黙々と、目醒め(てい)るものたち:イ・ヒョヌと彫刻、そして立体
イ・ヒョヌの新作個展がDIESEL ART GALLERYにて開催
DIESEL ART GALLERY (ディーゼル アート ギャラリー) では、2024年8月23日(金)から10月23日(水)まで、アーティストHyunwoo Lee (イ・ヒョヌ) による個展「ACARDIUS」(アカルディウス) を日本橋馬喰町のギャラリー・CON_のキュレーションにより開催します。
本展覧会では新作の展示・販売をはじめ展覧会のために作られた限定グッズや、DIESELとコラボレーションによるTシャツも販売します。
ステートメント
黙々と、目醒め (てい) るものたち:イ・ヒョヌと彫刻、そして立体
「夢中に」という言い回しがある。漢字どおりに読むと、夢の中にいるような状態のことだ。このニュアンスに近い表現として、韓国語では「무심코 (ムシンコ)」という言い回しが使われる。「무심 (ムシン)」は、「無心」という漢字で、なにかに心が奪われている様子を表現している。心ここにあらず、つまり別の場所に気が向いてしまう。かといって、心が奪われた状態ほど、自分の赴くまま、自分の気持ちに裏表なく接することもない。夢見心地で心を奪われた、没入した状態は、外見上なんの動きも見て取れない。しかし、そこには気力が滞留し、活性化されている。本展で想定する舞台もまさにそうだ。会場には、手術を待つオブジェが並んでいる。これらは「無心体」と呼ばれ、手術の神によって心を与えられる存在である。彼らは麻酔をかけられたせいか、眠りについてじっとしている。表面の肌に大きな傷を残し、静かにそこにいる。目覚めもせず、また起き上がることもせずに、だ。でもそれは、精神の目醒めた、目を真面目に開いた状態とも言えるのではないか。なにかに没入している状態――心ここにあらず、しかしなにかに集中している状態が、立体的に・立体制作として、そこに立ち現れる。
無身体は、どう心が奪われているのか。そして、どのような意味で「立(っている)体」なのだろうか。無心体は、横たわったままで、さらには身体の部位までもはっきりとし(てい)ない存在だ。これまでもブロンズを扱ってきたイ・ヒョヌが、会場を支配するようなインスタレーションや人体ではなく、ほかの生命体の肌やテクスチャー(質感)に目を向ける理由――それは、心ここにあらずで夢心地の状態を、彫刻のあり方として表現しているからだ。部分的で、横たわった立体は、形態としての輪郭(シルエット)ではなく、物性として立たされる=成り立つ。展示で手術とは、悪い箇所を直す行為以上の意味合いがある。無心体の肌に残された痕は、治療が必要なところや治療した痕跡以上のものである。彫って刻む「彫刻」行為と、身体として立つ「立体」に思考を巡らせた結果、イ・ヒョヌは物性に変形可能性と存在感を浮き彫りにする。無心体は、眠っている。夢に経験が無意識的に刻まれ、新たな世界を切り拓いて行くかのように、イ・ヒョヌは寡黙な対象を黙々と作る。蛹と貝殻の中に世界が「目覚める」と述べたバシュラール (「夢の空間」、『夢みる権利』より)のように、イ・ヒョヌの作品は、その中で/そこに置かれたものの状態で、目覚めることを願っているのだろう。
テキスト: 紺野優希
Hyunwoo Lee(イ・ヒョヌ)
https://www.instagram.com/pip_archive_
オブジェクトの社会的文脈、機能、意味について問いかけます。これらの要素が彫刻に集約されるとき、その結果として生まれるイメージの文脈を探り、その価値を再定義します。
1994年 韓国・ソウル生まれ
2021年 韓国・中央大学校 彫刻コース 卒業
主な展示歴
個展
2023年
・「Parenthesis」 - Gギャラリー (ソウル・韓国)
2021年
・「oWo」 - Alterside (ソウル・韓国)
グループ展
2024年
・「The Weird And The Eerie」 - The Pageギャラリー (ソウル・韓国)
・「BOLMETEUS」 - SAI (東京・日本)
2023年
・「Humanism Reimagined: Embracing change」 - WWNN (ソウル・韓国)
・「SPECIAL ORDER FOR THE BIRTHDAY GIRL」 - Afterhours (パリ・フランス)
・「Framer」 - Shower (ソウル・韓国)
・「Provoke High beam」 - CON_ (東京・日本)
・「Man-Made-Nature: 인공의 자연」 - IIR (ソウル・韓国)
2022年
・「Axis」 - 021ギャラリー (大邱・韓国)
・「This title is not available in your region」 - Gaasp (ニューヨーク・アメリカ合衆国)
・「Merong City」 - Of (ソウル・韓国)
・「Hinterland」 - 413-Pack (オンライン)
2021年
・「Organic Cyborg」 - Outsite (韓国)
・「Critical Zones」 - Uartspace (ソウル・韓国)
・「Stuck」- Lad (ソウル・韓国)
・「Psycho Village」- (ソウル・韓国)
イ・ヒョヌの新作個展がDIESEL ART GALLERYにて開催
