2023年11月18日(土)~12月16日(土)にかけて、堀江栞の個展「かさぶたは、時おり剥がれる」を開催いたします。
本展は、2021年に開催した五島記念文化賞海外研修成果発表展「声よりも近い位置」以降、第32回タカシマヤ美術賞(2021年)、VOCA賞佳作賞(2021年)の受賞、そして神奈川県立近代美術館鎌倉別館での「生誕110年 松本竣介/[小企画]堀江 栞—触れえないものたちへ」(2022年)の開催や、「生誕110年記念 松本竣介デッサン50」(大川美術館)特別出品(2023年)など、めざましい活躍を続ける堀江栞の待望の個展となります。
本展では、2022年に開催した神奈川県立近代美術館鎌倉別館での展示で初出展した水彩絵具を使ったドローイングシリーズ約110点に加え、VOCA佳作賞を受賞した《後ろ手の未来》シリーズの新作を出展いたします。
近年、堀江は恐らく初めてといっていいほどに描く事に恐れを感じ、岩絵具に向き合う事が出来なくなるという期間を過ごしました。描き続けてきた堀江にとって、その苦悩がいかほどであったのか、想像もつきません。しかし、この葛藤の中、堀江を一歩ずつ前進させたものは、やはり描く事でした。ドローイングというパリ留学時代から始めた表現に活路を見出し、数多くの小さなドローイング作品を描きつづけました。これらの作品群の小さな白い画面に描かれているのは、人の顔のような、未知の生命体のような「何か」に見えますが、堀江はこれらは「かさぶた」だといいます。重なり合う鮮やかな水彩絵具の柔らかな透明感に、葛藤を受容し、それを超えて描く事に対する堀江の執着が無意識に筆を運ばせているような、ある種の明るさが見えてきます。それはあたかも、描くという行為が自身の一部であり、そして原点であると再認識し、また歩みはじめる、堀江にとっての癒しの過程を垣間見るようです。
傷を負い、それが「かさぶた」となり、その後治癒していく。生きる上で誰しもが経験する過程そのものがこれらの作品群に表されているのです。
さらに、本展では、約1年半のブランクを経て改めて岩絵具に向き合った《後ろ手の未来》シリーズの新作も出展いたします。2022年のVOCA佳作賞を受賞したこの作品は、画面いっぱいに描かれた人物がずらっと並び、圧倒的な存在感を放ちます。ドローイングとは対照的な岩絵具の重厚かつ繊細な質感と堀江らしいマチエールには、脆くはかない存在でありつつも力強く立ち続ける人の姿が写し出されています。本展では、2021年に制作された《後ろ手の未来 #2-#6》に新作を加えて展示いたします。
また、本展のタイトルとなったエッセイ「かさぶたは、時おり剥がれる」(2020年「群像」講談社)が掲載された堀江栞の画集「声よりも近い位置」も、本展にて販売いたします。
多くを乗り越え、自らの経験を咀嚼し、人として、アーティストとしてさらに成長を続ける堀江栞が開拓する新たな表現世界を是非ご高覧ください。
「かさぶたは、時おり剥がれる」
あることをきっかけに、絵が描けなくなった。
自分がもっとも大切にしているものと、それに携わるひとたちが怖くなった。
私にとって、絵を描くというのは、岩絵具に触れることである。
紙にひとつの色を置くと、その先の見えない色が浮かんできて、
知らないうちにどんどん手が動いていたあのころに戻りたい。
気づけば、絵具の瓶には埃が溜まっていた。
辛い記憶にのまれそうになる。なんとか筆を握らなければ。
濁りを洗い流すような水彩絵具の軽やかさに励まされ、傷口がこれ以上開かないよう、蓋をする。
ただそれだけを繰り返しているうちに、小さなかさぶたの束が手元に残った。
差しのべられる手に、光が見えた。
傷が癒えなくても、私にはできることがあるはずだ。
一年半ぶりに、懐かしい絵具を手に取った。
原点に戻って、絵で立ち向かうために。
堀江栞
本展は、2021年に開催した五島記念文化賞海外研修成果発表展「声よりも近い位置」以降、第32回タカシマヤ美術賞(2021年)、VOCA賞佳作賞(2021年)の受賞、そして神奈川県立近代美術館鎌倉別館での「生誕110年 松本竣介/[小企画]堀江 栞—触れえないものたちへ」(2022年)の開催や、「生誕110年記念 松本竣介デッサン50」(大川美術館)特別出品(2023年)など、めざましい活躍を続ける堀江栞の待望の個展となります。
