s+arts (スプラスアーツ)より、平川菜々、牧田紗季、山田珠子、山口ひかり、湯浅万貴子によるグループ展「tsu zu ki」の開催をご案内 申し上げます。
平川菜々は、服飾学校やアパレル会社での服を制作する側の経験を元に、「服と人」を主なモチーフとして作品を制作しています。
昔から人をモチーフに絵を描く時は、必ず服を身に纏った人を描くという平川は、服飾に携わり造り手側になってから、幼少の頃には意識していなかった“当たり前”に気がつきました。「当たり前に描くのは人が当たり前に着ているからであり、その当たり前を造っている人もいる。そんな当たり前を意識することで少しあたたかい気持ちになれる。服を造る側から描く側になった今、温度感を視覚的に伝える絵画のモチーフの一部として服を取り入れ描く。」アクリル絵の具や油絵の具、時にはコラージュ等も用いながら大胆にキャンバス に描かれる平川の作品は、独自の視点で情景が切り取られ、観る者にほんの少しの「?」と「笑顔」を与えてくれるようです。
牧田紗季は、現実の世界で生活することによって生じた、心の澱(よどみ)を絵画に昇華させたいという想いから、重力から解放された 夢の中のような浮遊感のある情景を、日本画の技法を用いて描きます。過去の記憶、夢の世界といった「ここではないどこか」を切望 する気持ちは、ある種の現実逃避願望の現れになっているとも言えるでしょう。「身体は現実の世界から離れることはできません。過去と未来、夢と現実を行き来しながら、どうしても「いま」「ここ」に生きなければならないという葛藤は、きっと多くの人が感じたことがあるのではないでしょうか。」と牧田は語ります。夢のような世界への憧れを作品に織り交ぜながら、現実で生じた、不安や孤独感、悲しみや痛みなど、負の感情を形にするようにして、日本画の温かみのある色味と質感により、美しく、どこか希望を求めるようにも感じられる作品を制作しています。
山田珠子は、制作過程で染色した布を土に埋め、微生物によって分解・腐食させた布を蝋型に貼り付け、壺や動物などの立体作品を制作している作家です。時間や生命などの果てない廻りの中で、事物が変化していく大らかな道のりを観察し、自然・時間・人が緩やかに繋がるような表現を心がけていると自身の制作について話します。彼女の大切にしている「曖昧で大らかな関係性」を心がけて作られた作品は、色、形、用途など、様々な面において緩い印象が特徴的ではありますが、一度土に埋められた布を蝋型で形成し、火にかけることで、時間軸やその中で起こったであろう様々な背景が上手く交じり合い、大変興味深い存在感を放っているように見受けられます。
山口ひかりは、主に銅板と七宝の偶然的な着色反応に着目して制作しています。薄い銅板をキャンバスとし、自然と表れる線や点のドローイングを七宝で描きます。銅板を酸化・還元させることによって得られる自然な色味と七宝による鮮やかな色彩に無限の可能性を感じているという山口は、ありふれた情報や数え切れないほどの人工建造物の中で生きる私達は、子供の頃、見るもの全てに感じた 驚きと感動、満ち溢れていた好奇心、あらゆるものへの直感力を失いつつあると考えます。「忘れてはいけないのは、初めて触った土の感触や匂い、木は大きくてあたたかいことなど、いつまでも純粋な心であること。」と語る山口。自身の感覚に素直に導かれ制作された彼女の作品は、銅と七宝という存在感のある素材を用いながらも、どことなく愛らしい印象を観る者に与えます。
湯浅万貴子は、アクリル絵の具と純銀箔や色箔を用いて構成された背景に、人間の身体や木の根などのモチーフをデフォルメした点描画で表現しています。彼女が描く身体的フォルムは、箔で無機質に作られた絵画空間と点の集合体で生み出されたモチーフが絶妙に交わることで、繊細な美しさが引き立てられています。また、近年では、モチーフの中で“ズレ“を生じさせ、点描に時間軸の交差を試 みることで動きが見られるような作品、コラージュ作品やポエム、他アーティストとの活動など、積極的に自身の表現の場を広げています。
今回は、何かの延長、その先に続くもの、という意味合いを込めて展示タイトルを「tsu zu ki」といたしました。制作技法やテーマも異なる5人の作家による作品が、観る者にとって何かに繋がることが出来れば幸いです。これを機に是非ご高覧ください。
平川菜々は、服飾学校やアパレル会社での服を制作する側の経験を元に、「服と人」を主なモチーフとして作品を制作しています。
