私たちが見ているものは…?
インターネットの普及により、私たちは日々膨大なイメージを目から取り込んでいます。展覧会を訪れる前に、誰かのSNSで作品を見たり、その場に行ったような気分になったりした経験のある人も少なくないでしょう。オンラインでの鑑賞機会が増え、必ずしも実際に作品を見るべきだとは言えない時代になってきていますが、依然として、画面越しでは伝わりきらない作品の魅力があるのも事実です。
本展では、作品と対峙することで、その技法や構造の違和に気づきをもたらすような、認知の構造を視覚的に表現する3組のアーティスト、大庭孝文、菅雄嗣、ヨフ(大原崇嘉、古澤龍、柳川智之)の作品を紹介します。
大庭孝文は、人間の記憶について着目し、写真をもとに絵画を制作しています。異なる複数の方法で「描く」と「消す」を繰り返し行い、その痕跡が層となって現れます。菅雄嗣は、ウレタン塗装で鏡面のように施した画面に絵具を均一にのせた後、一部の絵具を刮ぐようにして描いたり、その削り取った絵具で対になる作品を描いたりと、筆致の身体性や絵具そのものの物質感が放つ絵画性を探究しています。ヨフは、大原崇嘉、古澤龍、柳川智之の3人によるアーティスト・コレクティブです。視覚メディアにおける色彩、空間などの研究や実践をとおし、特殊な照明や空間構成の相互作用により、色の現出をコントロールし、新たな視覚体験を生み出しています。 彼らの作品は、実物へのつぶさな観察によって、細やかな凹凸やテクスチャが楽しめる表層や構造への理解を深め、また、展示空間内における作品と鑑賞者自身との距離の変化や視線の移動によって、さまざまな気づきを与えます。身体を使いながら時間をかけて作品と対峙することで、「モノを見て、何かを想起する」という行為自体を考え直すきっかけとなることでしょう。
本展のタイトル「メニスル」は、一見記号化された文字列のようですが、脳がその音を認識すると「目にする」という単語となり、同時に「実際に見る」というその意味自体も飛び込んできます。知覚から認識に変化するタイミングや記憶の仕方、他の事象との結び付け方は人さまざまですが、そのプロセスの差異こそが、この多様な世界を作り出しているのでしょう。3組それぞれの探究、そして新たな表現に挑戦した展示空間をぜひ会場でお楽しみください。
※「ACT(Artists Contemporary TOKAS)」は、 トーキョーアーツアンドスペース(TOKAS)のプログラム参加経験者を含め、今注目すべき活動を行う作家を紹介する企画展です。
アーティスト・トーク
日時 2024年3月2日(土) 16:00-17:30
出演 大庭孝文、菅 雄嗣、ヨフ(大原崇嘉、古澤 龍、柳川智之)
会場 トーキョーアーツアンドスペース本郷
料金 無料
大庭孝文|OHBA Takafumi
1988年大阪府生まれ。広島県を拠点に活動。
記憶と忘却という、人間の認知構造について探求し、平面作品に落とし込む作業を行う大庭。一見単純な構造に見える大庭の平面作品は、複層的な工程を経て制作されています。
これまで、大庭は自身にとっての「正しい風景」に焦点を当ててきました。本展では、実在しない記憶を実際に体験したと思い込む「過誤記憶」や、他者の記憶が自分のものになったかのように感じる「記憶の流用」に主眼を置き、新しいアプローチをもって制作に取り組んでいます。知人が所有する何気ない写真や、互いに共有しているであろう時代性をもった記憶を、相手との対話を経ながら手繰り寄せ、新しい風景を描きだします。
菅 雄嗣|SUGA Yushi
1988年長崎県生まれ。茨城県を拠点に活動。
菅は、図像の鮮明さ以上に、筆致の身体性や絵具そのものの物質感などが放つ絵画性を探究しています。近年は、同一あるいは相互関係のある異なるモチーフの作品を2枚1組として並べ、対比させる展示スタイルをとっています。
本展では、境界を意味する「liminal(リミナル)」をテーマに、絵画作品と普段制作のモチーフとしているCGモデルを展示構成に加え、菅として初めてのインスタレーションを発表します。現実と虚構の空間、そして、異なる手法によって描かれ対の関係を持った絵画作品シリーズは、どちらの境界も分断されることなく、繋がりっており、メディアを往来する新たな表現となって立ち現れます。
ヨフ|YOF
大原崇嘉、古澤龍、柳川智之の3 人によるアーティスト・コレクティブであるヨフは、色彩・空間についてのプラグマティック(実践的)なリサーチや、デジタルメディアにおけるイメージの拡張性について考察することで、視覚表現の現在性を捉え直す実践を行っています。近年では、ディスプレイを用いて、鑑賞者の視線と映像空間との相互的な関わりをテーマとしたインスタレーション作品などを発表しています。
本展では、デジタルイメージにおいて唐突に「切り抜き/貼り付け」られた画像のように、対象と周囲の環境との視覚的な「断絶」を実空間において実現させることで、事物に内在する観念性について再考していきます。
インターネットの普及により、私たちは日々膨大なイメージを目から取り込んでいます。展覧会を訪れる前に、誰かのSNSで作品を見たり、その場に行ったような気分になったりした経験のある人も少なくないでしょう。オンラインでの鑑賞機会が増え、必ずしも実際に作品を見るべきだとは言えない時代になってきていますが、依然として、画面越しでは伝わりきらない作品の魅力があるのも事実です。
