s+arts (スプラスアーツ)より、喜久田尚美 個展「MUKASHIGATARI」の開催をお知らせいたします。
キャンバスにアクリル絵の具とインクで描かれた背景にテーマごとのモチーフを展開させることで、独自の世界観を表現している喜久田尚美。先人の作品に接する事で感銘を受け、それを作者の解釈で再構築する事により、伝統を受け継ぎ変化を遂げながら継続していく、という琳派の継承方法とその作品に興味を惹かれて制作している作家です。
喜久田の制作テーマは「金魚」「微生物」「パフェ」と移り、近年では「物語」をテーマに作品を制作しています。テーマの変化とともに、金銀の地の上に色を重ねたり、変化を持たせるなど、モチーフの魅力を際立たせるように描かれた作品は、様々な要素を含みながらも細部に至るまで彼女の独自性やこだわりが見られ、丁寧に描かれています。
本展では、19世紀にスコットランドに生まれたAndrew Lang(アンドリュー ラング)の編纂した童話集をモチーフに描かれた作品群を軸に展開いたします。第1巻のあおいろの童話集から第12巻のふじいろの童話集まで各巻に色の名前が付けられているのが特徴的なラング童話の他に、グリム童話や中国の昔話など、喜久田が抜粋した物語の作品も含め、様々な物語が楽しめる展示となりました。
「空を眺めるのが好きだった。
高台にあった家の隣には空き地があって、学校帰りにそこからの空の景色をぼんやりと眺めるのが何より一番好きだった。
長い坂道を上って家にたどり着くほんの手前。広がる空に浮かぶ雲、渡る風、移ろう光、あかね色の夕焼け。そんな時、雲の上の世界を想像する。あるはずのない世界だと知ってはいても、そこには必ず私の国があった。
小さい頃、眠りにつく前に父はよくおはなしを聞かせてくれた。それは、いろんな物語がいっしょくたになった作り話で、私と妹を良く笑わせたものだ。母も寝る前におはなしを聞かせてくれたのだけど、母の選択は一風変わっていた。忘れられないのは「耳なし芳一」のおはなし。あんな恐ろしいおはなしを、なぜ三歳や四歳ほどのちいさな子どもに聞かせたのだろう。私と妹は毎回震え上がったけれど、母は何度も繰り返しはなして聞かせた。怖いけれど聞きたい。その感情の底辺には、母の存在があったのだと思う。母に守られているから心配はないのだった。
昔ばなしは不思議に溢れ、脈絡がなく、あるときはとても恐ろしい。けれど、それを語り聞かせる人の愛情によって、怖さはあたたかい安心感に、弱さは勇気にかわり、やさしく強く希望を捨てない人に近づいていくのではないかと思う。
様々な物語を読んでいると、(聴いていても)、一行の文、ひとつの言葉に魅せられ、イメージが一瞬で浮かび上がる事がある。その一瞬をとらえてキャンバスの上に描き出したいと思っている。
世界中の弱く小さな子どもたちが愛を受け、豊かな心を育み、安心して成長する事ができるようにと祈りを込めて、私の昔語りの世界を送りたい。」--- 喜久田尚美
各物語から想像を膨らませ描かれた作品はどれも、昔話特有の不思議な雰囲気を醸し出しながらも、丁寧に、敬意をも感じられるような細かい描写で表現されています。これを機に、喜久田尚美の新作群を是非お楽しみください。
キャンバスにアクリル絵の具とインクで描かれた背景にテーマごとのモチーフを展開させることで、独自の世界観を表現している喜久田尚美。先人の作品に接する事で感銘を受け、それを作者の解釈で再構築する事により、伝統を受け継ぎ変化を遂げながら継続していく、という琳派の継承方法とその作品に興味を惹かれて制作している作家です。
喜久田の制作テーマは「金魚」「微生物」「パフェ」と移り、近年では「物語」をテーマに作品を制作しています。テーマの変化とともに、金銀の地の上に色を重ねたり、変化を持たせるなど、モチーフの魅力を際立たせるように描かれた作品は、様々な要素を含みながらも細部に至るまで彼女の独自性やこだわりが見られ、丁寧に描かれています。
本展では、19世紀にスコットランドに生まれたAndrew Lang(アンドリュー ラング)の編纂した童話集をモチーフに描かれた作品群を軸に展開いたします。第1巻のあおいろの童話集から第12巻のふじいろの童話集まで各巻に色の名前が付けられているのが特徴的なラング童話の他に、グリム童話や中国の昔話など、喜久田が抜粋した物語の作品も含め、様々な物語が楽しめる展示となりました。
「空を眺めるのが好きだった。
高台にあった家の隣には空き地があって、学校帰りにそこからの空の景色をぼんやりと眺めるのが何より一番好きだった。
長い坂道を上って家にたどり着くほんの手前。広がる空に浮かぶ雲、渡る風、移ろう光、あかね色の夕焼け。そんな時、雲の上の世界を想像する。あるはずのない世界だと知ってはいても、そこには必ず私の国があった。
小さい頃、眠りにつく前に父はよくおはなしを聞かせてくれた。それは、いろんな物語がいっしょくたになった作り話で、私と妹を良く笑わせたものだ。母も寝る前におはなしを聞かせてくれたのだけど、母の選択は一風変わっていた。忘れられないのは「耳なし芳一」のおはなし。あんな恐ろしいおはなしを、なぜ三歳や四歳ほどのちいさな子どもに聞かせたのだろう。私と妹は毎回震え上がったけれど、母は何度も繰り返しはなして聞かせた。怖いけれど聞きたい。その感情の底辺には、母の存在があったのだと思う。母に守られているから心配はないのだった。
昔ばなしは不思議に溢れ、脈絡がなく、あるときはとても恐ろしい。けれど、それを語り聞かせる人の愛情によって、怖さはあたたかい安心感に、弱さは勇気にかわり、やさしく強く希望を捨てない人に近づいていくのではないかと思う。
様々な物語を読んでいると、(聴いていても)、一行の文、ひとつの言葉に魅せられ、イメージが一瞬で浮かび上がる事がある。その一瞬をとらえてキャンバスの上に描き出したいと思っている。
世界中の弱く小さな子どもたちが愛を受け、豊かな心を育み、安心して成長する事ができるようにと祈りを込めて、私の昔語りの世界を送りたい。」--- 喜久田尚美
各物語から想像を膨らませ描かれた作品はどれも、昔話特有の不思議な雰囲気を醸し出しながらも、丁寧に、敬意をも感じられるような細かい描写で表現されています。これを機に、喜久田尚美の新作群を是非お楽しみください。
作家・出演者 | 喜久田尚美 |
会場 | s+arts (スプラスアーツ) |
住所 | 106-0032 東京都港区六本木7-6-5 六本木栄ビル 3F |
アクセス | 六本木駅(東京メトロ日比谷線)2番口 徒歩8分 六本木駅(都営大江戸線)7番口 徒歩9分 乃木坂駅(東京メトロ千代田線, 小田急小田原線)6番口 徒歩9分 |
会期 | 2024/02/02(金) - 17(土) |
時間 | 12:00-19:00(最終日17:00まで) |
休み | 日曜日、月曜日、火曜日 |
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