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森 万里子「古事記」

SCAI THE BATHHOUSE

2024/06/08(土) - 07/27(土)

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考古学から最新の物理学、あるいは仏教の唯識論まで、幅広いリサーチを通じて私たちを取り巻く見えない世界に形を与えて来た森万里子。90年代半ばより活動を開始し国際的なアートシーンで注目を集めた森は、現代美術家としての実践をより精神的な領域へと移行し、我々の生が到達しうる新たな次元の可能性へとその関心を注いでいます。本展「古事記」では、神代の創世神話から着想を得た作品群によるインスタレーション、および本年度ベニスにて公開される新プロジェクトに関する展示が発表されます。

メインフロアには形もサイズも様々な敷石に取り囲まれたアクリルの立体作品が置かれます。日本各地の磐座(いわくら)(神をおろす依り代としての岩)を巡るフィールドリサーチに基づき制作された本作《Kojiki Installation》(2019-2024年)は、4年前の個展から続く森の思索を体現しています。またインスタレーション構成は、沖ノ島に今も残る古墳時代の祭祀跡に着想されました。鑑賞者はホロレンズと呼ばれる装置を用いて、さらなる視覚体験に没入します。登場するのは森自身。「三種の神器」(鏡、剣、勾玉)の象徴とともに、磐座の前で祀りごとをするホログラフィックな巫女となった森の姿は、様々なキャラクターに扮し、自身をメディアとみなしたキャリアの初期にも重なります。

大きな円盤状のフォト・ペインティング《Genesis X》(2023年)に描写されているのは、本展のメインテーマである天地開闢の神話にインスピレーションを得た形而上学的イメージです。三つの連なる円は、別天神(ことあまつかみ) (古事記の冒頭で、現れてすぐにいなくなる創世の神々)と結びついた見えない世界、現実世界、そして森がイメージする心を中心とした新しい別の世界を意味しています。三次元CGを施された画面は淡く輝き、中央の立体と呼応しながら、色彩とフォルムのプリズムを空間に形成しています。イザナミ、イザナギの国生み神話に着想した、高さ180cmの光のモニュメント《Onogoro Stone》(2024年)は、見る角度によって様々に変化する色彩のスペクトルを生み、光と空間を操るミニマリストとしての作家の側面を強調しています。

上がり框に見えるのは、人間の「霊性」を象徴する立体作品のイメージ画を中心に、それにまつわる考察、および彼女の内なる光の体験を左右にかな書で綴った巻物です。《Peace Crystal》(2016-2024年)と名付けられた立体は、森のデザインによる特別な構造物の中に設置され、ベニスにて初公開されます(Palazzo Corner della Ca’ Grande / 2024年、6-10月)。高さ約167.5cmという現代人の平均身長を模った本作は、直立歩行の姿勢が人に知性と霊性をもたらしたという森の見解に基づいて制作され、人類発祥の地とされるアフリカ大陸、エチオピアへ寄贈され、洞窟の中の恒久設置を最終的に目指しています。

ホロレンズで鑑賞者が目にする超越的な光のビジョンは、森の仏教哲学的追求が示唆する道の先でもあります。道元が『正法眼蔵』の「一顆明珠」や「光明」で説いた、“尽十方世界は、ひとつの光り輝けるものであり、生死去来、ことごとく自己の光明である。”という思想をマテリアルと形象との形而上学的実践を通じて森は虚空の視覚化に取り組みます。彼女の深淵な霊性の探求から未来の祭祀遺跡を思わせるような空間がここに立ち広がります。

参考文献 : 『 正法眼蔵(一)、(四)』 講談社学術文庫 全訳注 増谷文雄

出典

作家・出演者森万里子
会場SCAI THE BATHHOUSEすかい ざ ばすはうす (スカイザバスハウス)
住所
110-0001
東京都台東区谷中6-1-23 柏湯跡
アクセス日暮里駅(JR山手線, 常磐線, 京浜東北線, 京成本線)南口 徒歩11分
根津駅(東京メトロ千代田線)1番口 徒歩11分
会期2024/06/08(土) - 07/27(土)
時間12:00-18:00
休み日曜日、月曜日
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