本展では、作品と対峙することで、その技法や構造の違和に気づきをもたらすような、認知の構造を視覚的に表現する3組のアーティスト、大庭孝文、菅雄嗣、ヨフ(大原崇嘉、古澤龍、柳川智之)の作品を紹介します。
大庭孝文は、人間の記憶について着目し、写真をもとに絵画を制作しています。異なる複数の方法で「描く」と「消す」を繰り返し行い、その痕跡が層となって現れます。菅雄嗣は、ウレタン塗装で鏡面のように施した画面に絵具を均一にのせた後、一部の絵具を刮ぐようにして描いたり、その削り取った絵具で対になる作品を描いたりと、筆致の身体性や絵具そのものの物質感が放つ絵画性を探究しています。ヨフは、大原崇嘉、古澤龍、柳川智之の3人によるアーティスト・コレクティブです。視覚メディアにおける色彩、空間などの研究や実践をとおし、特殊な照明や空間構成の相互作用により、色の現出をコントロールし、新たな視覚体験を生み出しています。 彼らの作品は、実物へのつぶさな観察によって、細やかな凹凸やテクスチャが楽しめる表層や構造への理解を深め、また、展示空間内における作品と鑑賞者自身との距離の変化や視線の移動によって、さまざまな気づきを与えます。身体を使いながら時間をかけて作品と対峙することで、「モノを見て、何かを想起する」という行為自体を考え直すきっかけとなることでしょう。
本展のタイトル「メニスル」は、一見記号化された文字列のようですが、脳がその音を認識すると「目にする」という単語となり、同時に「実際に見る」というその意味自体も飛び込んできます。知覚から認識に変化するタイミングや記憶の仕方、他の事象との結び付け方は人さまざまですが、そのプロセスの差異こそが、この多様な世界を作り出しているのでしょう。3組それぞれの探究、そして新たな表現に挑戦した展示空間をぜひ会場でお楽しみください。
※「ACT(Artists Contemporary TOKAS)」は、 トーキョーアーツアンドスペース(TOKAS)のプログラム参加経験者を含め、今注目すべき活動を行う作家を紹介する企画展です。
アーティスト・トーク
日時 2024年3月2日(土) 16:00-17:30
出演 大庭孝文、菅 雄嗣、ヨフ(大原崇嘉、古澤 龍、柳川智之)
会場 トーキョーアーツアンドスペース本郷
料金 無料
大庭孝文|OHBA Takafumi
1988年大阪府生まれ。広島県を拠点に活動。
記憶と忘却という、人間の認知構造について探求し、平面作品に落とし込む作業を行う大庭。一見単純な構造に見える大庭の平面作品は、複層的な工程を経て制作されています。
これまで、大庭は自身にとっての「正しい風景」に焦点を当ててきました。本展では、実在しない記憶を実際に体験したと思い込む「過誤記憶」や、他者の記憶が自分のものになったかのように感じる「記憶の流用」に主眼を置き、新しいアプローチをもって制作に取り組んでいます。知人が所有する何気ない写真や、互いに共有しているであろう時代性をもった記憶を、相手との対話を経ながら手繰り寄せ、新しい風景を描きだします。
菅 雄嗣|SUGA Yushi
1988年長崎県生まれ。茨城県を拠点に活動。
菅は、図像の鮮明さ以上に、筆致の身体性や絵具そのものの物質感などが放つ絵画性を探究しています。近年は、同一あるいは相互関係のある異なるモチーフの作品を2枚1組として並べ、対比させる展示スタイルをとっています。
本展では、境界を意味する「liminal(リミナル)」をテーマに、絵画作品と普段制作のモチーフとしているCGモデルを展示構成に加え、菅として初めてのインスタレーションを発表します。現実と虚構の空間、そして、異なる手法によって描かれ対の関係を持った絵画作品シリーズは、どちらの境界も分断されることなく、繋がりっており、メディアを往来する新たな表現となって立ち現れます。
ヨフ|YOF
大原崇嘉、古澤龍、柳川智之の3 人によるアーティスト・コレクティブであるヨフは、色彩・空間についてのプラグマティック(実践的)なリサーチや、デジタルメディアにおけるイメージの拡張性について考察することで、視覚表現の現在性を捉え直す実践を行っています。近年では、ディスプレイを用いて、鑑賞者の視線と映像空間との相互的な関わりをテーマとしたインスタレーション作品などを発表しています。
本展では、デジタルイメージにおいて唐突に「切り抜き/貼り付け」られた画像のように、対象と周囲の環境との視覚的な「断絶」を実空間において実現させることで、事物に内在する観念性について再考していきます。
作家・出演者 | 大庭孝文, 菅雄嗣, ヨフ(大原崇嘉, 古澤龍, 柳川智之) |
会場 | トーキョーアーツアンドスペース 本郷 (Tokyo Arts and Space Hongo) |
住所 | 113-0033 東京都文京区本郷2-4-16 |
アクセス | 御茶ノ水駅(JR中央線・総武線)御茶ノ水橋口 御茶ノ水駅(東京メトロ丸ノ内線)1番出口 水道橋駅(都営地下鉄三田線)A1出口 水道橋駅(JR総武線)東口 本郷三丁目駅(都営地下鉄大江戸線)3番出口 本郷三丁目駅(東京メトロ丸ノ内線)1番出口 各駅より徒歩7分 |
会期 | 2024/02/24(土) - 03/24(日) |
時間 | 11:00-19:00(入場は閉館30分前まで) |
休み | 月曜日 |
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