【イントロダクション】
個展で出会った美しい青年に惹かれた画家は、神楽坂の自宅兼アトリエに彼をモデルとして招き入れた。昔描いた作品《オダリスク》シリーズに、もう一度着手するために――。
初老の画家「わたし」が、美しく若いイケメンモデルの「彼」を、神楽坂のアトリエで《オダリスク》をテーマに描く。画家が「夫」以外のイケメンモデルに求めるもの、美か、若さか、肉体か、それとも・・・愛か?
【展覧会概要】イケメン描いて20年の女性日本画作家による神楽坂初の個展
・神楽坂、矢来町の静かな住宅街にあるギャラリー、eitoeiko(エイトエイコ)を画家のアトリエに見立て、木村了子が「女性画家とイケメンモデル」の関係を、官能的に描きます。
・同時に、NHKドラマ10『燕は戻ってこない』、オランダにて向井山朋子が上演した浄瑠璃パフォーマンス『SADO』に使用された肉筆春画を展示いたします。
【作家略歴】木村了子(きむら・りょうこ)
1971 京都生まれ。1997 東京藝術大学大学院修士課程壁画専攻修了。美男におわす 埼玉県立近代美術館、島根県立石見美術館 2021、フェミニズムス/FEMINISMS 金沢21世紀美術館 2021、日本画のゆくえ 栃木県立美術館 2022、URBAN GAZE メキシコシティ 2024、第9回日経日本画大賞展 上野の森美術館 2024ほか展示多数。
【作家より丁寧なご注意】
eitoeikoはディレクター癸生川氏が運営する自宅兼ギャラリーで、未成年のご子息がおられます。官能的なご感想は胸に秘め、控えめな会話のご協力をお願いいたします。
【ものがたり】
203X年、神楽坂は矢来町の住宅街にあるこの家は、少し前まではわたしの自宅兼ギャラリーとして運営していた。数年前、息子が独立し家を出て行ったのをきっかけに、共同事業者でディレクターである夫は、年に半分以上を海外のアートフェアに出向いている。メキシコ、フィリピン、ロス・・・世界各国へ、トランクにパンパンにアーティストの作品を詰めるだけ詰めて、世界中で売り捌いてくる。フェアによっては不発に終わることも少なくないのだが、何しろ夫が扱うアートは珍奇作品ばかりだ。いつまでも景気低迷する日本で作品を販売するよりも、世界のフェアに出た方が「I'm a BIG collector」と自ら名乗る物好きな大金持ちに出会い、とんでもない額の作品をすいっと買っていく機会もあるのだ。
夫が留守中のギャラリーは、しばらくはわたしが絵を描きながら運営し接客もしていたのだが、来客のたびに絵を中断せねばならないのが年々煩わしくなってきた。ギャラリー時代も、空き時期には時折作業場としても使用していたが、今はすっかり絵筆や作品が侵食し、古い付き合いのあるアーティストの個展以外はすっかりわたしのアトリエになってしまった。いまは絵をある程度描き溜めたらオープンアトリエと称して、年1度ぐらいの頻度で公開したりしている。
元々ここは、わたしの祖父で画家の「中村猛男」が画業で購入した土地と家を引き継いだものだ。狭いスペースに巨大なイーゼルが印象的だった祖父のアトリエは、今も記憶に残っている。近くには鏑木清方のアトリエがあったり、能楽堂や出版社も近い。そして神楽坂といえば伝統ある花柳街だ。今も昔も、画家が住むには良い街だろう。今の家は建て替えたものだが、ここを私がアトリエとして使うことを、祖父も喜んでくれているのではないか・・・と勝手に思っている。
「彼」とわたしが出会ったのも、夫が留守中の、私の個展の最中だった。
とんでもないイケメンがギャラリーに入ってきて、わたしの絵を見ている。彼を見て、心が久しぶりに沸き立ち、ざわついた。
還暦を過ぎて年甲斐もないと思うかもしれないが、こればかりは年齢は全く関係ないものなのだ・・と、私自身年齢を重ねるまで知らなかった。その時彼が身に纏っていた服装や髪型は、昔描いた「おうじさまのくに」という作品の登場人物に酷似していた。わたしの絵に囲まれた彼は、まるで自作から抜け出てて命を持ったように見えた。彼を逃してはならない・・・わたしが作者だと自己紹介し、キモく思われない程度の熱量で、ベテランの画家らしく、なるべく上品に彼にモデルになってほしいと伝えた。
そして、ついに「彼」を、このアトリエに招き入れ、モデルとして描くことになるのだった――。
つづく
※この設定はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません
個展で出会った美しい青年に惹かれた画家は、神楽坂の自宅兼アトリエに彼をモデルとして招き入れた。昔描いた作品《オダリスク》シリーズに、もう一度着手するために――。
初老の画家「わたし」が、美しく若いイケメンモデルの「彼」を、神楽坂のアトリエで《オダリスク》をテーマに描く。画家が「夫」以外のイケメンモデルに求めるもの、美か、若さか、肉体か、それとも・・・愛か?
