超不定期訪問/滞在制作project《Nami Itaに、いた?いる!》 Vol.08 山本麻世『だいだらぼっちの毛づくろい』
オルタナティブ掘っ立て小屋『ナミイタ Nami Ita』
2025/04/26(土) - 06/09(月)
オルタナティブ掘っ立て小屋『ナミイタ-Nami Ita』は、2023年末の火災によって余儀なくされた移転と改装を終え、2025年最初の展示/滞在制作企画、【超不定期訪問/滞在制作project《Nami Itaに、いた?いる!》 Vol.08 山本麻世『だいだらぼっちの毛づくろい』】を実施します。
山本は、移転前のナミイタで今回の滞在制作シリーズVol.01となる『イエティのまつ毛』(2021年11~12月)を実施し、昨年の秋に改装中のまま行った期間限定イベント『移設中/仮説の現在地』にも参加した、ナミイタにとって縁の深いアーティストです。
多摩美術大学や留学先であるオランダの大学で陶芸を学んだ山本は、熱によって土を形に変容させるその技術体系を、立体やインスタレーションの制作に援用 、拡張しながら、コマーシャルギャラリーからオルタナティブ・スペース、芸術祭など様々な場所で作品を発表してきました。前者は既製品と既製品を予想もできない組み合わせでくっつける(縫う、貼る、織る、結ぶ、巻く、千切る)手法の源に、後者は、様々な建築物の構造的な隙間や経年によって発生した亀裂などにそれらを「嵌め込み」、タイトルの言葉と共に「もの」と「もの」との関係性を変容させる発想として、いずれもそのユニークさが高い評価を得ています。妊娠、出産、子育ての経験を経てからは、それらが作品上の重要な主題になっており、フェミニズムの観点からアクティビスト的な活動にも取り組んでいます。
山本が旧ナミイタで発表した『イエティのまつ毛』では、元鶏舎の変形プレハブだったスペースの躯体や周囲の雑木林を伝説上の生き物に見立て、「毛を植える」ように、輪切りにした養生材をトタンの隙間や木の幹に挟み込む作品、子供の靴下、ヨガ・トレーニングのチューブ、ゴムホースなどをそれぞれ枝、幹、壁などに差し挟む作品などで、空間や周囲の全体を使った大がかりなインスタレーションとして表現しました。
四年ぶりの個展/滞在制作となる『だいだらぼっちの毛づくろい』は、移転先のナミイタで、それを継続、発展させようとするものです。会期前の準備から、滞在制作を行う会期中、会期後の撤収まで、山本は『だいだらぼっち』(もののけ姫でのアレンジが最近では最も知られているでしょうか)の存在を感じながら、里山の中へ埋もれるように建つ古い木々や木造トタンの平屋を、同じように作品(ゴムホース、茶封筒、リボン、養生材、蝋燭、線香etc)で様々に「繕い」、自然の循環に密やかに介入します。
加えて、今回は山本のオルタ―・エゴ(別人格)だという自転車のチューブを使った立体作品『ばとんさん』と来場者の「記念写真」をアーカイブ作品として残すという新しい「協働」の試みも含まれています。
『イエティのまつ毛』と同様、狭義の「作品」概念を壊し、世界の見え方を変化させる山本の新たな挑戦をご覧頂ければ幸いです。
【超不定期訪問/滞在制作project《Nami Itaに、いた?いる!》 Vol.08】
山本麻世
"だいだらぼっちの毛づくろい"
■会期:2025年4月26日(土)→6月9日(月)
※ 土日月オープン。火水木金休み。
■時間:12時30分→20時
※ 作家の滞在時は公開制作、作品設置を行い展示が拡張されていきます。
■会場:オルタナティブ掘っ立て小屋『ナミイタ Nami Ita』
神奈川県横浜市 青葉区 寺家町508(『アトリエ柿の里』内)
徒歩=小田急線『柿生』 or 東急田園都市線『青葉台』駅より徒歩約40分。
バス=柿生駅(小田急小田原線)北口からバス。
柿22, 柿23 桐蔭学園行→早野停留所から徒歩12分。
青葉台駅(東急田園都市線)北口からバス。青30(寺家町方面)寺家町停留所から徒歩3分
