飯島剛哉 インスタレーション/リレーショナル・パフォーマンス『生ハムの光(廃墟に小屋)/アイ アム アルミマン(Burnt Down)』
オルタナティブ掘っ立て小屋『ナミイタ Nami Ita』
2024/03/18(月) - 31(日)
オルタナティブ掘っ立て小屋『ナミイタ-Nami Ita』は、2024年最初の特別企画として、飯島剛哉によるインスタレーション『生ハムの光(廃墟に小屋)』、リレーショナル・パフォーマンス『アイ アム アルミマン(Burnt Down)』を開催/報告します。非常に変則的な開催状況になっていますので、事情を以下、ご説明致します。
年明けに公開しましたプレスリリース(リンクをご参照下さい)の通り、『ナミイタ』と、ナミイタが所在するシェア・スタジオ『アトリエ・トリゴヤ』は、2023年12月29日朝に隣地で発生した失火の延焼によって全半焼の被害を受け、現在も大量に発生した被災物、焼損瓦礫の整理が進行中です。(その進捗経過は各種SNS、noteによる報告記事連載『Burnt Down』他にて公開、発表しております)
【罹災のご報告】 https://note.com/namiita_2036/n/nc04cff4fcae9
活動停止直前のBゼミで美術を学び、現在は別府を拠点に各地と往復生活をする飯島はもともと1月から3月まで上記2つのインスタレーション/滞在型パフォーマンスをナミイタで行う予定でしたが、衝撃的なアクシデントの発生によって通常の開催は不可能になりました。
殆どの場合、その段階で中止や延期の決断に至るものですが、飯島とナミイタで協議を行った結果、アーティストとして状況に対応したアクションを起こしたいという飯島の意向もあり、イレギュラーな形での実施/再開を行うことになりました。
『アイ アム アルミマン(Burnt Down)』は、火災発生直後から現場に駆け付けた飯島が、それ以降、ナミイタの代表、トリゴヤのメンバー、ボランティアたちと共に『アルミマン』として協働した瓦礫撤去作業をリレーショナル・アート/パフォーマンスと捉えてその記録を発表するもので、『生ハムの光(廃墟に小屋)』は、その協働の過程で拾い集めた瓦礫の端材、メンバーたちの過去作品を転用して作った「小屋」を中心にする体験型インスタレーション作品です。
瓦礫撤去や建物の解体作業は危険を伴うため、『アイ アム アルミマン(Burnt Down)』は一定期間継続してSNS上で公開される活動記録、『生ハムの光(廃墟に小屋)』と三月中の土日に限定した公開となります。
罹災で全半焼した土地とシェア・スタジオ、オルタナティ・スペースを会場にしたそれらの試みはこれから先、二度と再現できない異様で奇妙なものですし、同場所でのナミイタ最後の展示でもあります。極めて短期間かつ変則的な開催/記録公開ですが、いらっしゃれる方は是非、目撃しに来て頂ければと存じます。
ーーーーーー
飯島剛哉 インスタレーション/リレーショナル・パフォーマンス
『生ハムの光(廃墟に小屋)/アイ アム アルミマン(Burnt Down)』
■ 会期:2024年3月18日(月)→3月31日(日)
※ 土日以外は予約の問い合わせがあった日のみオープン。
■ 時間:12時30分→日没まで。
■ 会場:オルタナティブ掘っ立て小屋『ナミイタ Nami Ita』跡地。
東京都町田市三輪町2036
徒歩=小田急線鶴川駅より徒歩約15分。バス=鶴川駅前3番乗り場より「奈良北団地」or「三菱ケミカル前」行き。それぞれ『三輪入口』下車。バスを降り、目の前の坂を下りたすぐ右手の広場に建つ赤い掘っ立て小屋の奥。トタン屋根の上に被さる古木が目印。所在場所の地図は下部QRコードをご参照下さい。
■ 入場:無料
■ 企画:東間嶺(TEL:090-1823-7330)
■ 協力:アトリエ・トリゴヤ、作庭工房
