古くから西洋の版画家は、「旅」から作品のインスピレーションを得てきました。芸術家としての修業や仕事だけでなく観光、社会の変化など、旅立つ理由はさまざまですが、険しい山を馬車で越え、大海原を帆船で渡る旅には大きな危険が伴ったことでしょう。鉄道や蒸気船が普及する19世紀には、版画家たちの行動範囲はヨーロッパを越えていきました。それと同時に、これまで見過ごされてきた身近な自然風景やにぎやかな都市生活にも光が当てられるようになります。
本展では、当館のコレクションから西洋版画を中心に、旅や移動に関わる16~20世紀の作品を約160点展示します。古代文明発祥の地であるエジプトから、多くの芸術家を魅了したイタリア、都市と自然が共存するイギリスやフランス、そして高層ビルの建ち並ぶアメリカ・ニューヨークまで――400年の時を超える世界旅行をお楽しみください。
展示構成
第1章:イタリアを目指す旅
芸術家が仕事だけでなく自己研鑽を目的に旅行するようになったのは、16世紀頃のこと。アルプス以北の「北方ヨーロッパ」の芸術家たちは古代ローマの遺跡やイタリア・ルネサンスの絵画彫刻、そして理想郷を思わせるカンパーニャの風景に憧れ、危険を賭して山脈を越える旅に出ました。
17世紀末から19世紀になると、イギリスやフランスの裕福な若者は、イタリアの歴史や文化に触れて教育の仕上げを行う「グランド・ツアー」に出かけるようになります。こうした旅行客の間で人気を博したのは、ローマやヴェネツィアの名所を表した絵画や版画でした。
主な出品作家:ピーテル・ブリューゲル(父)、ペーテル・パウル・ルーベンス、クロード・ロラン、カナレット、ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ、ユベール・ロベール、ジャン=バティスト・カミーユ・コロー、J・M・ホイッスラー
第2章:「オリエント」をめぐる旅
19世紀のヨーロッパで流行した「オリエンタリスム(東洋趣味)」。「オリエント」の定義は時代によってさまざまですが、地中海のすぐ東に広がるイスラーム世界から、日本を含むアジア、「新大陸」アメリカまで、幅広い地域を含むこともあります。
しばしばヨーロッパの人々は、旅行記などで得た情報をもとに見知らぬ土地のイメージを想像してきましたが、19世紀には自ら現地を訪れる画家や版画家が増えていきます。彼らにとってオリエントは、西洋から見て「未開の地」であると同時に、原初的な生活が営まれる魅惑的な「楽園」でもありました。
主な出品作家:ウィリアム・ホガース、テオドール・ジェリコー、アントワーヌ=ジャン・グロ、ウジェーヌ・ドラクロワ、ジョルジュ・ビゴー、ポール・ゴーガン、フィリップ・モーリッツ、エリック・デマジエール
第3章:「絵になる風景」を発見する旅
産業革命下のイングランドやフランスでは、失われゆく自国の自然や農村、朽ちた歴史的建造物などが「絵になる(=ピクチャレスクな)」テーマとして見直されるようになります。18世紀末から19世紀にかけて「ピクチャレスク・ツアー」が盛んに行われ、山や川が織りなす自然風景とともに、中世の古城やキリスト教建築なども数多くの挿絵本に表されました。
鉄道の建設が始まった19世紀中ごろになると、国内旅行はより身近なものとなっていきます。画家や版画家の行動範囲も格段に広がり、アトリエを離れて戸外で絵を描いたバルビゾン派や印象派の作品には田園や農村、海岸などの情景が表されました。
主な出品作家:J・M・W・ターナー、ジョン・コンスタブル、シャルル=フランソワ・ドービニー、オノレ・ドーミエ、カミーユ・ピサロ、オーギュスト・ルペール、アンリ・リヴィエール
第4章:都市に集う芸術家の旅
芸術の道を志す人々が最初に経験する大旅行といえば、美術学校があり美術や出版の仕事が集中する都市への移動でしょう。群衆でにぎわう大通りや空高くそびえる高層ビルなどの都会ならではのモティーフは、彼らの創作意欲を刺激しました。