青31(鴨志田団地行)団地中央停留所から徒歩12分。
青28(桐蔭学園前行))常盤橋停留所から徒歩16分
※ 駐車場もございますが、数が数台に限られるため、事前にお問い合わせ下さい。
※ 所在場所の地図はGoogleマップをご参照下さい。
■ 入場:ドネーション500円(他企画とも共通)
*インスタレーションに使用した素材の断片、展示ポストカード、ナミイナのオリジナル版画をまとめた返礼パック付き。
* 駐車スペースが極めて限られます。事前にご確認下さい。
■ 企画:東間嶺(TEL:090-1823-7330)
■ 協力:アトリエ柿の里、作庭工房
■ MAIL: [email protected] URL: https://tinshacknamiita.org/
■ SNS: Twitter&FB→@Namiita2036 Instagram→@tinshacknamiita
プレスリリースPDF
https://drive.google.com/file/d/1Lo8jlxzliT8O86wOzIz7Xog_f-SO3_mp/view?fbclid=IwY2xjawJ4NyFleHRuA2FlbQIxMABicmlkETF1Q2RFcEFqNHhteEkzQW5DAR57t-kb0Vz2Gcv0oOX-VQt-Qn49oAQtsA3ineE_nFc9VYPzy8-ak9mg3_lG0Q_aem_-pYbchLWfEadsJj8Umj1pA
* アーティスト&ディレクターnote
家だって、毛づくろいしてほしい。繕ってほしい。子供の靴下みたいに。
ドイツの小人さんは靴の修理屋さんを手伝ってくれるならば、日本の大きなだいたらぼっちさんはこの小屋を繕ってくれないかい。里山ならきっと来てくれる。
家が循環する一つの生き物のようなシステムならば毛繕いしてあげないとと。東間さんが一生懸命、壁や屋根を綺麗にしてあげると同時に息をする筒のシステムを付けてあげたりしながら繕う。ちょうど、この周辺の事情により水道が止められそうになっている最中、、、、ライフラインの色んな管の事を思いながらの作業時間。
これからここが息を吹き返しますように。とお願いするためのお祈りキット。
里山の循環システムにマッチしないでもしてもいい。
繕ものを見つけては手を動かします。
(作家:山本麻世)
『これが全部できれば、今年はもう満足だなあ!わたしは!うはは!』
三月下旬、まだ天井の塗装をしている関係で剝がしていない養生をかきわけ、「実験をします!」と、力強く宣言して次から次へと茶封筒を壁に貼ってゆく山本さんの勇姿は、三年半前にトリゴヤ/ナミイタで目にしていたときよりも、さらにアーティストとして独自の世界を強力に作り上げているようだった。
2021年春にオープンしたナミイタで、まだ建物の整備を続ける状態の中、二回目の企画として行った山本さんの個展/滞在制作『イエティのまつ毛』(2021年11月~12月)は、生き物に見立てた元鶏舎の古びたトタン小屋(トリゴヤ/ナミイタ)のあちこち——外壁のトタンや内部空間の壁、柱、天井の隙間、周囲の雑木林など——に既製品を使った自作をインストール=忍び込ませ、まるで敷地の空間全体が巨大なインスタレーションであるかのような世界を見せてくれた。埋め込まれた作品の一部は、トリゴヤ/ナミイタが2023年の末に隣地からの失火で全焼した後も燃え残り、本展『だいだらぼっちの毛づくろい』にも持ち込まれた。その意味でも、今回の展示/滞在制作は2021年のチャレンジがさらに展開、拡張して継続するものだと言える。
そんな『だいだらぼっちの毛づくろい』は、燃えてしまった以前のナミイタ=トタン小屋と同様、建てられてから数十年の時を経て、いまにも里山と竹林に飲み込まれそうなおんぼろの平屋=移転先のナミイタ内外を、山本さんがさまざまな自作で会期中も継続して「繕う」、ワーク・イン・プログレスなインスタレーションだ。『だいだらぼっち』は、イエティとは違って建物に重ねられるイメージではなく、グリム童話で夜な夜な靴を作る小人の若く、ハイパー・ナチュラルな支援者としてイメージされる。