■ お問い合わせ:
TEL: 090-1823-7330
Mail: [email protected](ナミイタ代表)
■ SNS:Twitter&FB→@Namiita2036 | Instagram→@tinshacknamiita
■ プレスリリースPDF
https://drive.google.com/file/d/1-pJiV_hRgfAnrS2HsXY9VMXfU36BeGK2/view?fbclid=IwAR1NTsJPhUJhK4wX3f9mpcRUb2mwJkuhaxUyBeZbqI2LR2o38gNpMZZkLfc
ーーー
【アーティスト・プロフィール】
1976 年神奈川生まれ。2004年にBゼミを修了。2015年清島アパート入居。
主な個展に「昇天」(blanclass、神奈川、2019)があり、主なグループ展に「大里アートプロジェクト」(福岡、2023)、「絵画旅行」(なかお画廊、熊本、2023)、「Kawashiri Alternative Art Fare」(熊本、2022)、「ARTS WORKS FAIR in BEPPU」(ドマコモンズ、大分、2022)、「始末をかく」(BuoY、東京、2018)、「3331 Art Fair」(アーツ千代田、東京、2017)がある。他に、主な受賞歴として「kitokito 環境芸術祭」(2013)での大賞がある。
【アーティスト・ステイトメント】
もともと、屋外での作業の時に着るヤッケにアルミテープを貼っていた。今回は、途中で東間さんと話してツナギに変えてみた。 ツナギの布地は、ヤッケのポリエステル地のツルツルした表面よりアルミテープの付きが良いと思う。
とはいえ、ツナギに変えて二日目になるが、関節部分はやっぱりアルミが剥がれる。アルミマンとはなんなのか。アルミマンはアルミである。ヤッケやツナギは支持体だ。それは、黒子にアルミテープを貼っている状態と同じと言える。人の形をしたがらんどうのものが、ふよふよ動いていると思って欲しい。なので、たとえ支持体からアルミがぽろぽろ落ちて、一片だけが張り付いていたとしても、それはアルミマンなのである。常に変形して、決まった形を持たないアルミマンは、生まれた瞬間から消滅する運命にあるのだ。
誰かがアルミマンを宇宙人と呼んだ。おかしいぞ、宇宙人とはスーパーマンであったはずではないか?アルミマンはすぐ壊れるぞ。確かに、捉えられて次の日にはドロドロに溶けてしまった宇宙人もいたような気がする。宇宙人は、宇宙船でやってきて、髪を金髪にして逆立てて、星を一つ吹き飛ばしてしまうくらい強い存在であったはずだ。そして歳をとらない。火事で燃えたトリゴヤを片付けていると30年前、40年前の作品が出てくる。金属で出来ていて、溶接をしていて、とにかく硬くて、重くて、大きい。そして、おおよそ不滅。それらはまさに、宇宙人ではないか。人は宇宙人に憧れている。12月29日の大火事でも焼き尽くすことができなかった手負の宇宙人は、呻き声をあげてのたうちまわっている。アルミマンは吸血鬼に杭を打ち込むように、作品たちに巨大なバールを突き立てて鉄屑屋に葬り去るのだ。巨大な宇宙人に対抗するために、人間が作ったのは、合体し変形する超合金ロボットである。トリゴヤが始まった1980年と同じ年に、スーパー戦隊シリーズで初めて変形ロボットが登場する。電子戦隊デンジマンのダイデンジンだ。切断し、溶接し、組み立てる。会場のギャラリーで再び組み立て、合体する彫刻作品は、まさにデンジマンたちの愛機、ダイデンジンと言えよう。アルミマンは、時空を超えて、世の果てにひっそりと収納され、火事によって再び出現したダイデンジンを葬るために現れたのだ。燃えない作品はただの鉄だ。超合金、不滅、永遠という幻想を打ち破るためにアルミマンは今日も片付ける。がんばれアルミマン! みんな火事には気をつけて!!