昔から人をモチーフに絵を描く時は、必ず服を身に纏った人を描くという平川は、服飾に携わり造り手側になってから、幼少の頃には意識していなかった“当たり前”に気がつきました。「当たり前に描くのは人が当たり前に着ているからであり、その当たり前を造っている人もいる。そんな当たり前を意識することで少しあたたかい気持ちになれる。服を造る側から描く側になった今、温度感を視覚的に伝える絵画のモチーフの一部として服を取り入れ描く。」アクリル絵の具や油絵の具、時にはコラージュ等も用いながら大胆にキャンバス に描かれる平川の作品は、独自の視点で情景が切り取られ、観る者にほんの少しの「?」と「笑顔」を与えてくれるようです。
牧田紗季は、現実の世界で生活することによって生じた、心の澱(よどみ)を絵画に昇華させたいという想いから、重力から解放された 夢の中のような浮遊感のある情景を、日本画の技法を用いて描きます。過去の記憶、夢の世界といった「ここではないどこか」を切望 する気持ちは、ある種の現実逃避願望の現れになっているとも言えるでしょう。「身体は現実の世界から離れることはできません。過去と未来、夢と現実を行き来しながら、どうしても「いま」「ここ」に生きなければならないという葛藤は、きっと多くの人が感じたことがあるのではないでしょうか。」と牧田は語ります。夢のような世界への憧れを作品に織り交ぜながら、現実で生じた、不安や孤独感、悲しみや痛みなど、負の感情を形にするようにして、日本画の温かみのある色味と質感により、美しく、どこか希望を求めるようにも感じられる作品を制作しています。
山田珠子は、制作過程で染色した布を土に埋め、微生物によって分解・腐食させた布を蝋型に貼り付け、壺や動物などの立体作品を制作している作家です。時間や生命などの果てない廻りの中で、事物が変化していく大らかな道のりを観察し、自然・時間・人が緩やかに繋がるような表現を心がけていると自身の制作について話します。彼女の大切にしている「曖昧で大らかな関係性」を心がけて作られた作品は、色、形、用途など、様々な面において緩い印象が特徴的ではありますが、一度土に埋められた布を蝋型で形成し、火にかけることで、時間軸やその中で起こったであろう様々な背景が上手く交じり合い、大変興味深い存在感を放っているように見受けられます。
山口ひかりは、主に銅板と七宝の偶然的な着色反応に着目して制作しています。薄い銅板をキャンバスとし、自然と表れる線や点のドローイングを七宝で描きます。銅板を酸化・還元させることによって得られる自然な色味と七宝による鮮やかな色彩に無限の可能性を感じているという山口は、ありふれた情報や数え切れないほどの人工建造物の中で生きる私達は、子供の頃、見るもの全てに感じた 驚きと感動、満ち溢れていた好奇心、あらゆるものへの直感力を失いつつあると考えます。「忘れてはいけないのは、初めて触った土の感触や匂い、木は大きくてあたたかいことなど、いつまでも純粋な心であること。」と語る山口。自身の感覚に素直に導かれ制作された彼女の作品は、銅と七宝という存在感のある素材を用いながらも、どことなく愛らしい印象を観る者に与えます。
湯浅万貴子は、アクリル絵の具と純銀箔や色箔を用いて構成された背景に、人間の身体や木の根などのモチーフをデフォルメした点描画で表現しています。彼女が描く身体的フォルムは、箔で無機質に作られた絵画空間と点の集合体で生み出されたモチーフが絶妙に交わることで、繊細な美しさが引き立てられています。また、近年では、モチーフの中で“ズレ“を生じさせ、点描に時間軸の交差を試 みることで動きが見られるような作品、コラージュ作品やポエム、他アーティストとの活動など、積極的に自身の表現の場を広げています。
今回は、何かの延長、その先に続くもの、という意味合いを込めて展示タイトルを「tsu zu ki」といたしました。制作技法やテーマも異なる5人の作家による作品が、観る者にとって何かに繋がることが出来れば幸いです。これを機に是非ご高覧ください。
作家・出演者 | 平川菜々, 牧田紗季, 山田珠子, 山口ひかり, 湯浅万貴子 |
会場 | s+arts (スプラスアーツ) |
住所 | 106-0032 東京都港区六本木7-6-5 六本木栄ビル 3F |
アクセス | 六本木駅(東京メトロ日比谷線)2番口 徒歩8分 六本木駅(都営大江戸線)7番口 徒歩9分 乃木坂駅(東京メトロ千代田線, 小田急小田原線)6番口 徒歩9分 |
会期 | 2024/02/23(金) - 03/09(土) |
時間 | 12:00-19:00(最終日17:00まで) |
休み | 日曜日、月曜日、火曜日 |
SNS | |
ウェブサイト |