【ドイツの小人さんは靴の修理屋さんを手伝ってくれるならば、日本の大きなだいたらぼっちさんはこの小屋を繕ってくれないかい。里山ならきっと来てくれる】
「繕い」は、四隅の壁一面をミニマルに埋め尽くす茶封筒や、天井板の隙間にみっしりと詰め込まれた輪切りのゴムホース等の形をとり、それはもちろん一般的なイメージの「修繕」を意味しないが、大工や内装工が用いる材料や道具のように、アーティストである彼女は物質と物質の関係性をユーモラスに変化させるの自分の作品で、土地と建物への象徴的なアクセス——慈しみの介入を行うのだ。
【これからここが息を吹き返しますように。とお願いするためのお祈りキット。里山の循環システムにマッチしないでもしてもいい。繕ものを見つけては手を動かします。】
そして、今回の「繕い」は、自身のオルター・エゴ(別人格)だと山本さんが言う、自転車のゴムチューブを使った臍の緒形の立体作品『ばとんさん』と来場者が共に滞在制作(の成果)へと立ち会う姿を写真に収めることで、協働の記憶/記録が残される。彼女の作品は観者が空間から発見し、出会う瞬間に価値が生まれるものだから、アーカイブには特別な意味が生じる。新しいナミイタで、是非、多くの人にその経験に立ち会って欲しい。
(ディレクター:東間嶺)
【アーティスト・プロフィール】
1980年東京都生まれ、在住。2008年ヘリット・リートフェルト・アカデミー陶芸学科卒業、2009年サンドヴェルグ・インスティテュート、ファインアート学科に一年滞在。 滞在制作型のプロジェクトに多数参加。共存体の関係性や繋がりの存在を、身近な素材や、幼いころにやっていたような単純な作業で、その場に少しの間定着させる事によって既にある風景を新しい繋がりの風景へと変化させる。現在は滞在制作脳を持ちながら東京に定住制作、子育てをしている。今年は都市型のグループ展「光の後始末」 (Sprout curation、東京)、里山での個展「だいたらぼっちの毛づくろい」(オルタナティブ掘っ立て小屋ナミイタ、神奈川)、移動美術館アート・トラックへと転移する。
近年の主な展覧会、企画
2021:『イエティのまつ毛』(オルタナティブ掘っ立て小屋『ナミイタ』、東京)
2022:『交わると、生れます』『レス・ザン・ネイチャー』(それぞれSprout Curation、CADAN、東京)
2025:『光の後始末』(Sprout Curation、東京)
* 超不定期滞在制作project《Nami Itaに、いた?いる!》
作家がナミイタ Nami Itaを不定期・長短期で来訪/滞在し、小屋の内外に作品をインストール/展示/パフォーマンスする連続企画。レジデンス未満のゆるい感覚で、場と作品、作品と作者、作者と場の新たな関係性を探ってゆく試みです。これまでにVol.01 山本麻世『イエティのまつ毛』(2021 年11 月1 ~ 12 月2 日)、vol.02 藤巻瞬『不完全な修復』(2022年1月14日~2月14日)、vol.03 前田梨那『去来するイメージ/往還する痕跡』(2022年4月29日~5月30日)、vol.04 金井聰和『鳥小屋マサラ--骨を探して--』(2022年8月5日~9月11日)、vol.05 蓮輪友子『THEATER』(2023年1月8日~2月6日)、vol.06 仁禮洋志『もうれんやっさ』(2023年2月10日~2月26日、3月17日~3月27日)、Vol.07 GEN『聖者』(2023年9月15日~10月16日)を実施。
山本は、移転前のナミイタで今回の滞在制作シリーズVol.01となる『イエティのまつ毛』(2021年11~12月)を実施し、昨年の秋に改装中のまま行った期間限定イベント『移設中/仮説の現在地』にも参加した、ナミイタにとって縁の深いアーティストです。
