WAITINGROOM(東京)では、2024年9月14日(土)から10月20日(日)まで、藤倉麻子の当ギャラリーでは初めての個展『Sunlight Announcements / 日当たりの予告群』を開催いたします。藤倉は、都市・郊外を横断的に整備するインフラストラクチャーや、それらに付属する風景の奥行きに注目し、主に3DCGアニメーションの手法を用いて作品制作をおこなっているアーティストです。近年では、埋立地や物流への興味から自主企画した物流型展覧会「手前の崖のバンプール」(2022年、東京湾)や3DCG上で空き家を改修した「Fixing Garden」(大村高広と共同、2022年~)、青森県を舞台として後背地でのエネルギー生産の問題に取り組んだ「インパクト・トラッカー」(2023年、国際芸術センター青森)など、自身のフィクショナルな想像力と現実の社会構造が交差する点を探っていますが、自身にとって3年ぶりの個展となる本展では、本人の制作活動の根源にあり、一貫して作品に取り込まれてきた「日当たり(Sunlight)」と「予告(Announcements)」をテーマに、新作の映像作品や平面彫刻をインスタレーション空間の中に展開します。
作家・藤倉麻子について
1992年 埼玉県生まれ。2016年に東京外国語大学外国語学部南・西アジア課程ペルシア語専攻卒業。2018年に東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻修了。現代の都市に存在する原始的な呪術性を見出すことをテーマに、人工的なテクスチャと触覚性に注目したイメージを強調した3DCGアニメーションや、映像に登場するモチーフを現実世界に持ち込んだインスタレーション作品を主に制作しています。近年の展覧会に、2024年グループ展『日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション』(東京都現代美術館、東京)、2023年グループ展『都市にひそむミエナイモノ展 Invisible in the Neo City』(SusHi Tech Square、東京)、グループ展『MOTアニュアル2023 シナジー、創造と生成のあいだ』(東京都現代美術館、東京)、グループ展『エナジー・イン・ルーラル』(国際芸術センター青森(ACAC)、青森)、2022年グループ展『NMWA日本委員会主催展覧会 – New Worlds』(M5 Gallery、東京)、2021年個展『Paradice for Free』(CALM & PUNK GALLERY、東京)など。2025年に開催される、第19回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展の日本館展示「中立点—生成AIと未来」に、プロジェクトメンバーとして参加することが決定しています。主なパブリックコレクションは、高橋龍太郎コレクションやタグチ・アートコレクションなど。
アーティスト・ステートメント
予告は、日常のふとした瞬間に現れるもので、「日」と、日が照らす「地」、そしてそこに住み着く「生」のあいだにまたがる壁やモニュメントといった構築体(装置)を通して感知されます。例えば、外壁の日当たりとそれがつくる影は、私たちに明日また日が昇ることを確信させますが、同時にこの影は季節の移り変わりとともに少しずつずれていきます。観測者が日々何気なく出会う眺めは、太陽の周期と地球の周期のずれのような、巨大な宇宙像の直観にも接続しているのです。
予告を感知したときの「はてしなさ」こそが、私が制作の主題としてきたものです。はてしなさは、壁の裏の影に生える草や郊外のフェンスの網目のひとつ、街灯の足元のアスファルトと縁石の間に落ちている小石など、何気ない風景のなかに潜勢しています。
古代から世界各地では、水平な文字盤の中央に棒を立てたグノモン(Gnomon)をはじめとして、影を落とす装置が制作されてきました(これは南中の時刻を測る日時計であると同時に、太陽の高度を測定するための装置でもありました)。グノモンは、予告を地面にしるしづけ、固定します。「時間」をあらわす局所的な痕跡は、原初的な映像ではないかと私は考えています。
藤倉麻子(2024年8月)
よく見ることで世界とつながる、人間の心の回復と癒し