ーー飯島剛哉
【ディレクターズ・ノート】
「燃えている小屋と、並んでそれを眺めている人たちを見て、発表を終えた作品を保存しておくって一体何なんだろう、どういう意味があるんだろうと、考えちゃったんですよ。やはり、作品は消滅すべきなんじゃないだろうかと」
2023年12月29日の正午過ぎ。焼け焦げたトリゴヤ/ナミイタを前に唖然としながら立ち尽くすわたしたちを見て、事態を知らされ、同じ様に駆けつけてきたばかりの飯島さんはそう思ったのだという。坂の下に広がる敷地では十数人の消防隊員たちによる消火と鎮火確認の作業が慌ただしく続き、何人かの警察官が現場検証のために阻止線のテープを張っていた。騒然とした雰囲気に包まれた周囲にはまだ、さまざまな建材や金属が焼け焦げたにおいが生々しく立ち昇っていた。
ナミイタでは、この1月から2月にかけて、飯島さんがインスタレーション展示と滞在パフォーマンスを行う企画を開催する予定だった。タイトルは『生ハムの光(冬、ナミイタで)』/『アイ アム アルミマン』。
前者はジェームズ・タレルも真っ青(?)な、遮光した空間の一部を切り抜き、そこにはめ込んだアクリルを「生ハム」で覆って観者が「生ハムを透過した光=生ハムの光」に包まれる空間インスタレーションであり、これまで幾度か場所を変えて展示を行っていた。
後者はもともと飯島さんが岸井大輔の戯曲へ出演するために作った、「衣装」(核汚染に対応した防護服をイメージしている)を身に纏う『アルミマン』となって、「生ハムの光」が差し込むギャラリー部分を含むナミイタ内外を彷徨い続け、来場者とコミュニケーションしたりしなかったりする滞在型のパフォーマンス。こちらも、一昨年の夏にKOURYOUが主宰するアート・コレクティブ『EBUNE』の企画展『EBUNE 大阪・西成漂着』で衣装のみが展示されており、『生ハムの光(冬、ナミイタで)』/『アイ アム アルミマン』は、両者を組み合わせたユニークな企画になる予定だった。
けれども、冒頭に記した通り、ナミイタは2023年12月29日に、隣地の『作庭工房』から出た大規模な失火に巻き込まれ、ナミイタが入るシェア・スタジオ(アトリエ・トリゴヤ)もろとも全焼してしまった。このテキストを書いている2月8日現在も、トリゴヤのメンバーとわたし、ときおり駆けつけてくれるボランティアの方々などで、トリゴヤがオープンしてから43年に渡って堆積してきた時間(=資材、資料、作品、ゴミなどが混在した焼損瓦礫)の片付けに追われているのだが、飯島さんは、当初から『アルミマン』として、そこに加わってくれている。
『アルミマン』とは、外形的には特定の条件を備えた「衣装」(=アルミテープを隙間なく巻きつけた衣服)を身にまとった人間を指す。発案者たる飯島さんは帽子を含む一体型のツナギを用いているが、アルミテープと衣服さえあれば誰でも『アルミマン』になる/変身することができる。
『EBUNE』での展示に際して、飯島さんは「君もなれるさ、アルミマンに!」とSNS上で発言していたが、火災の跡地で『アルミマン』に「変身」した彼は、日々、その場で「パフォーマンス/協働としての片付け」を行っている。焼け跡の中で銀色に輝く「衣装」を身につけた彼の行為は、本来行うはずだったパフォーマンスを火災というアクシデントを受けて変化させたものであり、本企画『アイ アム アルミマン(Burnt Down)』は、その過程ーーアトリエ・トリゴヤのメンバー、わたし、ボランティア参加希望者との協働ーーを記録するリレーショナル・アート作品なのである。
そのような文脈性を持った瓦礫の片付けに関して、飯島さんはステイトメントでさらに以下のように不穏なことを記してもいる。