多摩美術大学や留学先であるオランダの大学で陶芸を学んだ山本は、熱によって土を形に変容させるその技術体系を、立体やインスタレーションの制作に援用 、拡張しながら、コマーシャルギャラリーからオルタナティブ・スペース、芸術祭など様々な場所で作品を発表してきました。前者は既製品と既製品を予想もできない組み合わせでくっつける(縫う、貼る、織る、結ぶ、巻く、千切る)手法の源に、後者は、様々な建築物の構造的な隙間や経年によって発生した亀裂などにそれらを「嵌め込み」、タイトルの言葉と共に「もの」と「もの」との関係性を変容させる発想として、いずれもそのユニークさが高い評価を得ています。妊娠、出産、子育ての経験を経てからは、それらが作品上の重要な主題になっており、フェミニズムの観点からアクティビスト的な活動にも取り組んでいます。
山本が旧ナミイタで発表した『イエティのまつ毛』では、元鶏舎の変形プレハブだったスペースの躯体や周囲の雑木林を伝説上の生き物に見立て、「毛を植える」ように、輪切りにした養生材をトタンの隙間や木の幹に挟み込む作品、子供の靴下、ヨガ・トレーニングのチューブ、ゴムホースなどをそれぞれ枝、幹、壁などに差し挟む作品などで、空間や周囲の全体を使った大がかりなインスタレーションとして表現しました。
四年ぶりの個展/滞在制作となる『だいだらぼっちの毛づくろい』は、移転先のナミイタで、それを継続、発展させようとするものです。会期前の準備から、滞在制作を行う会期中、会期後の撤収まで、山本は『だいだらぼっち』(もののけ姫でのアレンジが最近では最も知られているでしょうか)の存在を感じながら、里山の中へ埋もれるように建つ古い木々や木造トタンの平屋を、同じように作品(ゴムホース、茶封筒、リボン、養生材、蝋燭、線香etc)で様々に「繕い」、自然の循環に密やかに介入します。
加えて、今回は山本のオルタ―・エゴ(別人格)だという自転車のチューブを使った立体作品『ばとんさん』と来場者の「記念写真」をアーカイブ作品として残すという新しい「協働」の試みも含まれています。
『イエティのまつ毛』と同様、狭義の「作品」概念を壊し、世界の見え方を変化させる山本の新たな挑戦をご覧頂ければ幸いです。
【超不定期訪問/滞在制作project《Nami Itaに、いた?いる!》 Vol.08】
山本麻世
"だいだらぼっちの毛づくろい"
■会期:2025年4月26日(土)→6月9日(月)
※ 土日月オープン。火水木金休み。
■時間:12時30分→20時
※ 作家の滞在時は公開制作、作品設置を行い展示が拡張されていきます。
■会場:オルタナティブ掘っ立て小屋『ナミイタ Nami Ita』
神奈川県横浜市 青葉区 寺家町508(『アトリエ柿の里』内)
徒歩=小田急線『柿生』 or 東急田園都市線『青葉台』駅より徒歩約40分。
バス=柿生駅(小田急小田原線)北口からバス。
柿22, 柿23 桐蔭学園行→早野停留所から徒歩12分。
青葉台駅(東急田園都市線)北口からバス。青30(寺家町方面)寺家町停留所から徒歩3分
青31(鴨志田団地行)団地中央停留所から徒歩12分。
青28(桐蔭学園前行))常盤橋停留所から徒歩16分
※ 駐車場もございますが、数が数台に限られるため、事前にお問い合わせ下さい。
※ 所在場所の地図はGoogleマップをご参照下さい。
■ 入場:ドネーション500円(他企画とも共通)
*インスタレーションに使用した素材の断片、展示ポストカード、ナミイナのオリジナル版画をまとめた返礼パック付き。
* 駐車スペースが極めて限られます。事前にご確認下さい。
■ 企画:東間嶺(TEL:090-1823-7330)
■ 協力:アトリエ柿の里、作庭工房
■ MAIL: [email protected] URL: https://tinshacknamiita.org/
■ SNS: Twitter&FB→@Namiita2036 Instagram→@tinshacknamiita
