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日本の版画1200年―受けとめ、交わり、生まれ出る

町田市立国際版画美術館

2025/03/20(木) - 06/15(日)

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※5月8日(木)から後期展示

版画が織り成した文化交流の物語とは―

「日本らしさ」とは、何を指すのでしょうか。
たとえば日本が世界に誇る浮世絵は、実は中国や西洋の表現手法を取り入れつつ百花繚乱の世界を開かせました。歴史を紐解くと、「日本らしさ」の奥には多様な文化的背景をもつ作品や人との交わりを見つけることができるでしょう。
本展では、日本現存最古の印刷物である無垢浄光大陀羅尼経(むくじょうこうだいだらにきょう)から、仏教版画、絵手本や画譜、浮世絵、創作版画、新版画、戦後版画、現代版画へと連なる約240点を当館収蔵品から厳選して紹介。特に他の東アジアの国々とのつながりにも注目し、文化交流の視点で日本の版画1200年の歴史を辿ります。
私たちが「伝統」、そして「芸術」として考える版画はどのように生まれ、どこへ向かうのか。この春、「日本の版画」1200年の旅に出かけませんか。


展示構成
1 | 版と祈り―日本版画のあけぼの
奈良時代の天平宝字8年(764)、称徳天皇は諸寺に《百万塔》を安置します。その内部に納められたのが、現存日本最古の印刷物とされる《無垢浄光大陀羅尼経》です。平安時代になると、日本では木版画の制作が活発になり、主として仏像内部に納められるために印仏や摺仏が制作されました。南北朝時代に至ると、仏教版画は大型化し、版で摺られた上に手彩色で荘厳され、礼拝の対象として堂宇に祀られるようになります。

2 | 出版文化の隆盛―拡散するイメージとその受容
16世紀から、イエズス会士はキリスト教布教のために中国へ渡り、西洋の文物を伝えます。《康熙帝御製耕織図》では西洋画から学んだ透視図法が用いられる一方、《蘇州景 新造萬年橋》には西洋画を消化した独自の遠近表現が見られます。同じ頃、に大陸では画譜出版文化が隆盛を迎えていました。日本では舶来の画譜を基にした独自の版本が次々に制作されました。本章では狩野派や南蘋派の画譜も紹介します。

3 | 変わり続ける浮世絵―舶来文化の吸収と再創造
舶来文化の影響を受け、日本の版画は浮世絵の世界で千変万化の様相を呈します。19世紀、葛飾北斎や歌川広重は浮絵の手法を発展させ、浮世絵風景画という新ジャンルを確立しますが、その淵源には蘇州版画や西洋画があるといわれています。さらに明治期の小林清親による「光線画」は、西洋画をヒントに夕日や灯火といった繊細な光の微妙なうつろいを描き、変わりゆく新都会東京に生きる人々を郷愁へと誘いました。

4 | 創作版画と新版画―両洋の眼・浮世絵の超克
明治30年代、「自画・自刻・自摺」を理想としてかかげた「創作版画」が登場します。本章で取り上げる戸張孤雁や織田一磨などは、創作版画家の中でも特に浮世絵の伝統を重んじて制作をおこないました。この一方、大正期初めに浮世絵版画の出版体制を継承する「新版画」が渡邊庄三郎によって創始されます。両者は西洋美術に刺激を受け、浮世絵版画を超克する近代日本版画となるのでした。

5 | 版画誌がつなぐネットワーク―日本と中国の「創作版画」
創作版画運動が盛り上がると、1920年代から日本各地で版画家のグループが結成され、版画誌が隆盛します。日本留学中にこの動きを知った魯迅は、中国の創作版画ともいえる「新興版画」を提唱しました。版画家・編集者の料治熊太が主宰した創作版画誌『白と黒』や『版藝術』には、中国・広州の若者が1934年に結成した「現代創作版画研究会(現代版画会)」に作品を寄せ、日中版画交流の舞台になりました。しかし1937年に日中が本格的な戦争状態に突入すると、中国の作家は抗日や政治的主題を描く木刻運動に身を投じ、両国の版画交流は途絶えざるをえませんでした。

6| 占領下における新しい版画の胎動―中央と地方、モダニズムとリアリズムの往還
1945年の敗戦後、海外との交流をきっかけに新しい美術を生み出す動きが胎動し始めます。本章では恩地孝四郎を慕う版画家が集った「一木会」と、山形県南村山郡山元村にあった山元中学校(通称「山びこ学校」)に注目します。前者はアメリカ進駐軍関係者との交流を経て「実物版」の抽象作品を育み、後者は中国木刻が紹介されたことをきっかけに、生活綴り方を版画に応用させました。2つの動きは戦後の教育版画運動のなかで合流し、1960年代から小中学校教育で版画が取り入れられることにつながっていきます。

7 | 「国際版画展」の季節―「版画の国」を広め育てる
戦後、冷戦期は各国が文化政策の一環として国際展を開催し、日本も国際文化交流に力をいれました。なかでも棟方志功が1956年ヴェネツィアビエンナーレで受賞したことは、「版画の国」としての日本の存在を内外に示しました。さらに欧米を中心に各国で国際版画展が創設されると、1957年には東京国際版画ビエンナーレが始まりました。国際的に活躍する土台が整ったことで、日本の版画家は冷戦下の政治体制をこえ様々な国で受賞を重ねました。1970年代から美術大学に版画コースが設立されると、国際版画展受賞者が教鞭を執っていきます。小学校から大学まで幅広い場で版画を学ぶ環境が整ったことが、日本が版画大国となる礎を築きました。

出典

作家・出演者葛飾北斎, 歌川広重, 小早川清, 川瀬巴水, 恩地孝四郎, 棟方志功, 靉嘔
会場町田市立国際版画美術館まちだしりつ こくさい はんが びじゅつかん (Machida City Museum of Graphic Arts)
住所
194-0013
東京都町田市原町田4-28-1
アクセス
町田駅(JR横浜線)ターミナル口 徒歩12分
町田駅(小田急線)東口 徒歩15分
町田駅(JR横浜線)北口 徒歩15分
会期2025/03/20(木) - 06/15(日)
時間平日
10:00-17:00
※入場は16:30まで

土曜日・日曜日・祝日
10:00-17:30
※入場は17:00まで
休み月曜日
※ただし、5月5日(月・祝)、6日(火・振替休日)は開館し、7日(水)は休館。
観覧料一般 800円
大・高生 400円
中学生以下 無料
※身体障がい者手帳、愛の手帳(療育手帳)または精神障がい者保健福祉手帳をご提示の方と付き添いの方1名は半額
※3/20(展覧会初日)と、4/19(開館記念日)は入場無料
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