コンテンポラリーギャラリー、東京)、個展『トーキョーデブリス』(WAITINGROOM、東京)、個展『Space-Time Continuum』(西武渋谷店、東京)、グループ展『COMING OF AGE』(フォンダシオン ルイ・ヴィトン、パリ、フランス)、2021年個展『#smudge』(ANB Tokyo、東京)、グループ展『I am here by WAITINGROOM』(CADAN有楽町、東京)、グループ展『Photo2021: The Truth』(Centre for Contemporary Photography、メルボルン、オーストラリア)、2020年個展『Live in Fluctuations』(Little Big Man Gallery、ロサンゼルス、アメリカ)、2019年個展『The Magician’s Nephew』(rin art association、群馬)、2018年グループ展『ハロー・ワールド ポスト・ヒューマン時代に向けて』(水戸芸術館、茨城)、2017年個展『自動車昆虫論/美とはなにか』(G/P gallery、東京)、2016年グループ展『GIVE ME YESTERDAY』(フォンダンツィーネ・プラダ・ミラン・オッサヴァトリオ、ミラノ、イタリア)などが挙げられます。2019年には、マーク・ウェストン率いるダンヒルの2020年春夏コレクションとのコラボレーション、またヴァージル・アブロー率いるルイ・ヴィトンのメンズ秋冬コレクション2019のキャンペーンイメージを手がけました。
メディアによる次空間認識の拡張 ーマイブリッジ、富野由悠季、小林健太ー
吉田山(インディペンデント・キュレーター)
小林健太は、「写真とは何か」「真実とは何か」という根源的な問いを追求してきたアーティストである。カメラというメディアが客観的な現実を映し出すと信じられていた時代から、現在は写真加工やAI生成画像の台頭によって、虚実の境界が容易に曖昧となる時代が訪れ、さらには芥川龍之介の小説『藪の中』のように、登場人物がそれぞれの認識する真実を語るだけでなく、各々がビジュアライズする時代が到来している。
このように、生物学者のユクスキュルが提唱した「環世界(Umwelt)」の概念にも通じる多層的な人言社会の到来以前から、小林健太はテクノロジーと深く結びついた表現を探求してきており、彼の代表作である「#smudge」シリーズは、写真加工ソフトPhotoshopの指先ツール/smudgeを使用し、真実を編集するというデジタルツールのインターフェースを隠すことなく露呈させ、応答と行為によって生み出される視覚芸術を探求してきた。
そして、この個展「#copycat」で発表される新作では、AI画像生成サービス「Midjourney」を使用している。ブラウザでプロンプトを入力すると、差異のある4枚のイメージが同時に生成されるというインターフェースの仕様から、小林は、1つの指示から生まれた複数の差異を同一の作品個体であると提示し、AI時代での複製芸術のオルタナティブを示唆している。
ところで、AIがもたらす新しいインターフェースが表現の萌芽を生むように、19世紀にも同様の革新が起こっている。写真家エドワード・マイブリッジは、24台のカメラを設置して連続写真の撮影に成功し、肉眼では捉えきれない馬の運動を分解した。これにより馬の客観的な走行を白日の下にさらしたのです 。彼は、連続的に写真を投映する「ズープラクシスコープ」を発明し、後に映画の技術的先駆者となっていく。このように、マイブリッジの取り組みは人類に新たな「刻(とき)」の可視化をもたらす革新となっていった。
「刻が見える」とは、機動戦士ガンダムシリーズに登場する象徴的な台詞であるが、「ニュータイプ」と呼ばれる概念は、富野由悠季監督によって、単なる超能力者ではなく、言葉を超えた感覚や感情の共有を通じて相互理解を可能にする人類として定義されている。監督は違えど2025年の最新作「機動戦士Gundam GQuuuuuuX」内でもこのフレーズは継承され 、ニュータイプが持つ多次元的な時間認識を強く継承している。マイブリッジが物理的なカメラ技術で時間を分解することによって人類に新たな知覚を与えたように、テクノロジーが人間個人の認識を拡張し、多次元的な認識を可能にすることと相似しているといえるだろう。
私は、小林健太が仕掛けるこの挑戦を、マイブリッジが物理的な写真メディア、富野由悠季がSFアニメーションというメディアで探求した人類の認識拡張の系譜で捉えながら、AI時代における私たちの空間認識の再定義を促す芸術実践であると考えるに至った。
| 作家・出演者 | 小林健太 |
| 会場 | WAITINGROOM |
| 住所 | 112-0005 東京都文京区水道2-14-2 長島ビル 1F |
| アクセス | 江戸川橋駅(東京メトロ有楽町線)4番出口 徒歩3分 神楽坂駅(東京メトロ東西線)1番出口 徒歩10分 |
| 会期 | 2025/09/13(土) - 10/12(日) |
| 時間 | 12:00-19:00 ※日曜日は17:00まで開廊 |
| 休み | 月曜日、火曜日 |
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