プレスリリースPDF
https://drive.google.com/file/d/1Lo8jlxzliT8O86wOzIz7Xog_f-SO3_mp/view?fbclid=IwY2xjawJ4NyFleHRuA2FlbQIxMABicmlkETF1Q2RFcEFqNHhteEkzQW5DAR57t-kb0Vz2Gcv0oOX-VQt-Qn49oAQtsA3ineE_nFc9VYPzy8-ak9mg3_lG0Q_aem_-pYbchLWfEadsJj8Umj1pA
* アーティスト&ディレクターnote
家だって、毛づくろいしてほしい。繕ってほしい。子供の靴下みたいに。
ドイツの小人さんは靴の修理屋さんを手伝ってくれるならば、日本の大きなだいたらぼっちさんはこの小屋を繕ってくれないかい。里山ならきっと来てくれる。
家が循環する一つの生き物のようなシステムならば毛繕いしてあげないとと。東間さんが一生懸命、壁や屋根を綺麗にしてあげると同時に息をする筒のシステムを付けてあげたりしながら繕う。ちょうど、この周辺の事情により水道が止められそうになっている最中、、、、ライフラインの色んな管の事を思いながらの作業時間。
これからここが息を吹き返しますように。とお願いするためのお祈りキット。
里山の循環システムにマッチしないでもしてもいい。
繕ものを見つけては手を動かします。
(作家:山本麻世)
『これが全部できれば、今年はもう満足だなあ!わたしは!うはは!』
三月下旬、まだ天井の塗装をしている関係で剝がしていない養生をかきわけ、「実験をします!」と、力強く宣言して次から次へと茶封筒を壁に貼ってゆく山本さんの勇姿は、三年半前にトリゴヤ/ナミイタで目にしていたときよりも、さらにアーティストとして独自の世界を強力に作り上げているようだった。
2021年春にオープンしたナミイタで、まだ建物の整備を続ける状態の中、二回目の企画として行った山本さんの個展/滞在制作『イエティのまつ毛』(2021年11月~12月)は、生き物に見立てた元鶏舎の古びたトタン小屋(トリゴヤ/ナミイタ)のあちこち——外壁のトタンや内部空間の壁、柱、天井の隙間、周囲の雑木林など——に既製品を使った自作をインストール=忍び込ませ、まるで敷地の空間全体が巨大なインスタレーションであるかのような世界を見せてくれた。埋め込まれた作品の一部は、トリゴヤ/ナミイタが2023年の末に隣地からの失火で全焼した後も燃え残り、本展『だいだらぼっちの毛づくろい』にも持ち込まれた。その意味でも、今回の展示/滞在制作は2021年のチャレンジがさらに展開、拡張して継続するものだと言える。
そんな『だいだらぼっちの毛づくろい』は、燃えてしまった以前のナミイタ=トタン小屋と同様、建てられてから数十年の時を経て、いまにも里山と竹林に飲み込まれそうなおんぼろの平屋=移転先のナミイタ内外を、山本さんがさまざまな自作で会期中も継続して「繕う」、ワーク・イン・プログレスなインスタレーションだ。『だいだらぼっち』は、イエティとは違って建物に重ねられるイメージではなく、グリム童話で夜な夜な靴を作る小人の若く、ハイパー・ナチュラルな支援者としてイメージされる。
【ドイツの小人さんは靴の修理屋さんを手伝ってくれるならば、日本の大きなだいたらぼっちさんはこの小屋を繕ってくれないかい。里山ならきっと来てくれる】
「繕い」は、四隅の壁一面をミニマルに埋め尽くす茶封筒や、天井板の隙間にみっしりと詰め込まれた輪切りのゴムホース等の形をとり、それはもちろん一般的なイメージの「修繕」を意味しないが、大工や内装工が用いる材料や道具のように、アーティストである彼女は物質と物質の関係性をユーモラスに変化させるの自分の作品で、土地と建物への象徴的なアクセス——慈しみの介入を行うのだ。
【これからここが息を吹き返しますように。とお願いするためのお祈りキット。里山の循環システムにマッチしないでもしてもいい。繕ものを見つけては手を動かします。】