ーー火事で燃えたトリゴヤを片付けていると30年前、40年前の作品が出てくる。金属で出来ていて、溶接をしていて、とにかく硬くて、重くて、大きい。そして、おおよそ不滅。それらはまさに、宇宙人ではないか。人は宇宙人に憧れている。12月29日の大火事でも焼き尽くすことができなかった手負の宇宙人は、呻き声をあげてのたうちまわっている。アルミマンは吸血鬼に杭を打ち込むように、作品たちに巨大なバールを突き立てて鉄屑屋に葬り去るのだ。
ーーアルミマンは、時空を超えて、世の果てにひっそりと収納され、火事によって再び出現したダイデンジンを葬るために現れたのだ。燃えない作品はただの鉄だ。超合金、不滅、永遠という幻想を打ち破るためにアルミマンは今日も片付ける。
焼け跡に呼び出された『アルミマン』のミッション=飯島さんのボランティア/パフォーマンスは、トリゴヤ・メンバーたちが制作した、火災で損傷し、焼け焦げた旧作群……宇宙人や超合金ロボットになぞらえたそれら何十年も保管されてきたモノたちを作家たちと協働して「葬り去る」ことなのだ。
2000年代にBゼミで原口典之や眞島竜男からコンセプチュアル・アートを学び、ここ十年ほどは別府を拠点に各地へ活動を広げる飯島さんは、ワークショップやパフォーマンスを中心にした、美術作品の物質性、永続性に囚われないユニークなプロジェクトを、サイト(土地)の環境や状況にあわせて展開してきた。
モノとしての作品を殆ど残さない彼からすれば、43年超の時間が生み出した無数の既/未発表作品が地層のように埋もれるシェア・スタジオとその焼け跡は、さながらインディペンデントな美術の共同墳墓であろう。昨今、墓石も墓も、遺された者たちには重すぎると言われるようになってきた。省略化、簡素化で、地面に埋める(樹木葬)場所さえいらぬと、散骨に進む流れも強まっている。美術においても、作品の永遠不滅を前提にするような態度(=美術館でのコレクションが作家のゴールであるかのような世界観)を改める時期に入りつつあるのかもしれない。暴かれた墓は作り直し、埋め戻すのではなく、整理、解体し、更地にするのが弔いなのかもしれない。少なくとも、飯島さん、いや『アルミマン』はそう思っているようだ。
——超合金、不滅、永遠という幻想を打ち破るためにアルミマンは今日も片付ける
半壊した建屋の瓦礫撤去と解体整理は、このテキストが書かれているあいだも着々と進行している。被災したトリゴヤ/ナミイタの瓦礫撤去と再建がどのような結末/方向性を迎えるのかは、まだ分からない。『アルミマン』の活躍と共に、皆様に見守って頂ければ幸いである。
(『生ハムの光(廃墟に小屋)』のための追記)
上記のテキストが書かれてから少し経ち、瓦礫の片付けが終盤に差し掛かる時期、飯島さんは『アルミマン』として、わずかな間だけ焼け跡に『生ハムの光』を、本来のプランとは違う形で発生させることを決意した。どうやって?答えはシンプル。廃墟に小屋、である。
使用したのは撤去作業に伴って大量に発生したベニヤや垂木の残材、トリゴヤ・メンバーのかつて作品だったものの一部で、様々なスクラップからかりそめに組み上げた奇妙な「小屋」に僅かな開口部を作り、内側から水飴を使って生ハムを貼りつけるのだ。まさに焼け跡DIY。
日没までのあいだ小屋の中を満たすその『生ハムの光』は、どこに現れる場合でも永遠性が全く存在しない、すぐに失われる仮設的性質を持つものなのだが、現在のナミイタ跡地に建った小屋の中に満ちる「光」は、廃墟に降り注ぎ、通り抜けた光の「生ハム変換」であり、同じ光を浴びる体験は恐らく二度とできないだろう。
鑑賞条件は厳しいが、目撃を望む方は足を運んでください。
