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川内理香子『Even the pigments in paints were once stones』

WAITINGROOM

2023/11/25(土) - 12/24(日)

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《A Day in the Life》2023, stone, 450 x 710 x 50 mm, photo by Shintaro Yamanaka (Qsyum!)
《A Day in the Life》2023, stone, 450 x 710 x 50 mm, photo by Shintaro Yamanaka (Qsyum!)
WAITINGROOM(東京)では、2023年11月25日(土)から12月24日(日)まで、川内理香子の個展『Even the pigments in paints were once stones』を開催いたします。「身体」という根源的なテーマを軸に、ペインティングやドローイング、針金やネオン管など、多岐にわたる素材を用いて作品を制作している川内理香子。近年は、消化や排泄、料理をテーマとした各地の神話の中に象徴的に登場する、動物や人体の一部などのモチーフを、色彩豊かに描いたペインティング作品でも知られています。
本展で川内は、大理石をはじめとした石を素材にした新シリーズを、新作のペインティング作品と共に発表いたします。川内作品の特徴は、どの表現方法においても、作家自身の身体をもって表現される「線」にあると言えます。油絵の具によるペインティング作品も、輪郭で囲まれた対象の内側を塗り分けるのではなく、何層にも厚塗りした色彩の面を、引っ掻くような素早い筆致で線描するという手法で描かれています。石の彫刻の新シリーズでは、ペインティング作品の手法を引き継ぎ、特徴的な線描によるドローイングを、大理石のもつ天然の色彩や模様の上に彫り込みました。新たな素材と出会った川内理香子の新シリーズにぜひご期待ください。

作家・川内理香子について
1990年東京都生まれ、2017年に多摩美術大学大学院美術研究科 絵画専攻油画研究領域を修了。現在、東京を拠点に活動中。食への関心を起点とし、身体と思考、自己と他者、それらの境界の不明瞭さや、消化や排泄、食べることとそこから作られる身体を世界創造の起点とする神話の世界などをモチーフに作品を制作しています。ドローイングやペインティングをはじめ、針金やゴムチューブ、樹脂やネオン管など、その表現方法は多岐にわたります。多摩美術大学在学中の2014年に参加した公募グループ展『CAF ART AWARD 2014』で保坂健二朗賞を受賞後、15年に新進アーティストを対象にした公募プログラム『shiseido art egg』にてshiseido art egg賞(大賞)を受賞。21年『TERRADA ART AWARD 2021』ファイナリスト選出、寺瀬由紀賞受賞。22年『VOCA展2022 現代美術の展望─新しい平面の作家たち─』にて大賞のVOCA賞を受賞。近年の展覧会に、2023年個展『The Voice of Soul』(ERA GALLERY/ミラノ、イタリア)、個展『human closely』(Lurf MUSEUM/東京)、個展『line & colors』(N&A Art SITE/東京)、22年個展『Lines』(VAN DER GRINTEN GALERIE/ケルン、ドイツ)など。主なコレクションに愛知県美術館などが挙げられます。

アーティスト・ステートメント
絵の具は水みたいなものだと思う。
というのも絵の具のタッチの中に水や土を感じることがあるからだ。
滝のような、湖のさざなみのような、海の深さのような、
崖のような、地層のような、化石のような、
空の雲や色が刻一刻と変わるように、描いていると柔らかさの中の絵の具も刻一刻と変化する。
あるところで絵の中の流動は私の中で石のようにかたくななものに感じられ画面が結晶化する。
石の成り立ちはどうなっているのだろう。
長い時間をかけた、一瞬の積み重ねが石の積層となり意図しない美しい調和が生まれている。
絵の具の中や、自分が描いた筆跡、筆致の中に同じような自然があって欲しい。
絵の具の柔らかさの中で私は自然を探り出し、それは絵の具の時間の中で徐々に凝固し、石のようなかたさを手に入れる。
今度は石の硬さの中に柔らかな線を見つけ出してみる。
石に線を描いていると、石は絵の具そのものをキャンバスから取り出してしまったみたいな塊にも思えてくる。
でも、考えてみたら絵の具も石などの自然の中のものを削り取って、それが水や油と組み合わさっているものだった。
絵の具もかつては石だったんだ。
だからだろうか、石の中に柔らかな線を見つける時、石の表面もまた皮膚のような柔らかさを取り戻しているような気がする。(川内理香子)

揺らぎを留める柔らかな「線」
ドローイングだけで構成された展覧会で鮮烈なインパクトを残し、そのキャリアをスタートさせた川内理香子は、「線」とは、それを引いた者の身体性が最も如実に表れるものだといいます。「線には、その瞬間の身体の動きが、ひいては精神性までが表れるものだと思っています。自分の思考や身体は、日々刻々と状況の中で変化する流動的なものですが、私は線を引くことで、その瞬間の身体を作品の上に『凝固』させているという感覚があります」(松崎未来「30 ARTISTS U35 川内理香子 Rikako Kawauchi」、ARTnews JAPAN、2022年2月4日、https://artnewsjapan.com/30artists_u35/article/13)と語っているように、川内はその制作を通し、内部と外部、意識と無意識といった、捉え難い何かの境界や輪郭を探るように「線」を引きながら、それらをキャンバスや画用紙の上に留めようとしています。
本展で発表される新シリーズに用いられている大理石は、熱や大きな圧力が加わりながら、長い時間をかけて石灰岩が再結晶化したものです。その組成物であるサンゴなどの死骸は本来は白く、数万~数億年かけて石として生成する過程で、化学反応や熱による影響、石に含まれる鉱物や金属イオンなどの違いにより、様々な色や模様の違いが生まれます。大理石の表面に表れた天然の色や模様は、何万年という時間をかけて『凝固』してできたものなのです。
川内のペインティング作品の表面を見ると、厚塗りされた柔らかい油絵の具が乾いて固まる前に、その表面を削るように「線」を引き対象が描写されているということがわかります。川内の言う、流動している不確定なものが『凝固』して作品になるという感覚は、かかる時間の差異はあれど、石の成り立ちと似ていると言えるでしょう。そんな石の上に刻み込まれた川内の「線」は、ごつごつとした岩肌に「線」によって描かれた、芸術の始まりとも形容されるラスコーの洞窟壁画を彷彿とさせるかのようです。それらは共に発表されるペインティング作品と響き合い、「線を引く」という表現のもつ身体性や、プリミティブで本能的な側面を思い出させるでしょう。

出典

作家・出演者川内理香子
会場WAITINGROOMうぇいてぃんぐ るーむ
住所
112-0005
東京都文京区水道2-14-2 長島ビル 1F
アクセス
江戸川橋駅(東京メトロ有楽町線)4番出口 徒歩3分
神楽坂駅(東京メトロ東西線)1番出口 徒歩10分
会期2023/11/25(土) - 12/24(日)
時間水-土 12:00-19:00
日 12:00-17:00
休み月曜日、火曜日
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