19世紀半ばに人口100万人を超えたパリは、ローマに代わる国際的な芸術都市として多くの人々を惹きつけました。他方で第二次世界大戦期には、戦火の迫るヨーロッパを離れてアメリカに渡った者もいます。そうした亡命芸術家のコミュニティでは実験的な版画が制作され、戦後のアメリカ美術に多大な影響を与えました。
主な出品作家:シャルル・メリヨン、フェリックス・ヴァロットン、ジョセフ・ペネル、ベルナール・ビュフェ、ピエト・モンドリアン、スタンレー・ウィリアム・ヘイター、イヴ・タンギー、ロイ・リキテンスタイン、木村利三郎、長谷川潔
第5章:現代の「旅する芸術家」
本展では最後に、現代の「旅する芸術家」として、世界各地で大規模なアート・プロジェクトを手がけた「クリストとジャンヌ=クロード」の芸術家夫婦と、ヨーロッパからアジア、南極までを旅した版画家ヨルク・シュマイサーをご紹介します。
インターネットとメディアが普及した今日、私たちは写真や映像を通じて疑似的な世界旅行を楽しむことができます。それでも様々な土地を旅してまわり、現地で目にしたイメージから作品のテーマを得る芸術家は少なくありません。彼らにとって旅での出会いや発見は創作活動に必要不可欠な要素だったのです。
主な出品作家:クリストとジャンヌ=クロード、ヨルク・シュマイサー
本展では、当館のコレクションから西洋版画を中心に、旅や移動に関わる16~20世紀の作品を約160点展示します。古代文明発祥の地であるエジプトから、多くの芸術家を魅了したイタリア、都市と自然が共存するイギリスやフランス、そして高層ビルの建ち並ぶアメリカ・ニューヨークまで――400年の時を超える世界旅行をお楽しみください。
展示構成
第1章:イタリアを目指す旅
芸術家が仕事だけでなく自己研鑽を目的に旅行するようになったのは、16世紀頃のこと。アルプス以北の「北方ヨーロッパ」の芸術家たちは古代ローマの遺跡やイタリア・ルネサンスの絵画彫刻、そして理想郷を思わせるカンパーニャの風景に憧れ、危険を賭して山脈を越える旅に出ました。
17世紀末から19世紀になると、イギリスやフランスの裕福な若者は、イタリアの歴史や文化に触れて教育の仕上げを行う「グランド・ツアー」に出かけるようになります。こうした旅行客の間で人気を博したのは、ローマやヴェネツィアの名所を表した絵画や版画でした。
主な出品作家:ピーテル・ブリューゲル(父)、ペーテル・パウル・ルーベンス、クロード・ロラン、カナレット、ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ、ユベール・ロベール、ジャン=バティスト・カミーユ・コロー、J・M・ホイッスラー
第2章:「オリエント」をめぐる旅
19世紀のヨーロッパで流行した「オリエンタリスム(東洋趣味)」。「オリエント」の定義は時代によってさまざまですが、地中海のすぐ東に広がるイスラーム世界から、日本を含むアジア、「新大陸」アメリカまで、幅広い地域を含むこともあります。
しばしばヨーロッパの人々は、旅行記などで得た情報をもとに見知らぬ土地のイメージを想像してきましたが、19世紀には自ら現地を訪れる画家や版画家が増えていきます。彼らにとってオリエントは、西洋から見て「未開の地」であると同時に、原初的な生活が営まれる魅惑的な「楽園」でもありました。
主な出品作家:ウィリアム・ホガース、テオドール・ジェリコー、アントワーヌ=ジャン・グロ、ウジェーヌ・ドラクロワ、ジョルジュ・ビゴー、ポール・ゴーガン、フィリップ・モーリッツ、エリック・デマジエール
第3章:「絵になる風景」を発見する旅
産業革命下のイングランドやフランスでは、失われゆく自国の自然や農村、朽ちた歴史的建造物などが「絵になる(=ピクチャレスクな)」テーマとして見直されるようになります。18世紀末から19世紀にかけて「ピクチャレスク・ツアー」が盛んに行われ、山や川が織りなす自然風景とともに、中世の古城やキリスト教建築なども数多くの挿絵本に表されました。
鉄道の建設が始まった19世紀中ごろになると、国内旅行はより身近なものとなっていきます。画家や版画家の行動範囲も格段に広がり、アトリエを離れて戸外で絵を描いたバルビゾン派や印象派の作品には田園や農村、海岸などの情景が表されました。