ーー東間嶺(代表、ディレクター)
年明けに公開しましたプレスリリース(リンクをご参照下さい)の通り、『ナミイタ』と、ナミイタが所在するシェア・スタジオ『アトリエ・トリゴヤ』は、2023年12月29日朝に隣地で発生した失火の延焼によって全半焼の被害を受け、現在も大量に発生した被災物、焼損瓦礫の整理が進行中です。(その進捗経過は各種SNS、noteによる報告記事連載『Burnt Down』他にて公開、発表しております)
【罹災のご報告】 https://note.com/namiita_2036/n/nc04cff4fcae9
活動停止直前のBゼミで美術を学び、現在は別府を拠点に各地と往復生活をする飯島はもともと1月から3月まで上記2つのインスタレーション/滞在型パフォーマンスをナミイタで行う予定でしたが、衝撃的なアクシデントの発生によって通常の開催は不可能になりました。
殆どの場合、その段階で中止や延期の決断に至るものですが、飯島とナミイタで協議を行った結果、アーティストとして状況に対応したアクションを起こしたいという飯島の意向もあり、イレギュラーな形での実施/再開を行うことになりました。
『アイ アム アルミマン(Burnt Down)』は、火災発生直後から現場に駆け付けた飯島が、それ以降、ナミイタの代表、トリゴヤのメンバー、ボランティアたちと共に『アルミマン』として協働した瓦礫撤去作業をリレーショナル・アート/パフォーマンスと捉えてその記録を発表するもので、『生ハムの光(廃墟に小屋)』は、その協働の過程で拾い集めた瓦礫の端材、メンバーたちの過去作品を転用して作った「小屋」を中心にする体験型インスタレーション作品です。
瓦礫撤去や建物の解体作業は危険を伴うため、『アイ アム アルミマン(Burnt Down)』は一定期間継続してSNS上で公開される活動記録、『生ハムの光(廃墟に小屋)』と三月中の土日に限定した公開となります。
罹災で全半焼した土地とシェア・スタジオ、オルタナティ・スペースを会場にしたそれらの試みはこれから先、二度と再現できない異様で奇妙なものですし、同場所でのナミイタ最後の展示でもあります。極めて短期間かつ変則的な開催/記録公開ですが、いらっしゃれる方は是非、目撃しに来て頂ければと存じます。
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飯島剛哉 インスタレーション/リレーショナル・パフォーマンス
『生ハムの光(廃墟に小屋)/アイ アム アルミマン(Burnt Down)』
■ 会期:2024年3月18日(月)→3月31日(日)
※ 土日以外は予約の問い合わせがあった日のみオープン。
■ 時間:12時30分→日没まで。
■ 会場:オルタナティブ掘っ立て小屋『ナミイタ Nami Ita』跡地。
東京都町田市三輪町2036
徒歩=小田急線鶴川駅より徒歩約15分。バス=鶴川駅前3番乗り場より「奈良北団地」or「三菱ケミカル前」行き。それぞれ『三輪入口』下車。バスを降り、目の前の坂を下りたすぐ右手の広場に建つ赤い掘っ立て小屋の奥。トタン屋根の上に被さる古木が目印。所在場所の地図は下部QRコードをご参照下さい。
■ 入場:無料
■ 企画:東間嶺(TEL:090-1823-7330)
■ 協力:アトリエ・トリゴヤ、作庭工房
■ お問い合わせ:
TEL: 090-1823-7330
Mail: [email protected](ナミイタ代表)
■ SNS:Twitter&FB→@Namiita2036 | Instagram→@tinshacknamiita
■ プレスリリースPDF
