偶然手元にあるもの、自分で選んで手元にあるもの、旅行先や日常の中で出会ったものや、それを取り巻く事柄など、様々な「もの」や「こと」を、糸や布と合わせることで作品へと昇華させる海老塚季史。彼女の繊細な織の技術と鋭い感性が合わさり、何気ないものが各々の物語を再編集して表現されています。何も無いところから作家が自ら生み出していくのではなく、既製品や昔から身の回りにあるものと手を取り合うことで、自身の力だけでは作れないものを生み出したいと彼女は考えます。
昨年から生活に変化があり、より自身の制作と向き合うことが多くなったという海老塚は、ライフワークとしての作品制作についても考えるようになりました。その中で彼女が特に意識したのは時間です。時間とは、誰にでも平等に与えられているはずですが、それをどう使うか、どう感じるかは人それぞれ異なります。本展「日々について」では、一年の長さを織で一本のリボンにした作品や、DYMOテープライターで日付と時間を記録した作品など、時をモチーフに表現された作品群、そして海老塚の制作の重要な要素の一つである旅行で出会ったものを取り入れた新作群を発表いたします。
「時というものは見えている気もするが見えてはいない気もする。
生活の中に当たり前のように存在しているが、不思議なものだ。
時間は進んでゆき一日が終わる。
過去のことを思い出し明日のことを考えながら日々を生きる。」― 海老塚季史
日頃から物事を様々な角度で観察し、そこから得られる発見を軸に制作される海老塚の表現方法は独創的で、一見何処に手を入れたのか分からないものから、元の既製品としての形を留めないものまで様々ですが、どれも丁寧に手が加えられ、洗練された雰囲気が醸し出されています。実際には途方もないような細かい作業と多くの時間をかけて制作されたとしても、それを感じさせない作品を成立させることが出来るのは、彼女だからこそ成し得る技だと言っても過言ではありません。
これまで海老塚は、身の回りにあるものと、それが辿った背景との出会いに魅せられ、普段の生活の中では見えてこなかったような発見を楽しむように作品を制作してまいりました。ここ数年は、ものに纏わる人の存在が垣間見えるような作品も多く制作するようになったように見受けられます。そこには、あえて自身の意思を作品に含めようとはせず、観る者へ委ねるようにして作品を制作している海老塚の、時の経過と共に生じる意識の変化のようなものがあるようにも受け取れます。
これを機に、海老塚季史の新作展を是非ご高覧ください。
作家・出演者 | 海老塚季史 |
会場 | s+arts (スプラスアーツ) |
住所 | 106-0032 東京都港区六本木7-6-5 六本木栄ビル 3F |
アクセス | 六本木駅(東京メトロ日比谷線)2番口 徒歩8分 六本木駅(都営大江戸線)7番口 徒歩9分 乃木坂駅(東京メトロ千代田線, 小田急小田原線)6番口 徒歩9分 |
会期 | 2025/02/28(金) - 03/15(土) |
時間 | 12:00-19:00(最終日17:00まで) |
休み | 日曜日、月曜日、火曜日 |
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