そして、今回の「繕い」は、自身のオルター・エゴ(別人格)だと山本さんが言う、自転車のゴムチューブを使った臍の緒形の立体作品『ばとんさん』と来場者が共に滞在制作(の成果)へと立ち会う姿を写真に収めることで、協働の記憶/記録が残される。彼女の作品は観者が空間から発見し、出会う瞬間に価値が生まれるものだから、アーカイブには特別な意味が生じる。新しいナミイタで、是非、多くの人にその経験に立ち会って欲しい。
(ディレクター:東間嶺)
【アーティスト・プロフィール】
1980年東京都生まれ、在住。2008年ヘリット・リートフェルト・アカデミー陶芸学科卒業、2009年サンドヴェルグ・インスティテュート、ファインアート学科に一年滞在。 滞在制作型のプロジェクトに多数参加。共存体の関係性や繋がりの存在を、身近な素材や、幼いころにやっていたような単純な作業で、その場に少しの間定着させる事によって既にある風景を新しい繋がりの風景へと変化させる。現在は滞在制作脳を持ちながら東京に定住制作、子育てをしている。今年は都市型のグループ展「光の後始末」 (Sprout curation、東京)、里山での個展「だいたらぼっちの毛づくろい」(オルタナティブ掘っ立て小屋ナミイタ、神奈川)、移動美術館アート・トラックへと転移する。
近年の主な展覧会、企画
2021:『イエティのまつ毛』(オルタナティブ掘っ立て小屋『ナミイタ』、東京)
2022:『交わると、生れます』『レス・ザン・ネイチャー』(それぞれSprout Curation、CADAN、東京)
2025:『光の後始末』(Sprout Curation、東京)
* 超不定期滞在制作project《Nami Itaに、いた?いる!》
作家がナミイタ Nami Itaを不定期・長短期で来訪/滞在し、小屋の内外に作品をインストール/展示/パフォーマンスする連続企画。レジデンス未満のゆるい感覚で、場と作品、作品と作者、作者と場の新たな関係性を探ってゆく試みです。これまでにVol.01 山本麻世『イエティのまつ毛』(2021 年11 月1 ~ 12 月2 日)、vol.02 藤巻瞬『不完全な修復』(2022年1月14日~2月14日)、vol.03 前田梨那『去来するイメージ/往還する痕跡』(2022年4月29日~5月30日)、vol.04 金井聰和『鳥小屋マサラ--骨を探して--』(2022年8月5日~9月11日)、vol.05 蓮輪友子『THEATER』(2023年1月8日~2月6日)、vol.06 仁禮洋志『もうれんやっさ』(2023年2月10日~2月26日、3月17日~3月27日)、Vol.07 GEN『聖者』(2023年9月15日~10月16日)を実施。
| 作家・出演者 | 山本麻世 |
| 会場 | オルタナティブ掘っ立て小屋『ナミイタ Nami Ita』 |
| 住所 | 227-0031 神奈川県横浜市青葉区寺家町508 |
| アクセス | 柿生駅(小田急小田原線)北口からバス 柿22, 柿23(桐蔭学園行) 早野停留所から徒歩12分 青葉台駅(東急田園都市線)北口からバス 青30(寺家町方面) 寺家町停留所から徒歩3分 青31(鴨志田団地行) 団地中央停留所から徒歩12分 青28(桐蔭学園前行) 常盤橋停留所から徒歩16分 ※駐車場もございますが、数が数台に限られるため、事前にお問い合わせ下さい。 |
| 会期 | 2025/04/26(土) - 06/09(月) |
| 時間 | 12:30-20:00 |
| 休み | 火曜日から金曜日 ※ただし、5/11(日)は休み |
| 観覧料 | ドネーション 500円 ※インスタレーションに使用した素材の断片、展示ポストカード、ナミイナのオリジナル版画をまとめた返礼パック付き。 |
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