https://drive.google.com/file/d/1-pJiV_hRgfAnrS2HsXY9VMXfU36BeGK2/view?fbclid=IwAR1NTsJPhUJhK4wX3f9mpcRUb2mwJkuhaxUyBeZbqI2LR2o38gNpMZZkLfc
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【アーティスト・プロフィール】
1976 年神奈川生まれ。2004年にBゼミを修了。2015年清島アパート入居。
主な個展に「昇天」(blanclass、神奈川、2019)があり、主なグループ展に「大里アートプロジェクト」(福岡、2023)、「絵画旅行」(なかお画廊、熊本、2023)、「Kawashiri Alternative Art Fare」(熊本、2022)、「ARTS WORKS FAIR in BEPPU」(ドマコモンズ、大分、2022)、「始末をかく」(BuoY、東京、2018)、「3331 Art Fair」(アーツ千代田、東京、2017)がある。他に、主な受賞歴として「kitokito 環境芸術祭」(2013)での大賞がある。
【アーティスト・ステイトメント】
もともと、屋外での作業の時に着るヤッケにアルミテープを貼っていた。今回は、途中で東間さんと話してツナギに変えてみた。 ツナギの布地は、ヤッケのポリエステル地のツルツルした表面よりアルミテープの付きが良いと思う。
とはいえ、ツナギに変えて二日目になるが、関節部分はやっぱりアルミが剥がれる。アルミマンとはなんなのか。アルミマンはアルミである。ヤッケやツナギは支持体だ。それは、黒子にアルミテープを貼っている状態と同じと言える。人の形をしたがらんどうのものが、ふよふよ動いていると思って欲しい。なので、たとえ支持体からアルミがぽろぽろ落ちて、一片だけが張り付いていたとしても、それはアルミマンなのである。常に変形して、決まった形を持たないアルミマンは、生まれた瞬間から消滅する運命にあるのだ。
誰かがアルミマンを宇宙人と呼んだ。おかしいぞ、宇宙人とはスーパーマンであったはずではないか?アルミマンはすぐ壊れるぞ。確かに、捉えられて次の日にはドロドロに溶けてしまった宇宙人もいたような気がする。宇宙人は、宇宙船でやってきて、髪を金髪にして逆立てて、星を一つ吹き飛ばしてしまうくらい強い存在であったはずだ。そして歳をとらない。火事で燃えたトリゴヤを片付けていると30年前、40年前の作品が出てくる。金属で出来ていて、溶接をしていて、とにかく硬くて、重くて、大きい。そして、おおよそ不滅。それらはまさに、宇宙人ではないか。人は宇宙人に憧れている。12月29日の大火事でも焼き尽くすことができなかった手負の宇宙人は、呻き声をあげてのたうちまわっている。アルミマンは吸血鬼に杭を打ち込むように、作品たちに巨大なバールを突き立てて鉄屑屋に葬り去るのだ。巨大な宇宙人に対抗するために、人間が作ったのは、合体し変形する超合金ロボットである。トリゴヤが始まった1980年と同じ年に、スーパー戦隊シリーズで初めて変形ロボットが登場する。電子戦隊デンジマンのダイデンジンだ。切断し、溶接し、組み立てる。会場のギャラリーで再び組み立て、合体する彫刻作品は、まさにデンジマンたちの愛機、ダイデンジンと言えよう。アルミマンは、時空を超えて、世の果てにひっそりと収納され、火事によって再び出現したダイデンジンを葬るために現れたのだ。燃えない作品はただの鉄だ。超合金、不滅、永遠という幻想を打ち破るためにアルミマンは今日も片付ける。がんばれアルミマン! みんな火事には気をつけて!!
