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キンマキ「plaster」

Art Center Ongoing

2023/09/13(水) - 24(日)

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ずっと、私の制作のモチベーションになっていることのひとつが、特に人に話す必要はないかもしれない家族が引き起こすしょうもない出来事である。
(実際にしょうもないかどうかは別として、しょうもないと表現する)
例えば、今回展示する作品について。
私のお母さんは足が疲れやすいみたいで、いつも足の裏にサロンパスとかロキソニンテープを大量に貼っているのだけど、お父さんがたまにその足を超拡大して写真に収めて送ってくる。(多分可愛いと思ってるのかな)
それらの写真や、帰省した時に自分で撮影してみたりしたお母さんの足写真が集まったので絵に描いてみた。
家族が書いたどうでもいいメモも近頃積極的に絵に描いている。
メモを描くうえで、ずっと紙自体の四角い形が気になっていたので、お母さんの足に貼られたサロンパスなどの形もそれに繋がるところが見えてきた気がする。
表面的に作品に現れていること以外にも、昔経験してずっと覚えていること
例えば
子どもの頃お姉ちゃんが持ってるものが欲しくなったら自分のツバを付けて奪っていた
とか
子どもの頃おじいちゃんおばあちゃんの家に1人で遊びに行った時、鳥羽に住んでいる親戚のヤクザのおじさんが遊びに来ていて超怖かった
とか
実家の横が昔スナックで、毎晩カラオケが音漏れして聴こえてきて、それを聴きながら寝てた
とか
めちゃくちゃ小さい頃お母さんに抱っこされて電車に乗った時、お母さんのティシャツの肩の部分をツバでビショビショにした
とか
子どもの頃おじいちゃんと待ち合わせする時、いつもおじいちゃんはわざとふざけて知らない人のふりしてきた
とか…
おそらくそういうしょうもない出来事が、思い出を超えて、私が作品を作るうえでの根源的な興味・モチベーションになっていると思う。

< 制作について -plaster- >

この度、Art Center Ongoingでは、キンマキによる展覧会「plaster」を開催します。キンマキは、三重県出身、2020年に武蔵野美術大学大学院美術専攻油絵コースを修了し、現在は東京で活動を続けるペインターです。
彼女の制作は、ほぼ一貫して、油彩による具象画がベースとなっています。キンマキは、自身の心をかすっていくように触れるイメージを、日常生活の中で採集します。それらを「コピー&ペースト」して絵画空間の中に配置したり、似たモチーフ、あるいは同一のモチーフを繰り返し描いたりすることで、絵画の中で、イメージがどのような印象を持って立ち現れるかを探求しながら制作を行います。
キンマキは、映画や写真の中に映り込む絵画やポスターなどに、メタ的な観点から強く興味を持つと話します。絵画の中の世界と、絵画自体が存在する私たちのいる現実世界。これらの関係性を、キャンバスのサイズや、モチーフのスケールなどを意図的に操作することで、観者の認識に揺らぎを持たせるような試みを続けています。
キンマキの作品は、絵画という媒体自体や、平面に描き出される形象への関心、また、彼女の手になじんだ油絵具のストロークなど、多様な要素から成り立っています。近年の制作では、実家で見つけた家族の走り書きのメモや置き手紙、ポストイット(付箋紙)などがモチーフとして扱われています。パーソナルな対象を描きながらも、作品は個人の記録的表現の枠から、伸びやかに飛び出して、私たちに共有されます。
今回の展覧会のタイトル、「plaster」という英単語は、様々に翻訳されますが、湿布薬や絆創膏などの意味も持ち合わせています。キンマキの父親が頻繁に送ってくる、母親の足に貼られた湿布の写真に着想を得て、今回の展示作品は制作されました。キンマキは、紙が壁に貼り付けられている、作家曰く「ペチャ、とした」形象に惹かれ、これまでの作品の中でも繰り返し描いてきました。これは、絵画のプリントされたスッテカーやTシャツなどを見て、絵画のもつスタンダートな四角い形が、時にその形象を歪ませるということに面白さを感じた彼女の経験からきているものだといいます。湿布やメモ用紙などの輪郭へのキンマキの眼差しは、絵画という存在への興味の延長線上にあるのです。
本展では、絵画作品のほかに、アニメーション作品も展示されます。このアニメーションという試みも、作家が常に持つ「絵はどのように展開し得るのか」という意識のもとに制作されています。
キンマキの油絵は、その筆跡や絵の肌や匂いが、私たちの体をキュッと、あるいはグッとさせる、絵のもつパワーに、強引ではなく穏やかなものとして引き込ませる魅力に溢れています。そんな作品たちと向き合う時間を、ぜひ多くの人に過ごしていただければと思います。
(Art Center Ongoing ヤマモトオル)

会期中イベント
9月16日(土)19:00-
オープニングパーティー
1,000円(軽食+1Drink+入場料)


9月17日(日)19:00-
ゲストトーク
1,000円(1Drink+入場料)
ゲスト:モリノダイチ(漫画家)
トピック:
⚫︎モリノダイチの漫画の話×キンマキの制作の話
⚫︎キンマキとモリノダイチが学生時代に一緒にやっていた「仰向け画廊」や「朝鮮大美術科との交流」といった活動を紹介しながら、大学内で自主的に活動することについての話もします。


9月24日(日)15:00-
オンゴーイングスクール
1,000円(お好きなケーキ+1Drink+入場料)
中高生にもわかる作家本人による展示作品解説

出典

作家・出演者キンマキ
会場Art Center Ongoingあーと せんたー おんごーいんぐ (アートセンター・オンゴーイング)
住所
180-0002
東京都武蔵野市吉祥寺東町1-8-7
アクセス
吉祥寺駅(JR中央本線, 総武本線, 京王井の頭線)北口 徒歩10分
会期2023/09/13(水) - 24(日)
時間12:00‒21:00
※水木金は16:00-18:00まで一時休憩
休み月・火曜日
観覧料400円(セレクトティー付き)
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