主な出品作家:J・M・W・ターナー、ジョン・コンスタブル、シャルル=フランソワ・ドービニー、オノレ・ドーミエ、カミーユ・ピサロ、オーギュスト・ルペール、アンリ・リヴィエール
第4章:都市に集う芸術家の旅
芸術の道を志す人々が最初に経験する大旅行といえば、美術学校があり美術や出版の仕事が集中する都市への移動でしょう。群衆でにぎわう大通りや空高くそびえる高層ビルなどの都会ならではのモティーフは、彼らの創作意欲を刺激しました。
19世紀半ばに人口100万人を超えたパリは、ローマに代わる国際的な芸術都市として多くの人々を惹きつけました。他方で第二次世界大戦期には、戦火の迫るヨーロッパを離れてアメリカに渡った者もいます。そうした亡命芸術家のコミュニティでは実験的な版画が制作され、戦後のアメリカ美術に多大な影響を与えました。
主な出品作家:シャルル・メリヨン、フェリックス・ヴァロットン、ジョセフ・ペネル、ベルナール・ビュフェ、ピエト・モンドリアン、スタンレー・ウィリアム・ヘイター、イヴ・タンギー、ロイ・リキテンスタイン、木村利三郎、長谷川潔
第5章:現代の「旅する芸術家」
本展では最後に、現代の「旅する芸術家」として、世界各地で大規模なアート・プロジェクトを手がけた「クリストとジャンヌ=クロード」の芸術家夫婦と、ヨーロッパからアジア、南極までを旅した版画家ヨルク・シュマイサーをご紹介します。
インターネットとメディアが普及した今日、私たちは写真や映像を通じて疑似的な世界旅行を楽しむことができます。それでも様々な土地を旅してまわり、現地で目にしたイメージから作品のテーマを得る芸術家は少なくありません。彼らにとって旅での出会いや発見は創作活動に必要不可欠な要素だったのです。
主な出品作家:クリストとジャンヌ=クロード、ヨルク・シュマイサー
作家・出演者 | ピーテル・ブリューゲル(父), ペーテル・パウル・ルーベンス, クロード・ロラン, カナレット, ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ, ユベール・ロベール, ジャン=バティスト・カミーユ・コロー, J・M・ホイッスラー, ウィリアム・ホガース, テオドール・ジェリコー, アントワーヌ=ジャン・グロ, ウジェーヌ・ドラクロワ, ジョルジュ・ビゴー, ポール・ゴーガン, フィリップ・モーリッツ, エリック・デマジエール, J・M・W・ターナー, ジョン・コンスタブル, シャルル=フランソワ・ドービニー, オノレ・ドーミエ, カミーユ・ピサロ, オーギュスト・ルペール, アンリ・リヴィエール, シャルル・メリヨン, フェリックス・ヴァロットン, ジョセフ・ペネル, ベルナール・ビュフェ, ピエト・モンドリアン, スタンレー・ウィリアム・ヘイター, イヴ・タンギー, ロイ・リキテンスタイン, 木村利三郎, 長谷川潔, クリストとジャンヌ=クロード, ヨルク・シュマイサー |
会場 | 町田市立国際版画美術館 (Machida City Museum of Graphic Arts) |
住所 | 194-0013 東京都町田市原町田4-28-1 |
アクセス | 町田駅(JR横浜線)ターミナル口 徒歩12分 町田駅(小田急線)東口 徒歩15分 町田駅(JR横浜線)北口 徒歩15分 |
会期 | 2023/07/22(土) - 09/24(日) |
時間 | 平日 10:00-17:00 ※入場は16:30まで 土日祝 10:00-17:30 ※入場は17:00まで |
休み | 月曜日 ※ただし9月18日(月祝)は開館、9月19日(火)は休館 |
観覧料 | 一般 800円 大学・高校生 400円 中学生以下 無料 ※展覧会初日は無料 ※シルバーデー(毎月第4水曜日)は満65歳以上の方無料 ※身体障がい者手帳、愛の手帳(療育手帳)または精神障がい者保健福祉手帳をお持ちの方と付き添いの方1名は半額 |
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