DIESEL ART GALLERY (ディーゼル アート ギャラリー) では、2024年8月23日(金)から10月23日(水)まで、アーティストHyunwoo Lee (イ・ヒョヌ) による個展「ACARDIUS」(アカルディウス) を日本橋馬喰町のギャラリー・CON_のキュレーションにより開催します。
本展覧会では新作の展示・販売をはじめ展覧会のために作られた限定グッズや、DIESELとコラボレーションによるTシャツも販売します。
ステートメント
黙々と、目醒め (てい) るものたち:イ・ヒョヌと彫刻、そして立体
「夢中に」という言い回しがある。漢字どおりに読むと、夢の中にいるような状態のことだ。このニュアンスに近い表現として、韓国語では「무심코 (ムシンコ)」という言い回しが使われる。「무심 (ムシン)」は、「無心」という漢字で、なにかに心が奪われている様子を表現している。心ここにあらず、つまり別の場所に気が向いてしまう。かといって、心が奪われた状態ほど、自分の赴くまま、自分の気持ちに裏表なく接することもない。夢見心地で心を奪われた、没入した状態は、外見上なんの動きも見て取れない。しかし、そこには気力が滞留し、活性化されている。本展で想定する舞台もまさにそうだ。会場には、手術を待つオブジェが並んでいる。これらは「無心体」と呼ばれ、手術の神によって心を与えられる存在である。彼らは麻酔をかけられたせいか、眠りについてじっとしている。表面の肌に大きな傷を残し、静かにそこにいる。目覚めもせず、また起き上がることもせずに、だ。でもそれは、精神の目醒めた、目を真面目に開いた状態とも言えるのではないか。なにかに没入している状態――心ここにあらず、しかしなにかに集中している状態が、立体的に・立体制作として、そこに立ち現れる。
無身体は、どう心が奪われているのか。そして、どのような意味で「立(っている)体」なのだろうか。無心体は、横たわったままで、さらには身体の部位までもはっきりとし(てい)ない存在だ。これまでもブロンズを扱ってきたイ・ヒョヌが、会場を支配するようなインスタレーションや人体ではなく、ほかの生命体の肌やテクスチャー(質感)に目を向ける理由――それは、心ここにあらずで夢心地の状態を、彫刻のあり方として表現しているからだ。部分的で、横たわった立体は、形態としての輪郭(シルエット)ではなく、物性として立たされる=成り立つ。展示で手術とは、悪い箇所を直す行為以上の意味合いがある。無心体の肌に残された痕は、治療が必要なところや治療した痕跡以上のものである。彫って刻む「彫刻」行為と、身体として立つ「立体」に思考を巡らせた結果、イ・ヒョヌは物性に変形可能性と存在感を浮き彫りにする。無心体は、眠っている。夢に経験が無意識的に刻まれ、新たな世界を切り拓いて行くかのように、イ・ヒョヌは寡黙な対象を黙々と作る。蛹と貝殻の中に世界が「目覚める」と述べたバシュラール (「夢の空間」、『夢みる権利』より)のように、イ・ヒョヌの作品は、その中で/そこに置かれたものの状態で、目覚めることを願っているのだろう。
テキスト: 紺野優希
Hyunwoo Lee(イ・ヒョヌ)
https://www.instagram.com/pip_archive_
オブジェクトの社会的文脈、機能、意味について問いかけます。これらの要素が彫刻に集約されるとき、その結果として生まれるイメージの文脈を探り、その価値を再定義します。
1994年 韓国・ソウル生まれ
2021年 韓国・中央大学校 彫刻コース 卒業
主な展示歴
個展
2023年
・「Parenthesis」 - Gギャラリー (ソウル・韓国)
2021年
・「oWo」 - Alterside (ソウル・韓国)
グループ展
2024年
・「The Weird And The Eerie」 - The Pageギャラリー (ソウル・韓国)
・「BOLMETEUS」 - SAI (東京・日本)
2023年
・「Humanism Reimagined: Embracing change」 - WWNN (ソウル・韓国)
・「SPECIAL ORDER FOR THE BIRTHDAY GIRL」 - Afterhours (パリ・フランス)
・「Framer」 - Shower (ソウル・韓国)
・「Provoke High beam」 - CON_ (東京・日本)
・「Man-Made-Nature: 인공의 자연」 - IIR (ソウル・韓国)
2022年
・「Axis」 - 021ギャラリー (大邱・韓国)
・「This title is not available in your region」 - Gaasp (ニューヨーク・アメリカ合衆国)
・「Merong City」 - Of (ソウル・韓国)
・「Hinterland」 - 413-Pack (オンライン)
2021年
・「Organic Cyborg」 - Outsite (韓国)
・「Critical Zones」 - Uartspace (ソウル・韓国)
・「Stuck」- Lad (ソウル・韓国)
・「Psycho Village」- (ソウル・韓国)
作家・出演者 | Hyunwoo Lee |
会場 | DIESEL ART GALLERY |
住所 | 150-0002 東京都渋谷区渋谷1-23-16 cocoti B1F |
アクセス | 渋谷駅(東京メトロ)B1出口 徒歩1分 渋谷駅(JR各線, 東急各線, 京王線) 徒歩4分 |
会期 | 2024/08/23(金) - 10/23(水) |
時間 | 11:30-20:00 |
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