本展では、2022年に開催した神奈川県立近代美術館鎌倉別館での展示で初出展した水彩絵具を使ったドローイングシリーズ約110点に加え、VOCA佳作賞を受賞した《後ろ手の未来》シリーズの新作を出展いたします。
近年、堀江は恐らく初めてといっていいほどに描く事に恐れを感じ、岩絵具に向き合う事が出来なくなるという期間を過ごしました。描き続けてきた堀江にとって、その苦悩がいかほどであったのか、想像もつきません。しかし、この葛藤の中、堀江を一歩ずつ前進させたものは、やはり描く事でした。ドローイングというパリ留学時代から始めた表現に活路を見出し、数多くの小さなドローイング作品を描きつづけました。これらの作品群の小さな白い画面に描かれているのは、人の顔のような、未知の生命体のような「何か」に見えますが、堀江はこれらは「かさぶた」だといいます。重なり合う鮮やかな水彩絵具の柔らかな透明感に、葛藤を受容し、それを超えて描く事に対する堀江の執着が無意識に筆を運ばせているような、ある種の明るさが見えてきます。それはあたかも、描くという行為が自身の一部であり、そして原点であると再認識し、また歩みはじめる、堀江にとっての癒しの過程を垣間見るようです。
傷を負い、それが「かさぶた」となり、その後治癒していく。生きる上で誰しもが経験する過程そのものがこれらの作品群に表されているのです。
さらに、本展では、約1年半のブランクを経て改めて岩絵具に向き合った《後ろ手の未来》シリーズの新作も出展いたします。2022年のVOCA佳作賞を受賞したこの作品は、画面いっぱいに描かれた人物がずらっと並び、圧倒的な存在感を放ちます。ドローイングとは対照的な岩絵具の重厚かつ繊細な質感と堀江らしいマチエールには、脆くはかない存在でありつつも力強く立ち続ける人の姿が写し出されています。本展では、2021年に制作された《後ろ手の未来 #2-#6》に新作を加えて展示いたします。
また、本展のタイトルとなったエッセイ「かさぶたは、時おり剥がれる」(2020年「群像」講談社)が掲載された堀江栞の画集「声よりも近い位置」も、本展にて販売いたします。
多くを乗り越え、自らの経験を咀嚼し、人として、アーティストとしてさらに成長を続ける堀江栞が開拓する新たな表現世界を是非ご高覧ください。
「かさぶたは、時おり剥がれる」
あることをきっかけに、絵が描けなくなった。
自分がもっとも大切にしているものと、それに携わるひとたちが怖くなった。
私にとって、絵を描くというのは、岩絵具に触れることである。
紙にひとつの色を置くと、その先の見えない色が浮かんできて、
知らないうちにどんどん手が動いていたあのころに戻りたい。
気づけば、絵具の瓶には埃が溜まっていた。
辛い記憶にのまれそうになる。なんとか筆を握らなければ。
濁りを洗い流すような水彩絵具の軽やかさに励まされ、傷口がこれ以上開かないよう、蓋をする。
ただそれだけを繰り返しているうちに、小さなかさぶたの束が手元に残った。
差しのべられる手に、光が見えた。
傷が癒えなくても、私にはできることがあるはずだ。
一年半ぶりに、懐かしい絵具を手に取った。
原点に戻って、絵で立ち向かうために。
堀江栞
作家・出演者 | 堀江栞 |
会場 | √K Contemporary (ルートKコンテンポラリー) |
住所 | 162-0836 東京都新宿区南町6 |
アクセス | 牛込神楽坂駅(都営大江戸線)A2出口 徒歩5分 飯田橋駅(東京メトロ南北線, 有楽町線, 大江戸線, JR中央本線, 総武本線)B3出口 徒歩10分 神楽坂駅(東京メトロ東西線, JR中央本線)神楽坂口 徒歩12分 |
会期 | 2023/11/18(土) - 12/23(土) |
時間 | 11:00-19:00 |
休み | 日曜、月曜 |
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