ーー飯島剛哉
【ディレクターズ・ノート】
「燃えている小屋と、並んでそれを眺めている人たちを見て、発表を終えた作品を保存しておくって一体何なんだろう、どういう意味があるんだろうと、考えちゃったんですよ。やはり、作品は消滅すべきなんじゃないだろうかと」
2023年12月29日の正午過ぎ。焼け焦げたトリゴヤ/ナミイタを前に唖然としながら立ち尽くすわたしたちを見て、事態を知らされ、同じ様に駆けつけてきたばかりの飯島さんはそう思ったのだという。坂の下に広がる敷地では十数人の消防隊員たちによる消火と鎮火確認の作業が慌ただしく続き、何人かの警察官が現場検証のために阻止線のテープを張っていた。騒然とした雰囲気に包まれた周囲にはまだ、さまざまな建材や金属が焼け焦げたにおいが生々しく立ち昇っていた。
ナミイタでは、この1月から2月にかけて、飯島さんがインスタレーション展示と滞在パフォーマンスを行う企画を開催する予定だった。タイトルは『生ハムの光(冬、ナミイタで)』/『アイ アム アルミマン』。
前者はジェームズ・タレルも真っ青(?)な、遮光した空間の一部を切り抜き、そこにはめ込んだアクリルを「生ハム」で覆って観者が「生ハムを透過した光=生ハムの光」に包まれる空間インスタレーションであり、これまで幾度か場所を変えて展示を行っていた。
後者はもともと飯島さんが岸井大輔の戯曲へ出演するために作った、「衣装」(核汚染に対応した防護服をイメージしている)を身に纏う『アルミマン』となって、「生ハムの光」が差し込むギャラリー部分を含むナミイタ内外を彷徨い続け、来場者とコミュニケーションしたりしなかったりする滞在型のパフォーマンス。こちらも、一昨年の夏にKOURYOUが主宰するアート・コレクティブ『EBUNE』の企画展『EBUNE 大阪・西成漂着』で衣装のみが展示されており、『生ハムの光(冬、ナミイタで)』/『アイ アム アルミマン』は、両者を組み合わせたユニークな企画になる予定だった。
けれども、冒頭に記した通り、ナミイタは2023年12月29日に、隣地の『作庭工房』から出た大規模な失火に巻き込まれ、ナミイタが入るシェア・スタジオ(アトリエ・トリゴヤ)もろとも全焼してしまった。このテキストを書いている2月8日現在も、トリゴヤのメンバーとわたし、ときおり駆けつけてくれるボランティアの方々などで、トリゴヤがオープンしてから43年に渡って堆積してきた時間(=資材、資料、作品、ゴミなどが混在した焼損瓦礫)の片付けに追われているのだが、飯島さんは、当初から『アルミマン』として、そこに加わってくれている。
『アルミマン』とは、外形的には特定の条件を備えた「衣装」(=アルミテープを隙間なく巻きつけた衣服)を身にまとった人間を指す。発案者たる飯島さんは帽子を含む一体型のツナギを用いているが、アルミテープと衣服さえあれば誰でも『アルミマン』になる/変身することができる。
『EBUNE』での展示に際して、飯島さんは「君もなれるさ、アルミマンに!」とSNS上で発言していたが、火災の跡地で『アルミマン』に「変身」した彼は、日々、その場で「パフォーマンス/協働としての片付け」を行っている。焼け跡の中で銀色に輝く「衣装」を身につけた彼の行為は、本来行うはずだったパフォーマンスを火災というアクシデントを受けて変化させたものであり、本企画『アイ アム アルミマン(Burnt Down)』は、その過程ーーアトリエ・トリゴヤのメンバー、わたし、ボランティア参加希望者との協働ーーを記録するリレーショナル・アート作品なのである。
そのような文脈性を持った瓦礫の片付けに関して、飯島さんはステイトメントでさらに以下のように不穏なことを記してもいる。
ーー火事で燃えたトリゴヤを片付けていると30年前、40年前の作品が出てくる。金属で出来ていて、溶接をしていて、とにかく硬くて、重くて、大きい。そして、おおよそ不滅。それらはまさに、宇宙人ではないか。人は宇宙人に憧れている。12月29日の大火事でも焼き尽くすことができなかった手負の宇宙人は、呻き声をあげてのたうちまわっている。アルミマンは吸血鬼に杭を打ち込むように、作品たちに巨大なバールを突き立てて鉄屑屋に葬り去るのだ。
