Padograph パドグラフ 파도그래프

VOCA展2023 現代美術の展望─新しい平面の作家たち─

上野の森美術館

2023/03/16(木) - 30(木)

MAP
SHARE
Facebook share button
展覧会ポスター画像
展覧会ポスター画像
The Vision of Contemporary Artの頭文字をとってVOCA(ヴォーカ)展と呼ばれる本展は、全国の美術館学芸員、研究者などに40歳以下の若手作家の推薦を依頼し、その作家が平面作品の新作を出品するという方法により、毎年全国各地から未知の優れた才能を紹介している現代美術展です。
今開催で30回目となる「VOCA展」は、平面美術の領域で国際的にも通用するような将来性のある若い作家の支援を目的に1994年より毎年開催し、これまでに延べ1013名(組)の作家が出展。
ここから大きな躍進を遂げる作家を多く輩出しています。
今年も「平面」の可能性を追求した多様な作品をご紹介いたします。


選考所感
家村珠代 (選考委員長/多摩美術大学教授)
今年のVOCA賞は、2年連続で絵画作品の受賞となった。とはいえ、「作品の厚さは、壁から20cm以内」という出品規定を駆使した半立体作品が今年も多数を占めた。印象的だったのは、熊膠をもちい山と熊を描いたVOCA賞の永沢碧衣、セラミック、ドローイング、詩を並列することで歩きながらの思索の体験を作品化した奨励賞のエレナ・トゥタッチコワ、石膏を素材に波の運動を引搔きや刻み込みにより表出した、同じく奨励賞となった七搦綾乃の彫刻ともドローイングともいえるような作品など、素材や表現方法は異なるものの、自然のフィールドワークから世界との関係性をきり結ぼうとする秀逸な作品が見られたことであった。

荒木夏実 (東京藝術大学准教授)
VOCAの審査はいつも心が揺れる。作品の力を十分に発揮できている作家は誰か。巧みさだけではなくそれを突き破る新たな方向にチャレンジしているだろうか。審査員一人一人が作品を熟視した上で意見を交わし、さらに展示会場に戻って作品数を絞るという手順を繰り返す。見る、考える、他者と意見を交わす。自分自身の目と思考が試される。このプロセス自体がアートという行為ではないかと思う。苦しくも楽しい審査の時間を経て選ばれた受賞作品は、いずれも今後の発展が大いに期待できる潜在力に溢れたものだと感じている。

植松由佳 (国立国際美術館学芸課長)
今回も平面ではあるが多様な表現による作品が多く、難しい審査であった。それでもVOCA賞他の受賞作品はいずれも選考当初より選考委員からの評価を集めていたように思う。私たち人間と自然とのあり様を東北の山野に分け入りながら熊をモチーフに表現したVOCA賞受賞の永沢碧衣、また奨励賞受賞のフィードワールド的な行為を経て陶芸という自らの痕跡を作品に示したエレナ・トゥタッチコワ、彫刻という技法を根幹に平面的な表現を探究した七搦綾乃は、特に印象に残った。

川浪千鶴 (インディペンデント・キュレーター)
コロナ禍が促した内省の反動なのか、思考停止気味で性急な言動が目につく昨今。しかし本展受賞者たちは、自分の身体と感覚を手放すことなく思索を深め、揺れ動きながら世界に開く行為を丁寧に積み重ねている。狩られた熊を主題と画材に、時空を超えた循環を紐解く永沢碧衣。彫刻と絵画のあわいを共振させる七搦綾乃。陶土を扱う手と心の動きを繊細にシンクロさせたエレナ・トゥタッチコワ。彼女たちの作品の余韻は深く長い。

前山裕司 (新潟市美術館館長)
VOCA展の副題は「新しい平面の作家たち」である。今年はその「平面」の多様性を感じる審査だった。それは受賞作を見ればわかる。陶や衣服が、厚さ20cmという応募条件を活かした作品であるのは言うまでもない。だが、絵画的な作品も実は一筋縄ではいかない。制作の背景に類例のないアプローチがあるもの。考え抜かれた彫刻的な手法による平面。いまその答えを明かすような愚かしいことはしない。作品に向き合い、技法・素材、解説を確認していただきたい。


主催
「VOCA展」実行委員会/(公財)日本美術協会 上野の森美術館

特別協賛
第一生命保険株式会社

選考委員
家村 珠代(選考委員長/多摩美術大学教授)
荒木 夏実(東京藝術大学准教授)
植松 由佳(国立国際美術館学芸課長)
川浪 千鶴(インディペンデント・キュレーター)
前山 裕司(新潟市美術館館長)

出典

作家・出演者赤羽史亮, 天野祐子, 岩名泰岳, 上野友幸, 上野洋嗣, 内田聖良, 遠藤美香, 菊池聡太朗, 北上奈生子, 木谷優太, 金藤みなみ, 黒山真央, 源馬菜穂, 興梠優護, 小林知世, 小宮太郎, 地主麻衣子, 田中藍衣, 田中秀介, 築山弘毅, 都築崇広, エレナ・トゥタッチコワ, 永沢碧衣, 中村愛子, 七搦綾乃, 畑山太志, 宮内由梨, 横山奈美, Ryu Ika
会場上野の森美術館うえの の もり びじゅつかん (The Ueno Royal Museum, 우에노의 숲 미술관, 上野之森美术馆, 上野之森美術館)
住所
110-0007
東京都台東区上野公園1-2
アクセス
上野駅(JR)公園口 徒歩3分
上野駅(東京メトロ・京成電鉄) 徒歩5分
会期2023/03/16(木) - 30(木)
時間10:00-17:00
※入場は閉館30分前まで
観覧料一般 800円
大学生 400円
高校生以下 無料
※学生の方は、学生証・生徒手帳をご提示ください
※障害者手帳をお持ちの方と付添の方1名は無料 (要証明)
SNS
    ウェブサイト