藤倉麻子は、駅周辺には均一化した住宅地が広がり、その先には延々と田畑が続いていて、その一見素朴な田園風景の中を巨大な高速道路が突き抜けているという、関東近郊・埼玉県の郊外で生まれ育ちました。そのどこまでも続く無機質な風景の広がりの中で、測り知れない大きさや重力を感じる構造物や機械を見ることに興味を覚えた藤倉は、ある時ふとその風景を砂漠のように感じたことがきっかけで、砂漠の中に突如そびえ立つ巨大な建造物や楽園へと自身の興味が広がっていったと言います。その後藤倉は、美術大学ではなく東京外国語大学に進学し、ペルシア語を専攻したという少し異色の経歴を持っています。大学在学中に学んだイスラム神秘主義思想の独特な「奥行き」の捉え方には大きな影響を受け、卒業後は東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻に進み、イスラム神秘主義や広大な風景への興味からくる内的なイメージを、3DCGで立ち上げることから制作をはじめました。
今回のテーマとなっている「日当たり」と「予告」は、藤倉が幼少期に周囲の風景のテクスチャを「凝視する」体験から紡ぎ出したテーマで、現在まで一貫して作品内に取り込まれてきた重要なファクターの一つです。現代社会の過剰な消費活動や、過ぎ去っていく情報やものに対して、自分がいる場所に留まって、建物にうつる影をただ凝視することや塀の表面を見続けることで、何か本質的なルールや動き、色やかたちを見出そうとしてきました。その「凝視作業」の中で、日当たりの中に影を見つけ、その影の長さが変化することによって太陽の高さを感知し、明日が来るという「予告」を見つけることができる。そうやって、日々の生活の中で、周りの景色をよく見ることで世界とつながる方法を見出し、「予告」を感知することでそれが人間の心の回復や癒しになるという作家自身の個人的な経験が、本展作品のベースになっています。本展覧会会場では、様々な「予告」の要素が表現された3つの彫刻作品(うち2つはレリーフ型平面彫刻)を空間内で見つけることができ、その彫刻に含まれたモチーフが大型ディスプレイに投影される新作映像の中に時折登場します。また、日当たりが予告される状況や日当たりの予告それ自体を概念化した模型の数々が、空間内のステージや壁面にインストールされます。藤倉が創造する様々な「日当たり」と「予告」のカタチを体験することによって、近代化以降走ることをやめずにひたすら進化を追い求めてきた人間の、心の回復と癒し、そして「言葉や時間、距離の先にあるコミュニケーション」をもたらす可能性のあるものを、共に模索できる機会となることを楽しみにしております。
作家・藤倉麻子について
1992年 埼玉県生まれ。2016年に東京外国語大学外国語学部南・西アジア課程ペルシア語専攻卒業。2018年に東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻修了。現代の都市に存在する原始的な呪術性を見出すことをテーマに、人工的なテクスチャと触覚性に注目したイメージを強調した3DCGアニメーションや、映像に登場するモチーフを現実世界に持ち込んだインスタレーション作品を主に制作しています。近年の展覧会に、2024年グループ展『日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション』(東京都現代美術館、東京)、2023年グループ展『都市にひそむミエナイモノ展 Invisible in the Neo City』(SusHi Tech Square、東京)、グループ展『MOTアニュアル2023 シナジー、創造と生成のあいだ』(東京都現代美術館、東京)、グループ展『エナジー・イン・ルーラル』(国際芸術センター青森(ACAC)、青森)、2022年グループ展『NMWA日本委員会主催展覧会 – New Worlds』(M5 Gallery、東京)、2021年個展『Paradice for Free』(CALM & PUNK GALLERY、東京)など。2025年に開催される、第19回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展の日本館展示「中立点—生成AIと未来」に、プロジェクトメンバーとして参加することが決定しています。主なパブリックコレクションは、高橋龍太郎コレクションやタグチ・アートコレクションなど。
アーティスト・ステートメント
