虚無僧、電車、人体の一部、破裂したザクロ…
奇妙なモチーフが増殖し、入り乱れながら交錯する、植竹邦良(1928-2013)の絵画。
その底流には、戦後ニッポンの政治、社会、都市開発といった世相が密かに編み込まれており、モチーフへの執着を感じる徹底した細密描写は、現代のコンピュータグラフィックを見慣れた目に異様な迫力をもって迫ります。
府中で制作を続けた知られざる画家の全貌を初紹介します。
ようこそ、植竹ワールドへ。
展示構成
1 焼跡からはじまる
植竹邦良は1928年、昭和初期の東京・品川に生まれ、赤羽に育ちます。1945年東京工専印刷(現・千葉大学)に入学するも、学徒動員や空襲に脅かされる日々に青年期を送りました。戦後は工場実習として米軍管理下の印刷工場で働きつつ、東京工専の教師だった画家・赤穴宏の手引で絵を学び始め、猪熊弦一郎主宰の田園調布純粋美術研究所に通いました。
1950年代初頭は、米ソ冷戦の顕在化や朝鮮戦争開戦といった事態をうけ、反戦平和運動や様々な社会運動が熱を帯びていた時代です。若い画家たちも、切迫した危機感をもって、何を描くべきか、どのように芸術が社会と関わるべきか、熱い議論を交わしていました。若き日の植竹もこれらの運動に接近し「ニッポン展」などに出品を重ねます。残念ながらこの時期の作品はほとんど残されていませんが、スケッチなどに、焼跡から画家を目指し出発した画家の歩みを見ることができます。
2 闘争から深める幻想
1960年代以降に植竹が展開するのは、様々なモチーフが入り乱れ、反復しながらつながっていく夢想的空間の構成です。それらは政治や社会問題から切り離されたものではなく、戦時下の記憶や、安保闘争・学園紛争といった社会の状況が複雑に編み込まれています。世相を象徴するモチーフと、自身の私的な記憶や執着を混在させ、絵画のなかに無限につづく夢想空間を展開していきます。
3 地形と都市のダイナミズム
植竹の作品は、現実ではありえない空想の空間を描きつつ、そのなかに奇妙な実在感を備えています。その構成要素の一つに、現実の地形や建築、都市の細部にわたる描写があります。
幼い頃から地層や地形に興味を持っていた植竹。1970年代後半以降、角度や光を変えて地形模型を写真におさめ、それを自身の作品の中に取り込んでいきます。地形模型を介して描写される世界は、現実と非現実の境にあるような不思議な感覚を呼び起こします。
また、植竹は都市風景のスケッチを晩年まで継続しています。高度経済成長下で増殖していく巨大構造物を取り込んで、植竹絵画はますますダイナミックに展開していきます。
特集展示 1960 前後の「前衛」
植竹は1950年代から前衛美術会周辺の画家たちと接点を持ち、社会性の強い題材と私的なイメージの距離感を模索していた彼らの作品から多くを吸収します。
中村宏、池田龍雄、尾藤豊、桂川寛の4作家の特集展示により、当時の社会と「前衛」の状況を窺います。
奇妙なモチーフが増殖し、入り乱れながら交錯する、植竹邦良(1928-2013)の絵画。
その底流には、戦後ニッポンの政治、社会、都市開発といった世相が密かに編み込まれており、モチーフへの執着を感じる徹底した細密描写は、現代のコンピュータグラフィックを見慣れた目に異様な迫力をもって迫ります。
府中で制作を続けた知られざる画家の全貌を初紹介します。
ようこそ、植竹ワールドへ。
展示構成
1 焼跡からはじまる
植竹邦良は1928年、昭和初期の東京・品川に生まれ、赤羽に育ちます。1945年東京工専印刷(現・千葉大学)に入学するも、学徒動員や空襲に脅かされる日々に青年期を送りました。戦後は工場実習として米軍管理下の印刷工場で働きつつ、東京工専の教師だった画家・赤穴宏の手引で絵を学び始め、猪熊弦一郎主宰の田園調布純粋美術研究所に通いました。
1950年代初頭は、米ソ冷戦の顕在化や朝鮮戦争開戦といった事態をうけ、反戦平和運動や様々な社会運動が熱を帯びていた時代です。若い画家たちも、切迫した危機感をもって、何を描くべきか、どのように芸術が社会と関わるべきか、熱い議論を交わしていました。若き日の植竹もこれらの運動に接近し「ニッポン展」などに出品を重ねます。残念ながらこの時期の作品はほとんど残されていませんが、スケッチなどに、焼跡から画家を目指し出発した画家の歩みを見ることができます。
2 闘争から深める幻想
1960年代以降に植竹が展開するのは、様々なモチーフが入り乱れ、反復しながらつながっていく夢想的空間の構成です。それらは政治や社会問題から切り離されたものではなく、戦時下の記憶や、安保闘争・学園紛争といった社会の状況が複雑に編み込まれています。世相を象徴するモチーフと、自身の私的な記憶や執着を混在させ、絵画のなかに無限につづく夢想空間を展開していきます。
3 地形と都市のダイナミズム
植竹の作品は、現実ではありえない空想の空間を描きつつ、そのなかに奇妙な実在感を備えています。その構成要素の一つに、現実の地形や建築、都市の細部にわたる描写があります。
幼い頃から地層や地形に興味を持っていた植竹。1970年代後半以降、角度や光を変えて地形模型を写真におさめ、それを自身の作品の中に取り込んでいきます。地形模型を介して描写される世界は、現実と非現実の境にあるような不思議な感覚を呼び起こします。
また、植竹は都市風景のスケッチを晩年まで継続しています。高度経済成長下で増殖していく巨大構造物を取り込んで、植竹絵画はますますダイナミックに展開していきます。
特集展示 1960 前後の「前衛」
植竹は1950年代から前衛美術会周辺の画家たちと接点を持ち、社会性の強い題材と私的なイメージの距離感を模索していた彼らの作品から多くを吸収します。
中村宏、池田龍雄、尾藤豊、桂川寛の4作家の特集展示により、当時の社会と「前衛」の状況を窺います。
作家・出演者 | 植竹邦良, 中村宏, 池田龍雄, 尾藤豊, 桂川寛 |
会場 | 府中市美術館 (Fuchu Art Museum) |
住所 | 183-0001 東京都府中市浅間町1-3 都立府中の森公園内 |
アクセス | 東府中駅(京王線)北口 徒歩17分 |
会期 | 2023/05/20(土) - 07/09(日) |
時間 | 10:00-17:00 ※展示室への入場は16:30まで |
休み | 月曜日 |
観覧料 | 一般 700円 高校・大学生 350円 小・中学生 150円 ※お支払いは現金のみとなります。 ※未就学児および障害者手帳等をお持ちの方は無料。 ※府中市内の小中学生は「府中っ子学びのパスポート」提示で無料。 ※「発掘・植竹邦良 ニッポンの戦後を映す夢想空間」展観覧料金で常設展もご覧いただけます。 |
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