【展覧会概要】イケメン描いて20年の女性日本画作家による神楽坂初の個展
・神楽坂、矢来町の静かな住宅街にあるギャラリー、eitoeiko(エイトエイコ)を画家のアトリエに見立て、木村了子が「女性画家とイケメンモデル」の関係を、官能的に描きます。
・同時に、NHKドラマ10『燕は戻ってこない』、オランダにて向井山朋子が上演した浄瑠璃パフォーマンス『SADO』に使用された肉筆春画を展示いたします。
【作家略歴】木村了子(きむら・りょうこ)
1971 京都生まれ。1997 東京藝術大学大学院修士課程壁画専攻修了。美男におわす 埼玉県立近代美術館、島根県立石見美術館 2021、フェミニズムス/FEMINISMS 金沢21世紀美術館 2021、日本画のゆくえ 栃木県立美術館 2022、URBAN GAZE メキシコシティ 2024、第9回日経日本画大賞展 上野の森美術館 2024ほか展示多数。
【作家より丁寧なご注意】
eitoeikoはディレクター癸生川氏が運営する自宅兼ギャラリーで、未成年のご子息がおられます。官能的なご感想は胸に秘め、控えめな会話のご協力をお願いいたします。
【ものがたり】
203X年、神楽坂は矢来町の住宅街にあるこの家は、少し前まではわたしの自宅兼ギャラリーとして運営していた。数年前、息子が独立し家を出て行ったのをきっかけに、共同事業者でディレクターである夫は、年に半分以上を海外のアートフェアに出向いている。メキシコ、フィリピン、ロス・・・世界各国へ、トランクにパンパンにアーティストの作品を詰めるだけ詰めて、世界中で売り捌いてくる。フェアによっては不発に終わることも少なくないのだが、何しろ夫が扱うアートは珍奇作品ばかりだ。いつまでも景気低迷する日本で作品を販売するよりも、世界のフェアに出た方が「I'm a BIG collector」と自ら名乗る物好きな大金持ちに出会い、とんでもない額の作品をすいっと買っていく機会もあるのだ。
夫が留守中のギャラリーは、しばらくはわたしが絵を描きながら運営し接客もしていたのだが、来客のたびに絵を中断せねばならないのが年々煩わしくなってきた。ギャラリー時代も、空き時期には時折作業場としても使用していたが、今はすっかり絵筆や作品が侵食し、古い付き合いのあるアーティストの個展以外はすっかりわたしのアトリエになってしまった。いまは絵をある程度描き溜めたらオープンアトリエと称して、年1度ぐらいの頻度で公開したりしている。
元々ここは、わたしの祖父で画家の「中村猛男」が画業で購入した土地と家を引き継いだものだ。狭いスペースに巨大なイーゼルが印象的だった祖父のアトリエは、今も記憶に残っている。近くには鏑木清方のアトリエがあったり、能楽堂や出版社も近い。そして神楽坂といえば伝統ある花柳街だ。今も昔も、画家が住むには良い街だろう。今の家は建て替えたものだが、ここを私がアトリエとして使うことを、祖父も喜んでくれているのではないか・・・と勝手に思っている。
「彼」とわたしが出会ったのも、夫が留守中の、私の個展の最中だった。
とんでもないイケメンがギャラリーに入ってきて、わたしの絵を見ている。彼を見て、心が久しぶりに沸き立ち、ざわついた。
還暦を過ぎて年甲斐もないと思うかもしれないが、こればかりは年齢は全く関係ないものなのだ・・と、私自身年齢を重ねるまで知らなかった。その時彼が身に纏っていた服装や髪型は、昔描いた「おうじさまのくに」という作品の登場人物に酷似していた。わたしの絵に囲まれた彼は、まるで自作から抜け出てて命を持ったように見えた。彼を逃してはならない・・・わたしが作者だと自己紹介し、キモく思われない程度の熱量で、ベテランの画家らしく、なるべく上品に彼にモデルになってほしいと伝えた。
そして、ついに「彼」を、このアトリエに招き入れ、モデルとして描くことになるのだった――。
つづく
※この設定はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません
作家・出演者 | 木村了子 |
会場 | eitoeiko |
住所 | 162-0805 東京都新宿区矢来町32-2 |
アクセス | 神楽坂駅(東京メトロ東西線) 徒歩5分 牛込神楽坂駅(都営地下鉄大江戸線) 徒歩10分 江戸川橋駅(東京メトロ有楽町線) 徒歩12分 |
会期 | 2024/12/07(土) - 2025/01/18(土) |
時間 | 12:00-19:00 |
休み | 日曜日、月曜日、12/29-1/6 |
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