予告は、日常のふとした瞬間に現れるもので、「日」と、日が照らす「地」、そしてそこに住み着く「生」のあいだにまたがる壁やモニュメントといった構築体(装置)を通して感知されます。例えば、外壁の日当たりとそれがつくる影は、私たちに明日また日が昇ることを確信させますが、同時にこの影は季節の移り変わりとともに少しずつずれていきます。観測者が日々何気なく出会う眺めは、太陽の周期と地球の周期のずれのような、巨大な宇宙像の直観にも接続しているのです。
予告を感知したときの「はてしなさ」こそが、私が制作の主題としてきたものです。はてしなさは、壁の裏の影に生える草や郊外のフェンスの網目のひとつ、街灯の足元のアスファルトと縁石の間に落ちている小石など、何気ない風景のなかに潜勢しています。
古代から世界各地では、水平な文字盤の中央に棒を立てたグノモン(Gnomon)をはじめとして、影を落とす装置が制作されてきました(これは南中の時刻を測る日時計であると同時に、太陽の高度を測定するための装置でもありました)。グノモンは、予告を地面にしるしづけ、固定します。「時間」をあらわす局所的な痕跡は、原初的な映像ではないかと私は考えています。
藤倉麻子(2024年8月)
よく見ることで世界とつながる、人間の心の回復と癒し
藤倉麻子は、駅周辺には均一化した住宅地が広がり、その先には延々と田畑が続いていて、その一見素朴な田園風景の中を巨大な高速道路が突き抜けているという、関東近郊・埼玉県の郊外で生まれ育ちました。そのどこまでも続く無機質な風景の広がりの中で、測り知れない大きさや重力を感じる構造物や機械を見ることに興味を覚えた藤倉は、ある時ふとその風景を砂漠のように感じたことがきっかけで、砂漠の中に突如そびえ立つ巨大な建造物や楽園へと自身の興味が広がっていったと言います。その後藤倉は、美術大学ではなく東京外国語大学に進学し、ペルシア語を専攻したという少し異色の経歴を持っています。大学在学中に学んだイスラム神秘主義思想の独特な「奥行き」の捉え方には大きな影響を受け、卒業後は東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻に進み、イスラム神秘主義や広大な風景への興味からくる内的なイメージを、3DCGで立ち上げることから制作をはじめました。
今回のテーマとなっている「日当たり」と「予告」は、藤倉が幼少期に周囲の風景のテクスチャを「凝視する」体験から紡ぎ出したテーマで、現在まで一貫して作品内に取り込まれてきた重要なファクターの一つです。現代社会の過剰な消費活動や、過ぎ去っていく情報やものに対して、自分がいる場所に留まって、建物にうつる影をただ凝視することや塀の表面を見続けることで、何か本質的なルールや動き、色やかたちを見出そうとしてきました。その「凝視作業」の中で、日当たりの中に影を見つけ、その影の長さが変化することによって太陽の高さを感知し、明日が来るという「予告」を見つけることができる。そうやって、日々の生活の中で、周りの景色をよく見ることで世界とつながる方法を見出し、「予告」を感知することでそれが人間の心の回復や癒しになるという作家自身の個人的な経験が、本展作品のベースになっています。本展覧会会場では、様々な「予告」の要素が表現された3つの彫刻作品(うち2つはレリーフ型平面彫刻)を空間内で見つけることができ、その彫刻に含まれたモチーフが大型ディスプレイに投影される新作映像の中に時折登場します。また、日当たりが予告される状況や日当たりの予告それ自体を概念化した模型の数々が、空間内のステージや壁面にインストールされます。藤倉が創造する様々な「日当たり」と「予告」のカタチを体験することによって、近代化以降走ることをやめずにひたすら進化を追い求めてきた人間の、心の回復と癒し、そして「言葉や時間、距離の先にあるコミュニケーション」をもたらす可能性のあるものを、共に模索できる機会となることを楽しみにしております。
作家・出演者 | 藤倉麻子 |
会場 | WAITINGROOM |
住所 | 112-0005 東京都文京区水道2-14-2 長島ビル 1F |
アクセス | 江戸川橋駅(東京メトロ有楽町線)4番出口 徒歩3分 神楽坂駅(東京メトロ東西線)1番出口 徒歩10分 |
会期 | 2024/09/14(土) - 10/20(日) |
時間 | 12:00-19:00 ※日曜日は17:00まで開廊 |
休み | 月曜日、火曜日、9/22(日) |
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