本展は、素材の循環と再生に対する現代的な問いかけを、静謐な造形を通して提示する作家・大原萌の個展です。主に使用されているのは、書道の練習に用いられた後、通常は廃棄される運命にある手漉き和紙。その紙を再び水に浸し、繊維を解き、成形・乾燥を経て新たな造形へと変容させる過程は、物質の再編成であると同時に、時間や記憶の層を掘り起こす行為でもあります。
完成した作品は、伝統的な和紙で構成されているにもかかわらず、紙という素材の既成概念から解き放たれ、石、木、あるいは土器のような自然物としての存在感を帯びています。その形象は一義的な意味付けを拒み、用途もまた確定されていません。それはオブジェとして、あるいは器として、観る者の想像力によって作品の意味は多層的に広がっていきます。
着彩に用いられているのは、墨、藍、柿渋、鉄錆、砂鉄といった、いずれも自然由来の素材です。これらは、単なる色彩表現の手段というより、素材それ自体が作品の文脈の一部となる存在であり、最終的には自然に還元される性質を備えています。この点において、大原の作品は「完成」を目指すものというよりも、「還元されていく途上のかたち」として捉えられるべきかもしれません。
展示全体を貫くテーマは、「再生」と「循環」です。捨てられるはずだったものが再び立ち上がり、やがてはまた土に還る。この一連のプロセスに、サステナビリティの問題を抱える現代社会において、どのような倫理的・美学的意義を見出せるのか。作品に触れることは、素材の持つ記憶や時間性と向き合うことであり、同時に、自然の調べ(情緒)に耳を澄ませる行為とも言えるでしょう。
この展示は、大原にとって特別な通過点 [milestone] であり、自然と人為の狭間に立ち現れる造形の試みです。ぜひ会場にて、人類の根底にある「祈り」の部分に立ち返り、気配を浴び、身を委ねて楽しんでいただければ幸いです。
Artist Profile
大原萌
1987年兵庫県生まれ。2014年より造形作家としての活動を開始。書道に使用された手漉き和紙など、いずれ廃棄される素材に再び手を加えることで、静けさと祈りの気配を宿す作品を制作している。現在は神奈川県を拠点に、アーティストおよびデザイナーとして活動。直感を起点に、素材との対話から生まれる造形を追求している。全国のギャラリーで個展を多数開催。
【主な個展】
2024年12月 東京タワーギャラリー(神谷町) 「捨てゆかれるものの再生 やがては土へ還るもの」
2024年7月 松屋銀座 THE HOME(銀座)「捨てゆかれるものの再生 やがては土へ還るもの」
2024年6月 松屋銀座 デザインコレクション(銀座)「捨てゆかれるものの再生 やがては土へ還るもの」
2023年9月 oku(世田谷) solo exhibition
2023年11月 うつわ屋まほろ(横浜市) solo exhibition
2023年4月 sieni(高知市) solo exhibition
2022年5月 sieni(高知市) solo exhibition
【主なグループ展】
2025年1月 SPIRAL(表参道) Fragment vol.4
2024年9月 isel(高田馬場) 2人展&WS
2023年1月 Bakurocho Art Cube(日本橋) #1 program
2022年11月 Dtree gallery(堺市) 2人展
2022年3月 日東堂(京都市) 手仕事の先へ
2022年1月 RITMUS(佐賀市) 残存共鳴
完成した作品は、伝統的な和紙で構成されているにもかかわらず、紙という素材の既成概念から解き放たれ、石、木、あるいは土器のような自然物としての存在感を帯びています。その形象は一義的な意味付けを拒み、用途もまた確定されていません。それはオブジェとして、あるいは器として、観る者の想像力によって作品の意味は多層的に広がっていきます。
着彩に用いられているのは、墨、藍、柿渋、鉄錆、砂鉄といった、いずれも自然由来の素材です。これらは、単なる色彩表現の手段というより、素材それ自体が作品の文脈の一部となる存在であり、最終的には自然に還元される性質を備えています。この点において、大原の作品は「完成」を目指すものというよりも、「還元されていく途上のかたち」として捉えられるべきかもしれません。
展示全体を貫くテーマは、「再生」と「循環」です。捨てられるはずだったものが再び立ち上がり、やがてはまた土に還る。この一連のプロセスに、サステナビリティの問題を抱える現代社会において、どのような倫理的・美学的意義を見出せるのか。作品に触れることは、素材の持つ記憶や時間性と向き合うことであり、同時に、自然の調べ(情緒)に耳を澄ませる行為とも言えるでしょう。
この展示は、大原にとって特別な通過点 [milestone] であり、自然と人為の狭間に立ち現れる造形の試みです。ぜひ会場にて、人類の根底にある「祈り」の部分に立ち返り、気配を浴び、身を委ねて楽しんでいただければ幸いです。
Artist Profile
大原萌
1987年兵庫県生まれ。2014年より造形作家としての活動を開始。書道に使用された手漉き和紙など、いずれ廃棄される素材に再び手を加えることで、静けさと祈りの気配を宿す作品を制作している。現在は神奈川県を拠点に、アーティストおよびデザイナーとして活動。直感を起点に、素材との対話から生まれる造形を追求している。全国のギャラリーで個展を多数開催。
【主な個展】
2024年12月 東京タワーギャラリー(神谷町) 「捨てゆかれるものの再生 やがては土へ還るもの」
2024年7月 松屋銀座 THE HOME(銀座)「捨てゆかれるものの再生 やがては土へ還るもの」
2024年6月 松屋銀座 デザインコレクション(銀座)「捨てゆかれるものの再生 やがては土へ還るもの」
2023年9月 oku(世田谷) solo exhibition
2023年11月 うつわ屋まほろ(横浜市) solo exhibition
2023年4月 sieni(高知市) solo exhibition
2022年5月 sieni(高知市) solo exhibition
【主なグループ展】
2025年1月 SPIRAL(表参道) Fragment vol.4
2024年9月 isel(高田馬場) 2人展&WS
2023年1月 Bakurocho Art Cube(日本橋) #1 program
2022年11月 Dtree gallery(堺市) 2人展
2022年3月 日東堂(京都市) 手仕事の先へ
2022年1月 RITMUS(佐賀市) 残存共鳴
| 作家・出演者 | 大原萌 |
| 会場 | Miaki Gallery |
| 住所 | 106-0031 東京都港区西麻布1-14-16 ベルジュール麻布 2F |
| アクセス | 乃木坂駅(東京メトロ千代田線, 小田急小田原線)5番出口 徒歩7分 六本木駅(東京メトロ日比谷線)2番出口 徒歩8分 六本木駅(都営地下鉄大江戸線)7番出口 or 4B出口 徒歩12分 表参道駅(東京メトロ銀座線, 半蔵門線, 千代田線)A5出口 徒歩15分 |
| 会期 | 2025/06/28(土) - 07/26(土) |
| 時間 | 水曜日、木曜日 13:00-19:00(予約制) 金曜日 13:00-20:00 土曜日 11:00-18:00 ※水/木の来場予約はフォームにて受付: https://miakigallery.jp/contact |
| 休み | 日曜日、月曜日、火曜日 |
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