ーーアルミマンは、時空を超えて、世の果てにひっそりと収納され、火事によって再び出現したダイデンジンを葬るために現れたのだ。燃えない作品はただの鉄だ。超合金、不滅、永遠という幻想を打ち破るためにアルミマンは今日も片付ける。
焼け跡に呼び出された『アルミマン』のミッション=飯島さんのボランティア/パフォーマンスは、トリゴヤ・メンバーたちが制作した、火災で損傷し、焼け焦げた旧作群……宇宙人や超合金ロボットになぞらえたそれら何十年も保管されてきたモノたちを作家たちと協働して「葬り去る」ことなのだ。
2000年代にBゼミで原口典之や眞島竜男からコンセプチュアル・アートを学び、ここ十年ほどは別府を拠点に各地へ活動を広げる飯島さんは、ワークショップやパフォーマンスを中心にした、美術作品の物質性、永続性に囚われないユニークなプロジェクトを、サイト(土地)の環境や状況にあわせて展開してきた。
モノとしての作品を殆ど残さない彼からすれば、43年超の時間が生み出した無数の既/未発表作品が地層のように埋もれるシェア・スタジオとその焼け跡は、さながらインディペンデントな美術の共同墳墓であろう。昨今、墓石も墓も、遺された者たちには重すぎると言われるようになってきた。省略化、簡素化で、地面に埋める(樹木葬)場所さえいらぬと、散骨に進む流れも強まっている。美術においても、作品の永遠不滅を前提にするような態度(=美術館でのコレクションが作家のゴールであるかのような世界観)を改める時期に入りつつあるのかもしれない。暴かれた墓は作り直し、埋め戻すのではなく、整理、解体し、更地にするのが弔いなのかもしれない。少なくとも、飯島さん、いや『アルミマン』はそう思っているようだ。
——超合金、不滅、永遠という幻想を打ち破るためにアルミマンは今日も片付ける
半壊した建屋の瓦礫撤去と解体整理は、このテキストが書かれているあいだも着々と進行している。被災したトリゴヤ/ナミイタの瓦礫撤去と再建がどのような結末/方向性を迎えるのかは、まだ分からない。『アルミマン』の活躍と共に、皆様に見守って頂ければ幸いである。
(『生ハムの光(廃墟に小屋)』のための追記)
上記のテキストが書かれてから少し経ち、瓦礫の片付けが終盤に差し掛かる時期、飯島さんは『アルミマン』として、わずかな間だけ焼け跡に『生ハムの光』を、本来のプランとは違う形で発生させることを決意した。どうやって?答えはシンプル。廃墟に小屋、である。
使用したのは撤去作業に伴って大量に発生したベニヤや垂木の残材、トリゴヤ・メンバーのかつて作品だったものの一部で、様々なスクラップからかりそめに組み上げた奇妙な「小屋」に僅かな開口部を作り、内側から水飴を使って生ハムを貼りつけるのだ。まさに焼け跡DIY。
日没までのあいだ小屋の中を満たすその『生ハムの光』は、どこに現れる場合でも永遠性が全く存在しない、すぐに失われる仮設的性質を持つものなのだが、現在のナミイタ跡地に建った小屋の中に満ちる「光」は、廃墟に降り注ぎ、通り抜けた光の「生ハム変換」であり、同じ光を浴びる体験は恐らく二度とできないだろう。
鑑賞条件は厳しいが、目撃を望む方は足を運んでください。
ーー東間嶺(代表、ディレクター)
作家・出演者 | 飯島剛哉 |
会場 | オルタナティブ掘っ立て小屋『ナミイタ Nami Ita』 |
住所 | 195-0054 東京都町田市三輪町2036 |
アクセス | 鶴川駅(小田急小田原線)南口 徒歩15分 鶴川駅より路線バスあり。3番乗り場より「奈良北団地」または「三菱ケミカル前」行きに乗車し、「三輪入口」下車。 |
会期 | 2024/03/18(月) - 31(日) |
時間 | 12:30から日没まで |
休み | 月曜日から金曜日 ※土日以外は予約の問い合わせがあった日のみオープン |
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