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蓮井元彦「アフターオール」 / Motohiko Hasui "after all"

TOTEM POLE PHOTO GALLERY

2024/12/03(火) - 08(日)

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母の癌が見つかってから一年と十ヶ月。
余命三ヶ月、長くて六ヶ月と医者に告げられてから母は懸命に生きた。

病気を受け入れ生きる事をやめてしまわないで、愛する骨董屋という仕事を続け、逝ってしまう二週間前まで愛車のオンボロ軽トラを乗り回し仕事を続けた。
そして動けなくなって初めて「病気には勝てないね」と病室で呟いたのを覚えている。その言葉は諦めというよりはむしろ「やるだけのことはやった」という風に僕には聞こえた。

何を成し遂げたかという事ではない ̶ 成し遂げようと生きることが大切だということを母の身をもって教えられた気がした。
もちろん、母が本当に何を感じ何を思っていたのかは僕には分からない。ものすごく怖かっただろう。ただ単に唯一の楽しみであった仕事を続けていきたかっただけだったのかもしれない。しかし、残された僕の身としては少なからずそこに意味を見出そうとしてしまった。そう思うこと以外に母を失った喪失感は和らがない気がしたのだ。そういう意味では母の写った写真や、そこに母が写っていなくとも母を想い撮られた写真を振り返ることも同じ事なのかもしれない。現時点で僕はその喪失感が一体僕に何を投げかけ、僕にどうしろというのか分からない。いつかその意味が分かる時が来るのか。そもそも、そこに意味はあるのか。

母が息絶えゆく時、それは今まで僕が見たことのある光景で例えて言うならば、青々とした草花が徐々に枯れていく様子に似ていると思った。
そして、母もまた生命だったのだと知った。

母は最期に僕にこう言った。「頑張れよ、楽しみにしてるよ」と。
それはとても力強い一言だった。


蓮井元彦 プロフィール
写真家。1983 年 山形県生まれ、東京都出身。2003 年渡英、Central Saint Martins Art and Design にてファウンデーションコースを履修した後、London College of Communicationにて写真を専攻。卒業後、2007 年帰国。以降、東京を拠点に活動する。2013 年、4 年間の日常生活を記録したスナップ写真からなる写真集『Personal Matters』をイギリスの出版社 Bemojake より出版する。その後、『Deep Blue ‒Serena Motola』などの私家版小冊子の発表を経て 2019 年、続編の『Personal Matters Volume II』(Bemojake)を出版。2020 年には写真集『for tomorrow』(Libro Arte)、2021 年には『写真はこころ』(Printed Union)、2023年に『VIATOR SWELL』(Libro Arte)を出版する。G20 大阪サミット 2019では、京都・東福寺で行われたティーセレモニーに際し制作された図録の撮影を手がける。

出典

作家・出演者蓮井元彦
会場TOTEM POLE PHOTO GALLERYとーてむ ぽーる ふぉと ぎゃらりー (トーテムポールフォトギャラリー)
住所
160-0004
東京都新宿区四谷4-22 第二富士川ビル 1F
アクセス
新宿御苑前駅(東京メトロ丸ノ内線)2出口 徒歩7分
曙橋駅(都営新宿線)A1出口 徒歩7分
新宿駅(JR)中央東口 徒歩19分
会期2024/12/03(火) - 08(日)
時間12:00-19:00
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